10万円の特別定額給付金Q&A①:施策の基本的考え方
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4月7日に閣議決定した「緊急経済対策」を実行する為の令和2年度補正予算に係る「概算」については、「補正予算案」を正式に閣議決定して国会に提出する直前まで、日々変化する新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況を注視しながら、与野党からの御意見や国民の皆様の切実なお声を伺いつつ、閣内でも激しい議論を重ねました。
結果的には、国会提出前に大幅な修正を行うことができ、4月20日に「緊急経済対策」も含めて「概算」の閣議決定をやり直しました。
その後、計数精査、予算書への落とし込み、印刷を終えて国会に提出された「令和2年度補正予算案」は、4月27日(月)から衆参両院で審議され、去る4月30日(木)の夜に成立しました。
今回の補正予算の中で大きな金額を占める「特別定額給付金」の給付実務は、市区町村の自治事務となり、地方自治行政を所管する総務省が給付実務の支援を任されることとなりました。
よって、順次、Q&A形式で、皆様の疑問にお答えさせていただきます。
先ずは、「特別定額給付金」という施策の基本的考え方からです。
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【Q1】
- 「特別定額給付金」制度の趣旨と概要は?
【A1】
「特別定額給付金」は、新型インフルエンザ等対策特別措置法の緊急事態宣言の下、生活の維持に必要な場合を除き、外出を自粛し、人と人との接触を最大限削減する必要がある中で、人々が連帯して、一致団結し、見えざる敵との闘いという国難を克服しなければならないことを踏まえ、「簡素な仕組みで、迅速かつ的確に、家計への支援を行う」ものです。
具体的には、4月27日時点で「住民基本台帳」に記載されていた日本国内にお住いの全ての方々に、1人当たり10万円が給付されます。
やむを得ない事情で「住民基本台帳」に記載されていなかったものの、4月27日時点で日本に在住していた方についても給付を受けていただけるように工夫しました。
特別定額給付金の手続としては、感染症対策の観点から、申請書の受付にあたっては、ご自宅からの郵送やオンライン申請など、窓口申請以外の方法を基本とします。
①市区町村から世帯主宛に、給付金の申請に当たり必要となる申請書が送付されます。
この申請書には、あらかじめ各世帯の構成員の氏名が印字されています。
1人あたり10万円の給付ですから、5人家族でしたら50万円の給付となります。
印字されたご家族の氏名と人数を確認して下さい。
②申請者は、申請書に給付金の振込を受ける口座などの情報を記入し、本人確認書類のコピーと通帳かキャッシュカードのコピーを貼り付けて、同封されている返信封筒(切手不要)を使って、市区町村に返送して下さい。
③マイナンバーカードをお持ちの世帯主については、申請書が届く前であっても、マイナポータルを使ってオンライン申請していただけます。
【Q2】
- 「緊急経済対策」において、「生活に困っている世帯に30万円」から「全ての人々に一律1人当たり10万円」へと、政策を変更した理由は?
【A2】
「生活にお困りの世帯に限定して30万円を給付する(生活支援臨時給付金)」という案を政府としてお示しした後、与野党の政策決定プロセスでも多くのご異論がありました。
4月7日の「緊急経済対策」と「概算」の閣議決定後、「補正予算案」の閣議決定や国会への提出までの間には、国民の皆様からも様々なご意見を頂戴しました。
最初の「概算」閣議決定を受けて、実務の段取りを担うこととなった総務省でも、給付金実施本部を設置し、「如何に、速やかに、生活にお困りの世帯に給付金をお届けするのか?」という具体的な方法について議論を重ねました。
しかし、当初の政府案(生活支援臨時給付金)では、「申請者が新型コロナウイルス感染症の影響による減収を証明する書類を用意し、市区町村が減収の状況を審査した上で給付対象者を決定する」というスキームになっていた為、申請者にとっても、市区町村職員にとっても、事務負担が大きく、給付までに時間がかかり過ぎるという課題がありました。
この懸念については、私から安倍総理にも率直にお伝えし、よりシンプルな制度設計に変更することで、迅速に給付金がお手元に届く施策を、再度、内閣府で検討頂きたい旨をお願いしました。
また、当時は、「皆が困っている時に、一部の人しかもらえない給付金は不公平だ」という不満のお声が、メディアでも紹介され、国会議員の事務所にも多く届いていました。
安倍総理は、国民の皆様の不満のお声を受けた与野党双方からの異論を受け止めて、かなり思い切った決断をして下さいました。
未だ「概算」を閣議決定しただけの段階でもあったことから、「令和2年度補正予算案」の内容を大胆に見直して閣議決定し、国会に提出し、与野党の御協力を得て、迅速に成立させていただけることとなりました。
同時期には、「緊急事態宣言」を全国に拡大せざるを得ない状況になっていました。
安倍総理は、「現在の収入状況にかかわらず、全ての人々が連帯して、一致団結し、見えざる敵との闘いという国難を克服しなければならないことを踏まえ、このタイミングで、もらえる人、もらえない人、といったことで国民の皆様に分断を作ってしまう事態は好ましくない」との思いから、大きな決断をされたのだと考えます。
給付対象人口が増えましたので、市区町村の事務量は増えますが、元の案と比べると、「減収を証明する書類の審査にかかる時間を省けること」は大きなメリットです。
また、「一律10万円給付」は、国会で与野党が合意した政策ですので、給付事務の開始に必要な市区町村議会での市区町村補正予算案の審議においても、元の案と比べると、政治的対立から市区町村補正予算の成立や給付事務の開始が遅れる可能性は低いと考えられます。
【Q3】
- 予算案の手続きなど重要案件で閣議決定をやり直したという前例はあるのか?
