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「分散型エネルギーインフラプロジェクト」の活用を!

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 先日の台風第10号でも、各地で停電が発生し、避難所やご自宅で過ごしておられる方々からは「エアコンが使えず、熱中症にならないか心配だ」「スマホの充電ができず、テレビも映らないので、情報が入ってこない」といったお声が上がっていました。

 

 報道番組で解説をしておられた方が、「地産地消型の再生可能エネルギーが必要」という旨のご意見を仰っていて、まさにその通りです。

 

 実は、総務省では、地域資源を活用した再生可能エネルギーを地域で活用する「分散型エネルギーインフラプロジェクト」を推進してきました。

 

 これは、私が前回の総務大臣在任中(平成26年~平成29年)に立ち上げ、進めてきたプロジェクトです。

 

 「エネルギーの地産地消」を進めることで、地域外や海外に流出しているエネルギー料金を地域内で循環させ、地域に「雇用」や「税収」を生み出すことができます。

 

 災害時にも、地域でエネルギーを確保することにより、「災害に強い地域づくり」にも役立ちます。

 

 「為替や原油価格の変動にも強い地域経済」の構築にもつながりますし、再生可能エネルギーを活用することで、環境にも配慮したものとなります。

 

 このように、様々なメリットがあるプロジェクトなのです。

 

 このプロジェクトでは、先ず、地方公共団体に、需要家、地域エネルギー会社、金融機関などと協力して、バイオマスや廃棄物などの地域資源を活用した地域エネルギー事業を立ち上げる為の「マスタープラン」を策定していただきます。

 「マスタープラン」の策定にかかる費用は、総務省が応援します。

 

 また、「マスタープラン」を策定しても、実際に事業が立ち上げられなければ意味がありません。

 

 「マスタープラン」が完成した地域に、関連する補助金などを所管する関係省庁の支援を集中的に投下することで、事業をより早く実現することができます。

 

 そこで、当時、関係省庁のタスクフォースを立ち上げる為に、私は、経済産業大臣、農林水産大臣、環境大臣の各大臣室を訪ね歩き、「事業化の目途が立った地域に各省庁の支援を集中させることによって、事業化のスピードを上げたい」旨を説明し、ご協力をお願い申し上げました。

 

 このような経緯で、資源エネルギー庁、林野庁、環境省、総務省の「4省庁タスクフォース」が発足し、「マスタープラン」の策定段階から事業化まで、横串・ワンストップで、地域の取組を支援することができるようになりました。

 

 なお、現在は、農林水産省本省と国土交通省もタスクフォースに参加していただいています。

 

 また、このプロジェクトを進める為には、専門家の皆様の知見も必要でした。

 

 そこで、平成26年11月、総務省に「自治体主導の地域エネルギーシステム整備研究会」を設立しました。

 座長には、東京工業大学の柏木孝夫先生に就任していただきました。

 

 この研究会では、分散型エネルギーインフラの全国展開に向けて、事業化推進のモデルや手法の構築など、活発なご議論をいただいています。

 

 これまで、54団体が「マスタープラン」を策定し、今年度も4団体が「マスタープラン」の策定に取り組んでおられます。

 

 北海道下川町では、地域資源である森林バイオマスを活用して、住宅、住民センター、育苗用ハウスなどに熱を供給することで、化石燃料使用時と比較して年間約1600万円の経費削減効果が発生しました。

 この金額に相当する予算を基金化して、子育て支援に充当することができました。

 また、余剰熱を活用した産業創出により、新たに26人の雇用が生まれました。

 

 岩手県八幡平市では、八幡平温泉郷の温泉を活用して、周辺の宿泊施設や農業用ハウスなどに熱を供給しています。

 この熱供給を利用して新たな農業法人が事業を開始し、地域に新たに12人の雇用が生まれています。

 

 このように着実に成果を挙げてきたプロジェクトですが、一方で課題もあります。

 

 まず、「マスタープラン」を策定したものの、事業化に至っていない団体が見受けられることです。

 

 これまで「マスタープラン」を策定した54団体のうち、事業化を実現した団体は18団体です。

 特に、「マスタープラン」の策定後5年以上経過しても、その後の事情の変化や、事業化に向けた調整に時間を要していることなどにより、事業化に至っていない団体が28団体中14団体も残っています。

 

 この課題については、これまで策定された「マスタープラン」について、事業化に向けた成功要因や阻害要因を分析した上で、それぞれの状況に応じて適切な支援方策を検討する必要があります。

 

 昨年9月の台風第15号では、送電線の鉄塔倒壊や倒木などにより、千葉県を中心に大規模停電が発生しましたが、「分散型エネルギーシステム」で対応できた事例も見られました。

 

 他方、蓄電池などの自立電源設備の水没や、避難所への送電が遮断されるなど、本来の機能を発揮することができなかったケースもありました。

 

 災害時にも、確実にエネルギー供給を可能とする分散型エネルギーシステムのモデルを構築することが重要です。

 

 これらの課題について、本年8月に開催された「自治体主導の地域エネルギーシステム整備研究会」でもご議論をいただきました。

 私からは、「マスタープランの策定を通じて、無電柱化の推進や、蓄電池などを水没しない場所に設置するなど、災害時においても地域の暮らしを守る機能を強化したい」旨を申し上げました。

 

 今後、これらの課題解決の為の取組を集約した『地方公共団体における分散型エネルギーインフラ事業の実現に向けたハンドブック』を作成します。

 

 更に、地方公共団体における再生可能エネルギー導入に関わった実績のある方々を、アドバイザーとして地域に派遣します。

 

 「エネルギーの地産地消」が、皆様の暮らしや仕事に身近なものになるよう、総務省としても、各省庁と連携しながら、引き続き、このプロジェクトを強力に、また、着実に進めてまいります。

 

 より多くの地方公共団体に活用していただくことを、期待申し上げます。

 

 

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