令和5年6月13日 記者会見
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1.発言要旨
宇宙政策担当大臣として報告を申し上げます。
本日、宇宙開発戦略本部が開催されました。「宇宙基本計画」「宇宙基本計画工程表」及び日本初となる「宇宙安全保障構想」を決定いたしました。また、その後の閣議におきまして、「宇宙基本計画」を閣議決定しました。
宇宙開発戦略本部において、総理から特に次の2点について御指示がございました。
まず、研究開発について、今後、新たに「宇宙技術戦略」を策定し、JAXAの研究開発力を強化するとともに、JAXAが企業や大学に資金を提供する機能を強化し、官民連携でイノベーションを加速していくこと。
また、「宇宙安全保障構想」では、安全保障のために、宇宙システムの利用を抜本的に拡大するとともに、宇宙空間の安全かつ安定的な利用を確保していくこと。そのために民間の技術も活用し、情報収集、通信、衛星測位、宇宙領域の監視など、安全保障のための「宇宙アーキテクチャ」を構築していくことでございます。
我が国の宇宙活動の自立性を維持・強化し、宇宙先進国の一角として世界をリードしていくため、総理の御指示を踏まえ、私自身先頭に立って、関係大臣とも連携しながら宇宙政策を前に進めてまいります。
2.質疑応答
(問)先日、自民党から海洋開発重点戦略の策定や海洋開発戦略資金の創設について提言があり、大臣にも申入れがあったと思います。今後、科学技術政策にどのように活かしていくのか、教えてください。
(答)5月31日に、自民党の宇宙・海洋特別委員会から御提言を賜りました。その際には、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」を担当する立場で、是非御協力願いたいという御要請をいただきました。
重点分野とされています自律型無人探査機(AUV)の開発や、レアアース泥を始めとする南鳥島海域の開発につきましては、主にSIPの取組を通じて貢献できると思っております。
AUVにつきまして、SIPにおいて深海調査技術の事業化を目指して複数機運用技術などに取り組むとともに、経済安全保障のKプログラムにおきましても、海洋状況把握の強化に必要なAUVの高度化を目指しております。
また、南鳥島海域の開発につきましては、SIPで環境影響評価を行いながら、水深約6,000メートルの海底からレアアースを含む泥を引き揚げて、必要なレアアースを精錬・精製する一連の生産プロセスの実証を目指しております。しっかりと取り組んでまいりたいと思います。
(問)「宇宙安全保障構想」の関連ですが、改めて大臣の御所感と、構想の実現に向けて今後どう取り組んでいかれるか、お聞かせください。
(答)本日決定された「宇宙安全保障構想」は、昨年末の「国家安全保障戦略」で示された政策と課題を具体化するものでございます。安全保障に必要な今後約10年の取組を明らかにいたしました。
すなわち、安全保障上の目標や、目標を達成するためのアプローチなどを示すものでございまして、それらを「宇宙基本計画」における個別事業に反映をいたしました。
「宇宙安全保障構想」のポイントは、3つのアプローチでございます。
まず、将来的な姿として、安全保障のための宇宙システムの利用の抜本的拡大、つまり宇宙からの安全保障と、宇宙空間の安全かつ安定的な利用の確保、つまり宇宙における安全保障の全体像を、安全保障のための宇宙アーキテクチャとして示す。その上で、これを実現するために、安全保障と宇宙産業の発展の好循環の実現を図るべきことを明らかにする、ということです。
あわせて、政府の宇宙安全保障上のニーズを民間部門に明確に示すことによって予見性が確保できますから、民間部門の投資を促進し、宇宙安全保障の一層の強化の実現を図ろうとするものでございます。
ロシアによるウクライナ侵略でも、ウクライナとロシアの双方が通信の継続や画像情報の取得のために衛星を活用しております。宇宙利用が、安全保障能力の向上に必要不可欠であることが改めて示されたと言えると思います。
一生懸命、関係府省庁に協力をいただいて取りまとめた「宇宙安全保障構想」ですから、しっかりと実現をしてまいります。
(問)昨日、経済安全保障法制の有識者会議で、特許非公開及び基幹インフラ事業の指定基準の検討状況の説明がされたと思いますが、この会議の議論の受け止めについて、大臣の御見解をお伺いできればと思います。
(答)昨日の有識者会議は、私自身は委員会出席のため参加できませんでしたが、今おっしゃっていただいた、基幹インフラと特許出願の非公開の両分野の検討状況について、政府から説明し、多くの方々から御賛同の御意見をいただいたと聞いております。
両分野の細則を定める政省令につきまして、今後実施するパブリックコメントも踏まえながら、具体的な内容について検討を行ってまいります。
また、両制度の運用開始につきましては、令和6年の春頃を目指しておりますけれども、関係事業者や産業界と丁寧な調整も行いながら、十分な制度の周知を行った上で、制度の運用を開始したいと思っております。
(問)冒頭で、JAXAによる企業や大学への資金提供機能の強化について御発言があったと思います。今朝の報道では、民間企業への投資のために、JAXAに基金を設けるための法改正をするとありましたが、この法改正の事実関係について、分かっていることがあれば教えてください。
(答)本日閣議決定をした「宇宙基本計画」におきましては、我が国が開発を進めるべき技術を見極めて、新たに「宇宙技術戦略」を策定するとともに、JAXAの大学や民間事業者等への戦略的かつ弾力的な資金供給機能を強化することを掲げました。
自民党からの御提言で、今おっしゃったような内容をいただいていることは承知いたしておりますが、政府として具体的な資金供給機能の強化の在り方につきましては、今後、政府部内で検討を進めていくことになる、ということでございます。
(問)今朝方の話ですが、福岡県の宇宙ベンチャーが開発した小型レーダー衛星が、アメリカで打ち上げられ、今のところ順調のようですが、国としても小型衛星のコンステレーションの構築に力を入れる中、今回の打上げをどのように受け止められますか。
(答)日本のスタートアップ企業でありますQPS研究所が、小型SAR衛星(合成開口レーダーを積んだ衛星)の6号機の打上げに成功したということで、大変誇らしく、嬉しく思っております。
世界的に多くの民間企業がしのぎを削っている中で、同社の3、4号機は打上げできませんでしたけれども、それを乗り越えて、小型SAR衛星コンステレーションの構築に向けて、一歩前進されたことは、とても心強いことでございます。
合成開口レーダーでございますけれども、昼夜、悪天候を問わず、災害時の被災状況などを、非常に明確に把握することが可能でございます。QPS研究所の衛星を始めとする小型のSAR衛星コンステレーションによりまして、より短時間で被災状況を把握できる、対応ができる体制に繋がっていくことを期待しています。
ちなみに、本日閣議決定しました「宇宙基本計画」にも、2025年までに小型SAR衛星コンステレーションを構築するということで、内閣府を中心として関係省庁と連携して実証事業を推進しております。これからも政府としてしっかりと支援してまいりたいと存じます。