【A3】
昨年度にも、ありました。
2018年12月21日の定例閣議で「平成31年度一般会計歳入歳出概算について」を閣議決定しました。
その後、雇用保険の追加給付の必要性などから、2019年1月18日に「平成31年度一般会計歳入歳出概算の変更について」を閣議決定し、国会開会日の1月28日に臨時閣議で「平成31年度一般会計予算について」を決定してから、国会に提出しました。
平成31年度当初予算案の審議が国会で始まったのは、2月8日でした。
今回も同じですが、「概算」を閣議決定した後に、「予算案」閣議決定までの間、「計数精査の上、予算書に落とし込み、これを印刷する」という事務作業があり、数日間を要します。
【Q4】
- 「特別定額給付金」(全員に一律10万円給付)とは政策目的が異なる「生活支援臨時給付金」(減収世帯に限定した30万円給付)についても、同時に実施するべきとの指摘があるが、見解は?
【A4】
「特別定額給付金」は、全国全ての方々に1人あたり10万円を給付するものであり、事業実施主体である市区町村には、相当な事務負担が生じます。
更に「生活支援臨時給付金」に相当する事業を実施すると、市区町村に過大な負担をかけることになり、ひいては「特別定額給付金」の目的である「迅速かつ的確な家計への支援」が行えなくなるおそれがあります。
撤回された「生活支援臨時給付金」の目的である収入減少世帯への経済的支援については、「個人向け緊急小口資金」(休業などによって収入の減少があり、緊急かつ一時的な生活維持の為に資金が必要な世帯向け無利子貸付・返済免除あり)、「持続化給付金」(フリーランスを含む個人事業主や中小・小規模事業者への現金給付)、「雇用調整助成金」など、様々な支援策が存在します。
総理官邸ホームページで、分かりやすい情報提供がなされています。
また、家賃が支払えなくなった方々への支援策についても、与野党で議論が行われている最中だと承知しています。
総務省としては、先ずは、一律10万円の「特別定額給付金」を速やかに給付していただけるよう、市区町村を支援することに没頭したいと考えています。
【Q5】
- 「特別定額給付金」には課税されるのか?
【A5】
非課税になります。
これまで、生活支援の為の給付金(平成21年の「定額給付金」、平成27年の「簡素な給付措置」など)については、例外なく非課税としてきました。
【Q6】
- 「特別定額給付金」を課税対象にするべきではないか。高額所得者は10万円を受け取る必要はないのだから、課税して、高額所得者について減額の調整を行うべきではないか。
【A6】
一時所得の特別控除を適用しないで課税し、高額所得者について実質的に減額の調整を行うことについては、次のような課題があります。
①給与所得者について年末調整の対象とする場合には、既に新型コロナウイルスの関係で
疲弊している企業などの源泉徴収義務者に多大な負荷をかけることとなります。
②年末調整の対象としない場合には、通常は確定申告する必要が無い大多数の給与所得者や年金受給者が全て確定申告を行う必要が生じ、多くの方々に過大な事務負担を負わせることとなります。
③「特別定額給付金」を課税対象とした場合は、各種の社会保障制度における利用料や保険料の算定にあたり、所得の一部として取り扱われることとなります。
結果として、所得が必ずしも多くない方の利用料や保険料が増額されるなどの影響を与えることが懸念されます。
※「認可保育所の保育料」について、例えば、横浜市では住民税所得割課税世帯を課税額に応じて27区分に分け保育料を設定しています。
※「国民健康保険料」も、「被保険者均等割額」と「所得割額」との合計額が保険料となり、所得割額は被保険者ごとの基準総所得金額に保険料率を乗じて計算しています。
【Q7】
- 「特別定額給付金」の法的性格は?
【A7】
市区町村と申請・受給者との、民法上の贈与契約です。