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ネット上の権利侵害情報による被害者救済の迅速化に向けた『総務省令』の改正を実現

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 インターネット上の権利侵害情報による被害者救済の迅速化に向けて、「8月中の省令改正を目指します」と発言をしてまいりましたが、何とか省令改正に必要な手続が終わり、本日8月31日に施行することができました。

 

 誹謗中傷をはじめとするインターネット上の権利侵害情報については、匿名で投稿が行われた場合、SNSなどを提供するコンテンツプロバイダが、加害者である発信者の氏名や住所をご存知ではないことが多くあります。

 

 この場合、損害賠償請求などを通じて、被害者の救済をするためには、投稿時のIPアドレスをきっかけとして、権利侵害投稿の通信経路(携帯電話事業者のネットワークなど)を辿って、発信者を特定することが不可欠になります。

 

 このため、『プロバイダ責任制限法』第4条は、権利侵害を受けた被害者が、プロバイダに対して、発信者の特定に資する情報の開示を請求する権利を定めています。

 

 しかし、「具体的にどのような情報を開示するか」については、同条第1項によって、「氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって省令で定めるものをいう」と規定されています。

 

 これは、被害者を救済する観点からは、できるだけ多くの情報が開示されるべきである一方、発信者情報は個人のプライバシーや通信の秘密によって保護されているため、被害救済に関係のない情報までむやみに開示しないように、バランスを図る必要があるためです。

 

 こうした観点から、これまでの『総務省令』には、発信者の「氏名」「住所」「電子メールアドレス」「侵害情報の投稿を行った際のIPアドレス」などの情報が列挙されていました。

 

 本日に施行した『総務省令』では、開示情報に、新たに「発信者の電話番号」を追加しました。

 

 これまで『総務省令』で定めていた開示情報の中には「IPアドレス」がありましたが、通常、コンテンツプロバイダに対する仮処分申請により、「権利侵害情報の投稿に用いたIPアドレス」を入手したとしても、そこから発信者の「氏名」や「住所」を特定するためには、さらに、その「IPアドレス」を発信者に割り当てたアクセスプロバイダ(携帯電話事業者など)に対して訴訟を提起する必要があります。

 

 被害者は、「加害者を特定するため」だけに、合計2回もの裁判手続を経る必要がありました。

 

 しかし、最初から被害者がコンテンツプロバイダから発信者の「電話番号」の開示を受けることができれば、「電話番号」は電話会社によって1契約者あたり1つずつ割り当てられているものですので、弁護士会照会(『弁護士法』第23条の2)を通じて、電話会社から発信者の「氏名」や「住所」を取得することができ、裁判手続は1回で済むようになります。

 

 また、開示手続をスムーズに進めるようにすることは、被害者の救済を早めるだけでなく、「プロバイダが通信ログを一定期間後に消去することによって、発信者の特定に至らないケース」が多い中で、そのような問題を解消するというメリットもあります。

 

 本日の省令改正は、現行法が定める発信者情報開示の手続きの枠組みを維持した上で、その迅速化を図るものでした。

 

 1歩前進したことを喜んでいますが、まだ課題は残っています。

 

 省令改正によって、「発信者を特定するため」の裁判手続は1回に減る可能性がありますが、それでもなお、特定された発信者を相手どって損害賠償請求訴訟を行う必要は残るため、「最終的な被害救済」のためには、合計2回の裁判手続が必要となります。

 

 被害者をより効果的に救済するという観点から、例えば、1つの裁判手続の中で発信者を特定することにより、より円滑な権利回復を可能とする「新たな裁判手続」の実現を図ることが求められています。

 

 また、前記した通り、発信者の確実な特定につなげるため、「権利侵害情報の投稿に関係する特定の通信ログの早期保存のための方策」についても、検討していくことが望まれます。

 

 残された課題を解決するためには、法務省のご協力を得て、法改正を行う必要があります。

 賛否両論のご意見がある課題ですから、簡単なことではないと思います。

 総務省に設置している「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(座長:曽我部真裕・京都大学大学院法学研究科教授)で引き続き検討を進めていただき、今年11月を目途に、最終的な取り纏めを行っていただく予定です。

 

 以前にも書きましたが、一部の方が懸念を示しておられるような「政権批判を封じ込める」ような検討ではなく、正当な「表現の自由」は保障されます。

 あくまでも、名誉棄損、侮辱、脅迫、著作権侵害など「匿名であっても違法」な行為を減らし、被害者を救済するための検討です。

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