新型コロナウイルス感染者への誹謗中傷は許せない!
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新型コロナウイルス感染症の感染者に対し、インターネット上でデマや誹謗中傷などが横行していることについては、残念で腹立たしい限りです。
地方公共団体では、問題のある書き込みを画像で保存するなど、対応の動きが広がってきています。
内閣官房の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」でも、去る9月1日に、第1回の「偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループ」が開催されました。
地方公共団体などにおける問題事案や取組についての紹介があり、今後、引き続き検討が進められると伺っています。
このワーキンググループに三重県の鈴木英敬知事が提出された資料を参考にさせていただき、幾つかの取組を整理してみました。
第1に、島根県における取組です。
島根県内の私立高校で、8月9日以降、サッカ一部員ら約100人が感染するクラスターが発生しました。
この高校に対して、学校批判に加え、生徒を中傷するような電話が殺到したそうです。
学校公式ブログの活動紹介の生徒写真がインターネット、SNS上に流出し、「マスクも着けずにコロナをばらまいている」との批判とともに、その写真がネット上で拡散しました。
そこで、写真が転載された十数件のサイトについて、モニタリング作業によって確認の上、「人権侵害の恐れがある」として、松江地方法務局に通報し、削除要請をしました。
更に、学校は、生徒の心身の不調を懸念し、島根県臨床心理士・公認心理師協会に協力を依頼したということです。
第2に、岩手県における取組です。
全国で唯一「感染者ゼロ」だった岩手県では、7月29日に初めて感染者が確認されました。
感染した男性が勤めておられた岩手県内の会社は、同日夜、ホームページで従業員の陽性を発表しました。会社は、誠意ある立派な対応をされたと思います。
すると、会社に対して、3日間で100件以上の誹謗・中傷を含む問い合わせの電話や、誹謗中傷のメールが多数寄せられたそうです。
感染を公表した翌日の7月30日には、会社のホームページにアクセスが殺到して、サーバがダウンしたということです。
知事が「感染者第1号になっても、県はその人のことを責めません」と繰り返し発言するとともに、岩手県は、SNSなどに発信した投稿に対する返信において書き込まれた誹謗中傷について、画像で写しを保存しているということです。
第3に、三重県における取組です。
三重県では、以前より鈴木英敬知事が、熱心にインターネット上の権利侵害情報対策を進めておられました。
県内の中華料理店について、事実無根の書き込みがSNSで拡散しました。
また、県内の別の町で感染者が確認されてから、インターネット掲示板で不適切な投稿が多数、確認されたそうです。
三重県のネットパトロールでも、差別的な書き込みを多数検知しました。
三重県人権センター相談窓口には、今年の3月から8月までの間に、新型コロナウイルス感染症関連の相談が約50件寄せられ、そのうち21件が、デマ、噂、偏見に関する相談だったそうです。
三重県では、新型コロナウイルス感染症に関するいじめや人権侵害などから児童生徒を守るために、年3回行っていたネットパトロールを強化し、平日は毎日実施しておられます。
また、いじめや不適切な書き込みを発見した利用者が、書き込みをスクリーンショットで撮り、アプリヘ投稿する「ネットみえ~る」の利用も開始されました。
インターネット上の人権侵害に関しては、同和問題、障碍者、外国人(ヘイトスピーチ)に加え、新型コロナウイルス関連の投稿についても、モニタリングを実施することとされました。
ネット掲示板などの禁止ルールに該当した事項については、掲示板管理者に対し削除を依頼しておられます。
更に、条例制定も検討中だということでした。
既に、東京都、長野県、岐阜県、鳥取県、沖縄県では、新型コロナウイルス感染症に関係する方々に対して差別をしてはならない旨を、条例で規定しています。
『東京都新型コロナウイルス感染症対策条例』(令和2年8月1日施行)では、「都民及び事業者は、新型コロナウイルス感染症の患者等、医療従事者、帰国者、外国人その他の新型コロナウイルス感染症に関連する者に対して、り患していること又はり患しているおそれがあることを理由として、不当な差別的取扱いをしてはならない。」としています。
総務省でも、先月までに書かせていただいた通り、インターネット上の権利侵害情報による被害者救済を迅速化するべく、取組を進めています。
8月31日の省令改正(開示対象に発信者の電話番号を追加)によって、被害者は、弁護士会照会を通じて、加害者の「氏名」や「住所」を特定する裁判手続が1回で済むようになりました。
9月1日には、インターネット上の誹謗中傷への対策として『政策パッケージ』を取りまとめました。
この『政策パッケージ』では、「匿名の陰に隠れた誹謗中傷は許されない」という前提の下で、下記の4本の柱を掲げ、各種の施策を推進することとしています。
①ユーザに対する情報モラル及びICTリテラシーの向上のための啓発活動
②プラットフォーム事業者の自主的取組の支援と透明性・アカウンタビリティの向上
③発信者情報開示に関する取組
④相談対応の充実に向けた連携と体制整備
7月17日に閣議決定された『経済財政運営と改革の基本方針2020(骨太の方針)』にも、「ICTリテラシーや情報モラルの向上を図る」旨が明記されています。
総務省では、「権利侵害情報の投稿に関係する特定の通信ログを、早期に保全する方策」や「新たな裁判手続の創設」など、未だ有識者会議で結論に至っていない課題については検討を続けていきますが、すぐに着手できる施策については、スピード感を重視して実行してまいります。
情報通信技術の進歩と活用によって、生産性の向上や新規産業の創出による経済成長、地方創生、社会的課題の解決への道が拓けます。
他人を傷つけるために技術が悪用されるのは、勿体ないことです。健全で安全な環境を創って、多くの方が幸せになれるイノベーションに繋げてまいりましょう。