経済安全保障の強化に向けて②:必要物資の国内生産・調達を可能に
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「経済安全保障」という観点では、暮らしに身近なところで危機感を覚える出来事がありましたね。
私達は、昨年来、マスク、消毒液、医療用ガウン、人工呼吸器、半導体などの不足を経験しました。
大規模災害や感染症の発生など緊急時でも、「生活」「医療」「産業」に必要な物資の国内生産・調達を可能にする施策を確立することが必要だと考えています。
5月5日に書かせていただきましたが、米国では、2020年3月27日に、当時のトランプ大統領が、自動車大手のGMに対して、「人工呼吸器」の製造を命じました。
今年は、バイデン大統領が、医薬品メーカー・メルクの工場を、ライバル企業のJ&Jのワクチン生産に転用し、米国内の「ワクチン」生産を加速させました。この時、米国政府は、メルクがワクチン生産や瓶詰めの設備を導入できるよう、1億5000万ドル(約110億円)を投じました。
2人の大統領がコロナ禍において必要な物資の生産と調達を可能にする為に活用した根拠法は、『国防生産法』(政府に対して、緊急時に産業界を直接統制できる権限を付与する法律)でした。『国防生産法』の詳細は先月に書きましたので、割愛します。
英国は、2020年6月に、新型コロナ危機対応の為の暫定措置(公衆衛生の緊急時)として、『企業法』に、「感染症対策に直接関与する企業が買収に直面した際の政府介入権限」を付与する改正を行いました。
日本では、民間企業に対して、特定の製品を作ることや国内で生産することを強制するような対応が、法的に困難であることは十分に承知しています。
しかし、近年の災害の多発、エボラ出血熱など多様な感染症の発生を考えますと、特に「生活」「医療」「産業」に必要な物資について、国内や友好国からの材料調達と国内生産を容易にする為の根拠法の制定や協力企業への支援策の具体化を行っておくことは、「リスクの最小化」に向けた備えとして絶対に必要だと考えます。