議員立法案『婚姻前の氏の通称使用に関する法律案』を自民党法務部会に提出
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今週の様々な活動の中で、1件、ご報告しておきたいことがあります。
去る12月1日(火)付で、自民党の法務部会(奥野信亮部会長)に対して、議員立法として再審査をお願いしたい『婚姻前の氏の通称使用に関する法律案』を、提出しました。
この法律案は、私が約18年前に起草し、法務部会に提出したものです。
平成14年(2002年)に、「戸籍まで夫婦親子別氏」としてしまう法律案(民法の一部を改正する法律案)に反対する立場から、対案として書いたものでした。
私の立場は、「戸籍における夫婦親子同氏」の「ファミリーネーム」は堅持した上で、職場や社会生活においては「婚姻前の氏」を通称として使用できる環境を整えるべきだというものでした。
平成14年当時の自民党法務部会では、両案が並んで審査され、両案とも否決されました。
しかし、昨今の政府や与野党議員の動向に危機感を覚え、条文の内容が18年の時を経ても古くなっていないかどうかを精査した上で、法務部会に再提出したものです。
条文をご紹介しても分かりにくいと思いますので、法案の概要について、以下、記します。
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『婚姻前の氏の通称使用に関する法律案』の概要
≪目的≫
この法律は、「夫婦の氏が同一であること」を維持しつつ、婚姻前の氏を通称として称する機会を確保するため、戸籍に「婚姻前の氏を通称として使用する」旨を記載する制度を設けるとともに、国、地方公共団体、事業者その他公私の団体は婚姻により氏を改めた者が婚姻前の氏を通称として称するために必要な措置を講ずる責務を有すること等について定め、もって婚姻により氏を改めた者が不利益を被ることの防止及び婚姻前の氏の通称使用についての社会全体における統一性の確保に資することを目的とする。(第1条)
≪内容≫
1.戸籍に「婚姻前の氏を通称として使用する」旨を記載する制度を設けることとしている。(第2条)
婚姻前の氏を通称として称しようとする者は、婚姻届にその旨を付記して届け出なければならない。
2.婚姻により氏を改めた者が婚姻前の氏を通称として称するために必要な措置を、国、地方公共団体、事業者その他公私の団体が講ずる責務を有するものとする旨の規定を設ける。(第3条)
①国、地方公共団体、事業者その他公私の団体は、法令により氏名の記載又は記録を要する場合において、届出をした者については、婚姻前の氏を「併記」(戸籍氏名と婚姻前の氏の併記)する方法により、婚姻前の氏を通称として称することができるよう、必要な法制上の措置その他の措置を講ずる責務を有する。
②国、地方公共団体、事業者その他公私の団体は、届出をした者が、職業生活その他の社会生活の幅広い分野における活動において、婚姻前の氏を通称として称する機会を確保するため、①の措置との整合性に配慮しつつ、当該活動の内容、性質等を踏まえ、必要かつ相当と認められる措置を講ずるよう努めるものとする。
3.経過措置として、法律施行前に婚姻によって氏を改めた者であって婚姻前の氏を通称として称しようとする者は、婚姻中に限り、配偶者との合意に基づき、この法律の施行の日から1年以内に、婚姻前の氏を通称として称する旨を届け出なければならない。
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以上の骨子に「条文」や「新旧対照表」などを添えて、1日(火)に奥野法務部会長に再提出をするとともに、3日(木)には下村博文政調会長にもお渡し致しました。
夫婦同氏制度は、旧民法の施行された明治31年に我が国の法制度として採用され、我が国の社会に定着してきたものです。
氏は、家族の呼称として意義があり、現行民法の下においても、家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位と捉えられ、その呼称を一つに定めることには合理性があります。
そして、夫婦親子が同じ氏であることは、家族という一つの集団を構成する一員であることを、対外的に公示し、識別する機能を有しています。
各種手当や相続をはじめ、戸籍を基に運用される多くの法制度も存在します。
特に、婚姻の重要な効果として夫婦間の子が夫婦の共同親権に服することを示すために、子が夫婦双方と同氏である仕組みを確保することにも一定の意義があります。
「戸籍上も夫婦別氏」となってしまうと、「子供の氏」は両親のどちらかと異なることとなり、婚姻届や出生届の提出前に、子供の氏を両親が奪い合うようなトラブルも想定されます。
例えば、平成14年に自民党法務部会で審査された、いわゆる『夫婦別氏法案(民法の一部を改正する法律案)』では、「子の氏」について、以下のような規定がありました。
- 「別氏夫婦は、婚姻時に『子が称すべき氏』を定めなければならない」
- 「最初の子の出生時に届け出ることによって、婚姻時に定めた『子が称すべき氏』とは異なる氏を『子が称すべき氏』とすることができる」
- 「別氏夫婦の複数の子は、すべて同じ『子が称すべき氏』を称する」
- 「成年に達した後は、特別の事情の有無を問わず、家庭裁判所の許可を得て氏を異にする父又は母の氏を称することができる」
当時も、「兄弟姉妹の氏が異なることは、子に対して悪影響がある」という世論調査結果を受けて、「複数の子の氏は統一する」こととされていましたが、これでは「家名を絶やさない」という別氏推進派の希望も叶わない上、婚姻届提出時、出生届提出時、成人後など、子の氏が度々変更される可能性があります。
私は、「子供の氏の安定性」は、損なわれてはならないと考えます。
また、夫婦親子別氏の御家族に対して、「第三者が神経質にならなければならない煩雑さ」も懸念しています。
仮に民法改正が実現したとして、経過措置期間中に別氏に移行した夫婦や親子を認識していなければ、例えば年賀状の宛名書きでも、相手に対して大変な失礼をしでかすことになります。
結婚披露宴に招かれて「ご両家の皆様に、お慶びを申し上げます」と祝辞を申し上げてしまった場合、新郎と新婦のご両親が別氏を選択していたなら、「ご4家の皆様」と言わなければ失礼にあたります。
今や殆どの専門職(士業・師業)など国家資格においても、届出により、戸籍氏名と婚姻前の氏を併記することが認められており、マイナンバーカードでも同様です。
総務大臣在任中には、『公職選挙法』を所管する立場から、議員の当選証書も併記を可能にしました。
先ずは、婚姻前の氏の通称使用が可能な場面を増やすことによって、婚姻に伴う氏の変更による社会生活上の不便を解消し、我が国の優れた「戸籍制度」や「ファミリーネーム」は守り抜きたいと考えます。
議員立法の場合、党内で法案を審査していただけるか否かは、内閣提出法案の数や国会日程など様々な事情を勘案しながら、政調会長や法務部会長が判断して下さることだと思いますので、先行きは見えませんが、私の法案は、今後の議論の叩き台にはなると思います。