経済安全保障の強化に向けて⑤:迂回貿易による中国兵器開発への間接的関与
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今年4月7日の『ワシントン・ポスト』の報道によると、台湾の大手半導体メーカー「TSMC」の半導体製品が、台湾企業の「世芯電子」(メーカーではなく、設計・販売企業)を経由して、中国企業の「天津飛騰(天津飛騰信息技術有限公司)」に納入されたそうです。
中国の「天津飛騰」は、中国軍の極超音速兵器開発用スパコンのCPUを製造している企業で、結果的には台湾のTSMCの半導体製品が中国軍の兵器開発に利用された旨が指摘されました。
米国政府は、この報道の翌日4月8日に、中国「天津飛騰」を『Entity List』に追加指定しました。
4月11日、「TSMC」は、「当社は法令を遵守しており、米国の制裁措置を遵守する」と発表。
4月13日、「世芯電子」は、「『天津飛騰』との取引は全面的に保留にしているが、可能ならば米国当局の輸出許可を取り付けたい」としました。
台湾の「TSMC」と中国の「天津飛騰」を繋いだ台湾の「世芯電子」は、同社のウェブ・サイトによると、全収益の39%が中国の「天津飛騰」関連です。
同社の主要投資元は外資系ファンドで、日本企業も投資を行っています。
また、同社の幹部であり日本支社長を務めておられるのは、日本人技術者です。
台湾の現政権に対する日本や米国の信頼は厚く、国際社会における台湾企業への信用度も高い状態だと感じます。
中国軍と中国企業が、台湾企業への国際社会の信用度と台湾当局の輸出規制の甘さに着目して、迂回貿易に利用した可能性も考えられます。
日本でも、将来的に台湾の政権が親中政権に代わるリスク、迂回貿易で中国に先端技術や機微技術が渡るリスクにも十分留意し、外国企業への投資時には十分な調査を行う必要があると考えます。