今年の自民党サイバーセキュリティ対策本部の活動
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一昨年の衆議院議員選挙翌月の11月に、自由民主党本部に総裁直轄機関としてサイバーセキュリティ対策本部が設置され、初代本部長に就任。昨秋の党人事でも再任していただき、2任期を務めてまいりました。
今回は、これまでの自民党サイバーセキュリティ対策本部の活動概要について、報告させていただきます。
先ず、一昨年12月から本格的な議論を開始し、昨年4月24日には、119頁に及ぶ『第1次提言 ~リスクの最小化に向けて。「コスト」から「投資」への意識変革を~』を取り纏め、同月26日に、安倍晋三総理と菅義偉官房長官(政府のサイバーセキュリティ戦略本部長)に提出しました。
昨年の『第1次提言』では、政府のサイバーセキュリティ戦略本部が定める「重要インフラ」(2018年4月当時の13分野:情報通信、航空、鉄道、物流、医療、電力、ガス、水道、石油、化学、金融、クレジット、政府・行政サービス)に自動運転と安全保障を加えた計15分野について、「国内外で発生した主なインシデント事例」「サイバーセキュリティ対策の現況」「残存する課題と検討が望まれる対策」を分野別に整理した上で、「望まれる対策の方向性について(全分野共通)」として計45項目の具体的施策案を記しました。
その後、政府からは、3年間を見据えた新しい『サイバーセキュリティ戦略』(2018年7月27日閣議決定)、年次計画である『サイバーセキュリティ2018』(2018年7月25日サイバーセキュリティ戦略本部決定)が示されました。
党の『第1次提言』の内容が随所に反映されたことについて、評価し、感謝しています。
特に、『第1次提言』で強く求めた「必要な予算の確保」につきましては、政府全体のサイバーセキュリティ関係予算合計額が、平成30年度当初予算621.1億円から平成31年度(今年度)当初予算712.9億円へと増額され、関係府省庁では重要施策の強化と新規施策の展開が実現しました。
また、『第1次提言』では、「重要インフラ13分野の『航空』とは、『航空運送事業者』を指し、『空港ビル事業者等』が含まれていない」ことを指摘しましたが、2018年7月25日にはサイバーセキュリティ戦略本部で「空港」が追加され、重要インフラは14分野になりました。
しかし、サイバー攻撃の増加、サイバー犯罪における手口の巧妙化、IoT機器の急激な増加、サプライチェーンリスクの増大など、現状は深刻です。
NICT(National Institute of Information and Communications Technology:情報通信研究機構)により開発されたNICTER(サイバー攻撃観測・分析・対策システム)が観測した「海外送信元から日本国内に向けて行われたサイバー攻撃のパケット総数」を見ますと、驚くべき状況です。
一昨年(2017年1月1日~12月31日)は約1400億で、日割りしてみますと、1日平均で約3億9千万回の攻撃を受けていたことになります。
そして、昨年(2018年1月1日~12月31日)は約1900億で、1日平均で約5億2千万回もの攻撃を受けています。
明らかに海外送信元から日本国内に向けたサイバー攻撃は急増しており、国際連携を含む対応の重要性が増しています。
そこで、今年の『第2次提言』の取り纏めにあたっては、昨年の『第1次提言』の一部を深掘りし、特に「国際ルールの構築に向けた積極的な貢献」「技術革新に後れを取らない法制度整備」「サイバーセキュリティ対策に資する体制強化」に焦点を絞って議論を行いました。
今年は、特に「法制度整備」に関して議論が紛糾した課題もあり、取り纏めには苦労しましたが、長めのゴールデン・ウィークにパソコンに向かい、『第2次提言』の案文を書き上げ、5月9日のサイバーセキュリティ対策本部会議で、出席議員全員の了承を得ることができました。
5月13日に、党の幹事長、総務会長、政調会長に提言書をお届けしました。
5月14日には、本部役員の皆様とともに官邸を訪問し、総理と官房長官に『第2次提言』の概要を説明し、手交しました。
総理からは「サイバーセキュリティは成長戦略を進める基盤なので、しっかり対応していきます」というお言葉をいただきましたが、「野心的な提案だね」という感想も伺い、提言内容の実現に向けては高いハードルがあることも感じ取りました。
総理や官房長官の強いリーダーシップによって、産学官のサイバーセキュリティ対策が進むとともに、私たちの日々の暮らしが安心できるものになることを期待します。
明日から、数回に分けて、『第2次提言』に記した内容の一部について、ご紹介します。