橋下徹さんからの御批判に対して
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橋下徹さんがネット上で私に対する批判を展開されていることは承知していましたが、橋下さんの連絡先も存じ上げませんので、御本人への反論は控えて放置しておりましたが、流石に橋下さんの影響力は絶大です。
メディアからの問い合わせも入り始め、個別対応は時間的に困難ですので、私の考え方を記します。
橋下徹さんの御主張は、概ね以下のようなものだと存じます。
- 決裁権限は役所の内部ルールだが、法律上の権限は大臣。
- 高市さんの認識では、大臣には殆ど権限が無いことになる。
- 大臣は、内部ルールを変更できる。
- これでは、大改革などできない。
- 高市さんは役人に「権限が無い」と言われて、改革を断念したのだろうか。
本件は、『週刊文春』の記事中に「(NTTグループの)通信事業の許認可に直接関わる総務大臣、副大臣、政務官の政務三役、およびその経験者をターゲットに接待を繰り返していたのです」と書かれたことに対して、私が公式サイトに記した以下の内容を受けての御主張だと思います。
- 大臣も副大臣も「通信事業の許認可に直接関わる」ことなど、ありません。そもそも、私達は「決裁」をしていないのですから。
- 『NTT法』や『電気通信事業法』に基づく認可の中で、事業に係るものの「最終決裁」をするのは大臣や副大臣ではなく、局長です。
- 上記の所管法令に基づく定常的な認可以外の「個別案件に係る軽微な認可」についても、全て局長以下の職員が最終決裁者であり、大臣や副大臣は決裁者ではなく、案件の説明すら受けていません。
- 私の在任中に、唯一、大臣に認可権があるものとして決裁したのは、NTT持株会社の株主総会で決定した「取締役・監査役の選解任決議」(人事案件)のみです。
これは、「(NTTグループの)通信事業の許認可に直接関わる総務大臣等」に「(NTTグループが)接待を繰り返していた)という記事に対して、「NTTの事業に対して便宜を図るようなことは、あり得ない」ことを説明したものです。
橋下徹さんの御主張に対して、私の考えを申し上げます。
- ご指摘の通り、地方自治、情報通信、放送、統計をはじめ総務省所管に係る多数の法律の文言には「大臣は…」と記されているものが多数あり、その場合の法的な名義人は大臣であり、それは十分に承知しています。
- しかし、実務上、全ての審査や決裁を大臣自ら行うことは困難ですから、総務省の『規則』において、最終決裁者を、局長、課長などと定めています。この場合は、大臣への説明は行われませんが、事業認可など各種審査に係る実務については、むしろ政治家が個別に介入しない方が公正だという印象を持つ方々が多かったのではないでしょうか。もちろん、東北新社の件などによって、「官僚は、公正公平に、要件に則って審査している」という考え方は捨て、政務三役が責任を持って決裁するべき案件を増やす必要はあると思いました。
- それでも、大臣は、毎日、数多くの決裁を行っています。閣議に付する案件は全て大臣決裁ですから、例えば、総務省で書いた法律案、政令改正案、家計調査などの統計、野党議員からの質問主意書に対する答弁書(多数)など。これらに加え、『規則』で大臣が最終決裁者となる各種法令に基づく認可の決裁をします。いずれも、決裁文書に丁寧に目を通し、時には加筆修正も行った上で、決裁していました。
- 橋下徹さんがおっしゃる通り、内部の『規則』を変更して、全ての最終決裁者を大臣に変更することも可能ですが、そうすると、大臣の時間を専ら決裁に使うこととなり、本来の大臣の役目である「新規政策の構築」も、「改革の方向性を示すこと」も、不可能になります。
- 早朝から官邸で開催される会議、衆参両院における委員会答弁(9時~17時)、省内の有識者会議(17時以降が多い)などをこなしますから、昼食時間をつぶして決裁を行い、夜間や土日は「新規施策の構築」や「自らが主導する各種改革案の精査」に使っていました。
- 官僚から「(大臣に)権限が無い」と言われて改革を断念したことなど、ございません。むしろ、当時の担当職員があまり積極的ではなかった「NHK改革」「日本郵政取締役案の否決」「日本郵政への厳しい業務改善要求」「省内や所管法人の不祥事の早期公表」をはじめ多数の課題に主体的に対応してまいりました。
- また、自らの発案による新制度の構築も、数多く行いました。
拙文が橋下徹さんの目に留まるかどうかは分かりませんが、以上の事情を知っていただいた上での御批判は、しっかりと受け止めさせていただきます。