令和5年6月6日 記者会見
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1.発言要旨
経済安全保障担当大臣として御報告申し上げます。
5月29日の第6回経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議におきまして、中間論点整理の取りまとめに向けて骨子案をもとに御議論いただきましたが、今般、中間論点整理が取りまとめられました。
骨子とともにお手元にお配りしております。内閣官房のホームページにも掲載をいたします。
骨子につきましては、5月29日に公表した骨子案から表現上の修正があったのみでございます。
また、中間論点整理の本文については前文が設けられたほか、骨子に肉付けして丁寧な説明をしております。
中間論点整理におきましては、骨子案の説明の際にも申し上げましたけれども、今後、制度設計を行うに当たっての明確な方針を示していただいたと考えております。
この中間論点整理を踏まえまして、引き続き制度設計に向けた検討を急いでまいります。
私からは以上でございます。
2.質疑応答
(問)文部科学省が大学等の研究交流、国際交流の状況を公表しました。日本から海外へ行く研究者、あるいは海外から日本に来る研究者は大幅に減っていますが、今後、国際交流を活性化して国際頭脳循環を実現するために、どういった取組を進められていくのか、教えてください。
(答)我が国が卓越性の高い研究を生み出すためには、国際的な人材流動の環の中に位置づけられることが重要でございます。
政府としての取組ですが、トップ研究者間の国際交流の活性化による日本人研究者の国際科学トップサークルへの参入や次世代の優秀な若手研究者の国際交流を促す「先端国際共同研究推進事業/プログラム」、また、ハイレベルな国際共同研究を支援する「科研費の国際先導研究」、さらに、優れた研究人材が世界中から集うハブとなる研究拠点の形成・強化を図る「世界トップレベル研究拠点プログラム」などの取組を通じて、国際頭脳循環を推進しています。
最近では、同盟国・同志国から多くの国際共同研究の引き合いがございます。先般のG7仙台科学技術大臣会合のバイ会談におきましても、日本が取り組んでいる国際頭脳循環への期待は非常に高いものがございました。これからも我が国と海外の研究者の交流を活性化するために取り組んでまいりたいと思っております。
(問)AI戦略会議で示された暫定的な論点整理では、偽情報の社会リスクに関する指摘がありました。大臣はTwitterで、台湾の認知戦対応するプラットフォームの事例を挙げた上で、日本でも同様の体制整備が急務だとの見解を御投稿されています。こうした議論をどの場で進めるのが望ましいのか、また安全保障の観点など議論する上での課題をどうお考えか、教えてください。
(答)5月26日のAI戦略会議で取りまとめられた「AIに関する暫定的な論点整理」におきましては、生成AIにより、簡単に偽情報を作ることができ、社会を不安定化・混乱させるリスクが高まっていると指摘されました。
現状、インターネット情報に関しましては、総務省の有識者会議において、プラットフォーム事業者による偽情報の削除などの取組をモニタリングし、結果を公表することによって透明性の確保を図っておられます。
また、情報の受け手側の対策としては、偽情報に関する啓発教育教材の開発など、ICTリテラシーの向上にも関係企業や省庁と連携して取り組んでいると伺っております。
生成AI関係につきましては、論点整理におきまして、生成AIによる偽情報のリスクに対しては、「現時点では、刑法などの法制度と執行体制により対処されるものと考えられる。その上で、現行の制度・ガイドライン・体制で不足する場合には、諸外国における同種の問題への対処方法なども参考に対応を検討すべきではないか」と指摘されております。
まずは、AI戦略チームにおいて関係省庁と問題意識を共有して、また諸外国における対処方法なども把握しながら、具体的な議論につなげていくことになると思います。
それから、安全保障の観点ですが、これはいわゆる認知戦対策になると思います。昨年12月に決定された「国家安全保障戦略」におきまして、「偽情報の拡散等を通じた情報戦等が恒常的に生起し、有事と平時の境目はますます曖昧になってきている」とされて、そのため「偽情報等の拡散を含め、認知領域における情報戦への対応能力を強化する」としております。
これに基づいて、先般、官房長官の記者会見でもございましたが、海外からの偽情報の収集・分析・発信について、外務省、防衛省、内閣情報調査室、官邸広報室が連携して行うこととされております。
しかしながら、私は、スピード感を持って、海外への発信も重要ですが、偽情報が拡散した場合に、国民の皆様に対してもいち早く正しい情報を発信する体制及び技術は重要だと思っております。
私自身は、直接この偽情報に関する担当大臣ではございません。しかしながら、経済安全保障担当大臣としてKプログラムも所管しておりますし、また科学技術政策担当大臣でもございますから、貢献できるとすれば、ディープフェィクを検知する技術開発、ディープフェィクが流通しない仕組みの開発・研究を検討していきたいと考えております。
(問)セキュリティ・クリアランスの中間整理についてお聞かせください。
大臣は以前、このセキュリティ・クリアランスについて、特定秘密保護法の産業技術版と御説明をされていたと思います。今回、民間企業の社員、研究者の方も対象とする仕組みだと思いますが、改めて、産業界からどういう期待があるか、どういう声があるかという大臣の御認識と、この制度を改めて導入する意義について、お聞かせ願いします。
(答)特定秘密保護法の場合は、対象が外交、防衛、特定有害活動の防止、テロリズムの防止の4分野に限定されております。そして、圧倒的に多くの対象は国家公務員でございます。現状約13万人ぐらいで、官僚が97%、民間が3%でございます。
その中で今、特に日本の友好国・同志国で、G7やファイブアイズの国々の情報保全制度を見ますと、日本の4分野に加えて、経済や技術分野も対象になっている。そうしますと、民間の事業者の方々からも有識者会議でヒアリングをしましたし、また内閣府の職員独自に企業に出向いてヒアリングをしましたけれども、やはり圧倒的にニーズは高かったと思っております。
海外政府の調達に入ろうと思ったときに、日本の民間のビジネスマンの方が、特に4分野の対象外のデュアルユース技術と言われる分野において、なかなか入札の説明会にも呼んでもらえないことや、民間企業同士の研究開発であっても、機微な情報が得られなくて結局契約に至らなかったこと、それから研究者の方が学会やカンファレンスなどに出る時に、クリアランスホルダーオンリーということで重要な先端技術に触れる機会がないこと、こういったお話も伺いまして、このまま放置しておくと、これからデュアルユースの分野はどんどん増えていく状況の中で、日本企業がみすみす海外においてビジネスチャンスを失ってしまう。この危機感が私には非常に強くございますので、できるだけ速やかに法制度として整備をしたいと考えております。
(問)関連してもう一点伺わせてください。
今回の中間整理の段階では、身辺調査の詳細や、秘密を漏えいしてしまった場合の罰則に関しては言及を控えられていると思いますが、今後の議論に向けてどういう点が課題になっていくか、大臣のお考えをお聞かせください。
(答)これから法整備に向けて詳細な議論を詰めていく段階でございます。
ただ、罰則につきましては、特別の情報管理ルールを定めて、情報漏えいした場合には厳罰を科すことが通例であり、やはり国際社会の中で通用する制度にしなければいけないと思っております。
その他の詳細はこれからでございますし、内閣法制局との相談もしなければならないと思っております。