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新型コロナウイルス感染症対策⑤:全国知事会からのロックダウンを可能にする法整備の要請

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 先週、全国知事会から内閣に対して「ロックダウンを可能にする法整備」を求める声が伝えられ、自民党の下村政調会長も検討を開始する意思を表明された旨が、報道されていました。

 

 日本には、いわゆる「ロックダウン」(都市封鎖・罰則付きの外出禁止命令など)を可能にする法律がありません。

 

 仮に事態が更に悪化して、人流抑制を目的に強制力と罰則を伴う法整備を行う場合には、「与野党合同の法制化検討チーム」を組織して、合意を得てから国会に提出する方法を採らなければ、憲法論議に膨大な時間を割くことになり、政治的には困難が多い課題だと感じています。

 

 少なくとも日本国憲法第22条の「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」が関係してきます。

 日本国憲法が保障する基本的人権も絶対不可侵ではなく、「公共の福祉のため」に必要な場合に制約を加えることは、同条にも明示されています。

 憲法第12条、第13条にも、「自由」「権利」と「公共の福祉」との関係が記されています。

 

 内閣法制局の職員に聞いてみましたら、「外出禁止という権利の制限が『公共の福祉のため』と言えるかどうかについては、具体的にどのような目的で規制を行うのか、規制を行う地域、人、物はどのような範囲に及ぶのか、その範囲は目的との関係で必要最小限のものといえるのか、等々をみて判断していくことになる」ということでした。

 

 現時点では、「都市封鎖」(一定の地域を封鎖して出入りを規制する措置)を可能にするような法的根拠はありません。「外出を禁止し、違反者に罰則を課す」ような規定も存在しません。

 特に「罰則」については、日本国憲法第31条が、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。」と定めています。

 

 よって、法律が制定されていない段階で、内閣がこれらの措置を行うことはできません。

 国民の皆様の自由や財産を制限ないし侵害する行為には、法律の根拠が必要です。この原則は、日本国憲法の個別の条項に明記されているわけではありませんが、日本国憲法が採用する三権分立の考え方や法律をもって定めることを明記している個別の条項から、日本国憲法が当然の前提としているものと解釈されています。

 

 昨年1月以降、世界中の人々が新型コロナウイルス感染症の拡大に苦しみ、各国で「ロックダウン」など強制的な対応が行われました。

 一部の国では反発する人達による大規模デモや、エッセンシャルワーカーの職場放棄などが報じられました。

 日本では、「ロックダウン」を可能にする法律が無い中で、殆どの国民がマスクを着用し、手洗いや消毒など清潔を心掛け、厳し過ぎる経営状況の中でも多くの事業者が時短営業や休業に協力して下さっています。医療、福祉、教育、流通、運輸、消毒、行政をはじめ様々な分野の多くの方々が、感染リスクに晒されながらも国民の生命と暮らしを守る為に激務に耐えて働き続けて下さっています。日本は、本当に凄い国だと思います。

 

 先日に書きました通り、「ワクチンや治療薬の国内生産体制」を構築するとともに、「ワクチン接種の促進」や「治療薬の早期投与が可能な環境を作ること」で「重症者数・死亡者数の極小化」に重点的に取り組み、1人1人が引き続きマスクの着用や消毒など「衛生対策」に留意したならば、状況は徐々に改善していくと考えています。

 

 「今、ロックダウンが必要かどうか」ということについては、様々な考え方があると思いますので、専門家も含めて多くの方々からの情報も収集しながら、内閣や各党における論点整理の場を待ちたいと思います。

 ただし、エボラ出血熱など死に至るまでの時間が短い感染症のリスクもありますから、新型コロナウイルス感染症に限定して考えずに、「様々な感染症への備え」としての法制度整備が必要か否かという観点で議論しなければならない課題です。

 

 別途、テロ発生時や武力攻撃を受けた時、海外で邦人が危険に晒される可能性が高い時などに、外出禁止、渡航禁止など、生命を守る目的に限定して、一定の自由や権利の制限ができるように、日本国憲法も含めて法制度整備をしておく必要性については、海外における様々な事件(日本人が犠牲になった事件もあります)から痛感しています

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