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国と地方のデジタル化に向けて取り組むべき課題

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 昨日10月19日、自民党本部に、総裁直轄機関として「デジタル社会推進本部」が設置されて、初会議が開催されました。

 

 本部長には下村博文政調会長、座長には甘利明税制調査会長が就任されました。
 私は顧問という立場ですが、初回の会議でしたので、特に議論を深めるべきだと考える課題について、3点の指摘をさせていただきました。

 

 第1に、「国・地方自治体のシステムの統一を進める上では、地方公共団体に対して一定の強制力を持つ根拠法が必要」だということです。

 

 既に、私が総務大臣在任中だった今年の9月11日には、総務省が「住民記録システム」の『標準仕様書【第1.0版】』を完成させて、公表しています。

 

 問題は、『地方分権一括法』で地方分権が進められて以来、『地方自治法』でも、『地方交付税法』でも、国が地方公共団体に対して何かを強制することができなくなっており、地方公共団体が、この『標準仕様書』を活用してシステム構築をして下さるのか否かが不明だということです。

 

 様々な事柄について、総務省から地方公共団体に通知を出す時には、『地方自治法』に基づく「技術的助言」であることを申し添えて、ご協力をお願いする形になります。

 

 地方交付税についても、日本全国どこに住んでいても必要な行政サービスが受けられるように、人口や面積など様々な指標に基づき、総務省で地方公共団体ごとの必要額を算定して交付額を決めますが、地方交付税は「地方の一般財源」として位置づけられていますから、使途については地方公共団体が自由に決めることができます。

 

 例えば、市町村が管理する河川の氾濫を防ぐために、以前から、浚渫など河川の「維持管理」に必要な金額も地方交付税で措置してきましたが、市町村では住民の皆様のニーズが大きい別の施策にお金が使われていて、なかなか防災対策が進まなかったことを受けて、私は『地方財政法』の改正が必要だと判断し、今年度から5年間で4900億円を活用できる「緊急浚渫推進事業」を創設しました。

 

 デジタル化についても同様です。

 

 国で用意した『標準仕様書』に準拠したシステムを利用するかどうかも、現行法上は、地方公共団体の自由ですから、今後、全国全ての地方公共団体で統一したシステムが整備され、国民の皆様の利便性向上や行政の効率化を図るためには、一定の強制力をもって義務付けをする「根拠法」の整備が必要だと考えます。

 

 この点は、大臣退任前に、総務省の事務方に、法整備への着手を指示致しましたので、内閣法制局と話し合ってくれているところだと思いますが、念のため、党本部の「デジタル社会推進本部」の初会議でも問題提起をしておきました。

 

 地方公共団体で必要となるシステム構築予算についても、使途が自由になる地方交付税措置ではなく、デジタル庁から10割の補助金を出すなどの工夫が必要だと思います。

 

 「住民記録システム」については『標準仕様書』が完成しましたが、今後は、令和3年8月を目途に、総務省では「地方税」、厚生労働省では「障害者福祉」「介護保険」、文部科学省では「就学」について、取りまとめるべく、検討会で作業が進められています。

 

 更に、令和4年8月の取りまとめを目指して、総務省では「選挙人名簿管理」、厚生労働省では「国民年金」「後期高齢者医療」「生活保護」「健康管理」「児童扶養手当」、内閣府では「児童手当」、内閣府・厚生労働省では「子ども・子育て支援」について、令和3年度から検討会を開催するということです。

 

 第2に、「国民の皆様全体のデジタル能力の向上が必要」だということです。

 

 今年の1人10万円の特別定額給付金の給付にあたっては、当初は、私は「各世帯の全世帯員の氏名が予め印字された申請書の送付のみに絞って事務を行った方が、給付が早い」と考えて準備を進めていましたが、「オンライン申請も取り入れるべきだ」という政府内の強い要請があり、マイナンバーカードによって本人確認が確実にできる方に限定してオンライン申請も実施してみました。

 

 その結果、ご自分の口座番号を正確に入力しておらず1桁足りない申請、ご家族の氏名や人数を間違えている申請などが相次ぎ、市区町村職員の皆様には、確認の連絡をするなど、大変な業務をしていただかなければならない結果となりました。
 それでも、平成21年度補正予算で実施した1万2000円の給付で9カ月かかった給付率を4カ月で達成していただくなど、市区町村職員の皆様のご尽力には、深く感謝申し上げています。

 

 社会全体のデジタル化を、安全に安心に進めていくためには、「私たち全員が、注意深くオンライン手続きを行うこと」とともに、「デジタル弱者とされる方々が、行政サービスから取り残されないように、丁寧に対応すること」が必要です。

 

 また、今後の情報通信人材の育成ということを考えますと、遅まきながら義務教育課程で実施されている「プログラミング教育」に加えて、「AI教育」「セキュリティ教育」「情報モラル教育」の必修化も必要です。

 

 都道府県立など公立大学や、高専、農業・商業・工業高校への情報通信学科の設置も、時代の要請だと考えます。

 

 第3に、「サイバーセキュリティの確保が必須」だということです。

 

 特に、国や地方公共団体の行政サービスに係る個人情報が流出したり、改竄されたりする事態は、絶対に起きてはなりません。

 

 現在の日本では、「特定の国や企業を排除しない」ことを基本にしながら、NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)や総務省が、政府機関への攻撃を監視したり、ⅠoTや5Gも含めた安全性確保の取組を行ったりしています。

 

 しかし、今後は、サプライチェーンリスクの最小化するために、必要に応じて、特定の国や企業を排除することも検討するべきだと思っています。
 米国、オーストラリア、ベトナムでは、首相や閣僚が、ファーウェイやZTEなど特定の企業名を挙げてリスク対応の必要性を訴えておられました。

 

 米国では、度々、『大統領令』で特定企業の製品やサービスの使用を禁じていますが、大統領に権限を持たせている根拠法は『国防生産法』です。
 私は、日本でも、リスクが明らかな時には政令などで迅速に対応できるよう、日本版『国防生産法』といった根拠法が必要だと考えています。

 

 更には、「国、地方公共団体、金融・クレジットを含む多様な事業者の職員の多くの皆様に、政府機関が準備したインシデント対応訓練に参加していただくこと」「ユーザーとなる国民の皆様や中小零細事業者のセキュリティ意識の向上やセキュリティ投資の促進」「重要インフラ14分野以外(自動車交通・旅客用船舶など)のセキュリティ対策の強化」なども、必要です。

 

 昨日の会議では、以上の3点の柱について簡潔に発言をさせていただきましたが、今後の政府与党の議論の中で、如何に「速やかに」「安全に」、国と地方のデジタル化や社会全体のデジタル化を進めていくべきか、道筋が見えてくるものと期待しています。

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