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「緊急浚渫推進事業」の活用を!

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 台風第9号に続いて、超大型台風第10号の襲来。

 

 官邸では、金曜日も本日も、台風第10号の関係閣僚会議が開催されました。

 

 総務省でも、多くの職員が24時間体制で頑張ってくれています。

 特に初動では、人命救助の為の消防・救急活動、情報通信・放送途絶時の対応が重要になりますので、緊急消防援助隊派遣待機の調整や電源車の配備など、一昨日までに可能な限りの備えをしました。

 

 台風の影響を受ける地域にお住まいの皆様には、何としても早めの避難によって、自らの命を守ることを最優先にしていただきますよう、お願い申し上げます。

 

 総務省の「緊急浚渫推進事業」の創設については、今年の1月にも書きましたし、『改正地方財政法』の成立後に各地方公共団体にもお知らせはしているのですが、去る8月31日付の時事通信の『中央官庁だより』を拝読したところ、「浚渫事業、早くも効果=総務省」という嬉しい見出しの記事ではありましたが、記事の最後に「自治体間にまだ温度差がある。知らない首長さんも多い」という職員のコメントが掲載されていましたので、改めて詳しく書かせていただくことにしました。

 

 今年の通常国会で、『地方財政法』を改正し、地方公共団体が、今年度から5年間で4900億円という大規模な財源に裏付けられた「緊急浚渫推進事業」を実施することが可能になりました。

 

 「浚渫(しゅんせつ)」というのは、河川や貯水池などの水底の土砂を掘り取ることです。河川の流路を拡げたり、深度を増したりすることができます。

 

 平時から、河川やダムの堆積土砂の撤去をして容量を増やしておくこと、河川内の樹木を伐採しておくことなど「維持管理」に力を入れることによって、豪雨時のリスクを低減化できます。

 

 「緊急浚渫推進事業」を発案することとなった最初のきっかけは、一昨年に、私の地元事務所が在る大和郡山市で自治会長として活躍しておられた方が、大雨で増水した河川に落下し、お亡くなりになってしまったことでした。

 当時は、国土交通省に中小河川も含めた浚渫事業支援をお願いしたのですが、1級河川以外は国庫補助事業の対象外ということで、困り果てていました。

 

 その後、昨年9月の総務大臣再任直後の10月に発生した令和元年台風第19号では、71河川140箇所の河川堤防が決壊し、多くの方々が犠牲になられました。

 

 主要河川と言われる1級河川は、『河川法』によって、国土交通大臣が指定し、国が維持・管理・使用の制限などを行っています。

 管理費用の負担も原則として国土交通省です。

 

 ただし、1級河川の一部については、都道府県が管理し、費用も負担することになっています。

 

 2級河川は、都道府県知事が指定することとなっており、準用河川は、市町村長が指定することとなっています。

 

 国が管理する河川については、国土交通省が対応して下さっていますが、都道府県が管理する1級河川の指定区間や2級河川、市町村が管理する準用河川や普通河川については、「維持管理」などの防災対策が国庫補助事業の対象とならず、地方公共団体の厳しい財政事情から、十分な対応ができていませんでした。

 

 総務省では、これまでも、地方公共団体が「維持管理」として実施する河川の浚渫に要する標準的な経費については、自治財政局で算定を行い、「普通交付税」の措置を講じてきました。

 

 しかし、「普通交付税」の使途については、国が強制力を持つものではなく、地方公共団体に任されています。

 福祉や教育や文化など住民の皆様の多様なご要望がある中で、普通交付税の使途として河川の「維持管理」の優先順位が低くなってしまっていた地方公共団体が多かったのだと思います。

 

 近年の豪雨災害では、国が管理する河川の支流など、都道府県や市町村管理の河川の越水でも命に関わる被害が出ています。

 

 総務省が主体となって、地方公共団体が早期に十分な防災対策事業に乗り出せる環境を整えることが急務だと考え、自治財政局の職員達に知恵を絞ってもらって、制度設計をしました。

 

 「緊急浚渫推進事業」の「浚渫」には、河川、ダム、砂防、治山に係るもので、土砂の除去・処分、樹木伐採などを含めました。

 

 地方公共団体には、堆積土砂率や人家への危険度に応じて、対策の優先度の高い箇所を『河川維持管理計画』に位置付け、緊急的に浚渫を実施していただきます。

 

 総務省では、地方公共団体が緊急的に河川やダムなどの浚渫を実施できるよう、『地方財政計画』に新たに「緊急浚渫推進事業費」を計上しました。

 

 今年の通常国会で『地方財政法』の改正をお認めいただいたことで、緊急的な河川などの浚渫経費について、特例的に地方債の発行が可能となりました。

 この特例債の財政措置は、充当率100%、地方債の元利償還金に対して70%の交付税措置を講じることとしました。地方公共団体にとっては、かなり手厚い財政措置です。

 

 総事業費については、国土交通省にご協力をいただき、全国各地で、「地方公共団体が緊急に実施する必要がある河川等の浚渫事業」について調査を実施しましたところ、必要な事業費が4900億円と見込まれることが明らかになりましたので、5年間で4900億円と致しました。

 

 私は、「国民の皆様の生命を守る」ことが、政治の究極の使命だと考えています。

 被災後の復旧にかかる莫大な費用を考慮しても、かけがえのない命を守る観点からも、防災対策の費用を惜しんでいる場合ではありません。

 

 更に、各地の川底やダムを掘って発生した土砂については、土質などの情報を公表することにより、地方公共団体や建設事業者が他の事業に広く有効活用できる仕組みも構築してみました。 

 土質にもよりますが、土砂の売却によって地方公共団体の新たな財源を生む可能性があります。

 

 知事や市町村長の皆様におかれましては、本事業を積極的にご活用いただき、各地域で緊急性の高い河川などの浚渫に、早急に取り組んでいただきますよう、お願い申し上げます。

 

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