「自助」という言葉を批判することの不思議
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菅義偉総理は、総裁選挙の時から、「自助、共助、公助、そして絆」を、ご自身の基本的な考え方として、発信してこられました。
総理に就任されてからも、国会の場で、度々、口にされる言葉です。
ところが、一部の野党議員やマスコミは、この「自助」という言葉を取り上げて、批判をしています。
私には、これが不思議でなりません。
「自助」は、日本人が大切にしてきた価値観の一つだと思うからです。
子供の頃から、両親には「他人様には迷惑をかけないこと」「先ずは自分の力でやってみなさい」と言われて育ってきました。
数多くのご先祖様が奇跡的に繋いで下さった生命を大事にし、礼節と公益を守り、勤勉に働くこと。そして、常に「今日よりも良い明日」を目指して力を尽くすこと。
かつては家庭で当たり前に教えられてきた価値観が、近年まで称賛された日本の治安の良さや国際競争力の源泉だったのでしょう。
それでも、後年、「自助」に拘り過ぎる母に、少々困ったことがありました。
重い心臓病を患い、歩行も困難になり、在宅介護や家事支援サービスを利用しなければ生活できなくなった母が、「他人様にご迷惑はかけられないから」と言って、長い間、介護保険で利用可能な支援を拒否し続けたことでした。
私は、平日は東京で働いていますので、母には「私が介護をするから、東京で同居して欲しい」と懇願しましたが、「奈良の家でお父さん(私の父)の仏壇を守る」と言い張ります。
私が仕事を辞めるか否かの瀬戸際で、ようやく母が在宅介護や家事支援サービスを受けることを承諾してくれたのですが、その後、母が他界するまでの間、ご近所の方々も含めて多くの方に助けていただき、「日本は、恵まれた良い国だ」と実感し、深く感謝致しました。
先ずは、「自助」で頑張ってみても、本当に困った時には、「共助」「公助」の仕組みが整っています。
他国に比べると、各種支援サービスに対する国民の負担は低い方だと思います。
日本の消費税は、昨秋から10%に引上げられましたが、他国の付加価値税を見ますと、スェーデンとデンマークは25%、イギリスとフランスは20%、ドイツは19%。
国民負担率(租税負担率+社会保障負担率)は、日本は44.6%、スェーデンは58.9%、イギリスは47.7%、フランスは68.2%です。
少子高齢化が進行している中で、将来を見据えて、「給付と負担のバランス」についても、責任をもって率直な議論を行うべき時が来ています。
「租税などの負担が増えても良いから、もっと手厚い福祉を求めるのか否か」ということです。
私は、基本的に、「セーフティーネット機能を確保する」ことを前提に、「自立と勤勉の倫理」も重んじられる「公正な社会」を創ることが必要だと考えます。
あまりにも「もらう人」と「払う人」の二分化が極端になり、「不正受給」や「弱者のフリをする人」が増えてしまうと、社会コストは増大します。
リスクをとって懸命に働き、真面目に社会を支えるために義務を果たしている個人や企業のモチベーションが下がると、経済は縮小します。
菅総理が仰る「自助」「共助」「公助」「絆」、いずれも否定されるべきものではなく、大切なことだと思います。