水田のウンカ被害に落胆
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本日、臨時国会が召集されました。
大臣在任中は殆ど選挙区に戻れませんでしたので、昨日までの閉会期間中に、8ヵ月余ぶりに奈良県に帰って、地域を廻る活動をしてまいりました。
移動の車中から見た故郷の水田の風景は、悲惨なものでした。
平年でしたら、10月は、黄金色の稲穂を眺めて楽しんだり、稲刈りをしておられる方々と笑顔で会話を交わしたりしながら地域を廻るのですが、今年は、多くの水田で広くまとまって稲が茶色に枯れてしまう坪枯れの状態を目の当たりにしました。
約半分の水田で被害が出ている状況で、刈入れ直前まで苦労して育ててこられた農家の方々の落胆を思いますと、気の毒でなりませんでした。
原因は、中国大陸から飛来したトビイロウンカです。
トビイロウンカは、日本では越冬できず、6月から7月に、中国大陸から気流に乗って飛来します。飛来後は、水田で繁殖して、第2世代以降が稲の水分などを吸汁します。
気温が高く雨が少ない年に、発生が多くなる傾向があるということです。
奈良県の農家でも、7月頃に九州でトビイロウンカが多く飛来しているという情報をキャッチして、早めに農薬を撒いた方の水田では、被害が少なかったそうです。
「農林水産省として、早めに個別の農家に対して、注意喚起や対策を周知する方法があったのではないか」という問題意識を持ちましたので、上京してすぐに、農林水産省の消費・安全局にある植物防疫課に問い合わせました。
植物防疫課からの回答によりますと、農林水産省では、都道府県の協力の下、『植物防疫法(昭和25年法律第151号)』に基づき、病害虫の防除を適時で経済的なものにするため、気象、農作物の生育状況、病害虫の発生調査結果等を分析し、「病害虫の発生予察及び防除対策に係る情報(病害虫発生予察情報)」を定期的に提供しているとのことでした。
情報提供方法は、プレスリリースやホームページ掲載だということで、今年は、4月22日から10月7日までに計8回の発表を行ったそうです。
この他、8月5日には、トビイロウンカの発生が多くなると予想されたことから、農林水産省から都道府県に対し、「水稲におけるトビイロウンカの防除の徹底」について通知したということでした。
農林水産省のホームページを、全ての農家の方がチェックしているわけではないでしょうから、課題は、都道府県から個別の農家に確実に情報を伝達する手段にあると思いました。
この点について、各都道府県では、「病害虫防除所」が、農作物の生育状況、病害虫の発生調査結果等を分析し、「病害虫の発生予察及び防除対策に係る情報(病害虫発生予察情報)」を作成し、発表しているということでした。
定期的に発表される予報の他、発生が多いと予想される病害虫については「注意報」、発生が多くかなりの被害・減収が見込まれる病害虫については「警報」が、随時発表されており、ホームページで公表されています。
例えば、奈良県においては、トビイロウンカが掲載された「予報」と「注意報」は、今年の7月1日から10月1日までに6回発表されていましたが、「警報」の発表実績はありませんでした。
普及機関を通じて、農業者団体や担い手農業者などに情報提供される場合もあるそうですが、「全く知らなかった」「知っていたら、農薬を散布したのに」と悔しがっておられる農家の方々がおられるのですから、残念な状況です。
「JAならけん」は、早めの収穫を呼びかけるなどの対応をして下さっていましたが、9月中旬から、農家の方々から「対処法」の問い合わせが相次いだそうです。
来年への備えも必要ですから、農林水産省に対しては、ウンカ被害防止に有効な農薬の名称と散布時期についても、問い合わせを致しました。
回答は、今後、「水稲病害虫防除対策全国協議会」等の場で、本年のウンカ対策における課題や問題点を検証した上で、次期作に向けた効果的なウンカ対策を検討し、有効な農薬の選定や適期散布等についても取り纏め、都道府県等関係機関と情報共有するということでした。
「ウンカ類に対する各種箱施用剤の効果」を比較した試験事例も、参考として頂きました。
比較表を見ましたところ、トビイロ、セジロ、ヒメトビのいずれにも効果が高かった箱施薬剤名は、「チェス」と「ゼクサロン」でした。
ウンカ被害に遭われた農家の皆様には、心よりお見舞いを申し上げます。
来年に向けて、農林水産省や都道府県で更に工夫をしていただき、JAのご協力も頂きながら、個別の農家に迅速に「注意報」や「警報」が伝わる方法、「被害防止に有効な農薬や散布時期」の情報が伝わる方法を、考えていただきたいと切望します。