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憲法タウンミーティングが開催されました。

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 昨日の憲法記念日には、社団法人日本青年会議所の皆様が、全国47都道府県で一斉に「憲法タウンミーティング」を開催されました。

 私は、奈良県のタウンミーティングのパネリストとして、共産党の石井郁子衆議院議員とともにお招きをいただき、参加してきました。
 主人は、過去に鯖江青年会議所理事長を務めたご縁もあって、福井県のタウンミーティングに参加したそうです。

 このところは、どこへ行っても景気・雇用対策や新型インフルエンザの話題ばかりでしたが、本来は、国政選挙でも、全ての政策・法制度の基準となる日本国憲法の在り方が最大の争点となるべきだと思います。
 日本青年会議所では、独自に日本国憲法草案を条文化されており、この度のお取組みは、素晴らしく意義深いことだと、敬意を表しています。

 憲法は、国家の統治機構の設置根拠と運営の基本、及び国民の地位を定めた最高法規ですから、憲法に反する内容の法律は作れません。
 私は、「現代の国家的課題に対応できる憲法」を創るべき時期に来ていると考えています。

 皆様とともに「憲法と私たちの暮らし」の関係を考える上で、幾つかの例を挙げてみます。

 先月下旬から、多くの皆様からいただいたご質問は、「新型インフルエンザの水際措置として、何故、政府は日本人の発生国への渡航を『禁止』しないのか?」というものでした。
 確か、過去にイラクで邦人誘拐事件が発生した折にも、「何故、政府は渡航禁止をしないのか」とのお叱りをいただきました。
 その際にも、「渡航禁止は、憲法に抵触するから不可能だ」という意見が出ていました。

 現行憲法第22条に、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転、及び職業選択の自由を有する」「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない」という規定があるからです。
 私は、第22条1項に「公共の福祉」という文言が入っていますので、国民の生命が危険に晒されるような事態であれば、渡航禁止措置は可能だと考えています。

 しかし、第14条には、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」という規定があります。
 どんなに危険な状況であっても、マスコミの方々は「現場で起きていることを国民に伝えなければ」という責任感から、渡航を選択されると思います。
 その場合、第14条の規定ではマスコミ関係者に限っての例外措置は認められないことから、現実には渡航禁止は困難だとされています。

 戦後すぐの現行憲法制定時に較べると、「モノ・人・金・情報」が容易に国境を越えられるボーダレス化の時代です。
 「現在に生きる国民の生命や財産を守り抜ける憲法」であるためには、どのような条文にすれば良いのかということも、1つの論点であると思います。

 また、何年も前から小学生の保護者の方々から伺っておりました公立学校での教育の在り方も、憲法と大いに関係があります。  
 
 現行憲法第20条3項に「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教活動もしてはならない」と規定されていることから、給食の時間に「いただきます」と手を合わせることを、「仏教的作法」として禁止した例、奈良県への修学旅行で神社仏閣見学を避ける引率教師の例、地域の神社での秋祭りへの公立学校の子供達の参加が取り止めになった例等のご相談を受けました。

 読むだけで現場の教師の方々が容易に判断できる表現にして、日本人としての伝統的慣習や文化、礼儀作法については堂々と教育できる内容にするべきだと思います。
 平成17年に自民党が発表した新憲法草案第20条では、「国及び公共団体は、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超える宗教教育その他の宗教的活動であって、宗教的意義を有し、特定の宗教に対する援助、助長若しくは促進又は圧迫若しくは干渉となるようなものを行ってはならない」として、例外的対応の範囲を示しました。
 
 この他、既に各地でご利用いただいている「特区制度」についても、現行憲法第14条と第95条に違反するのではないか・・・という議論があります。

 第14条の「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」については、「特区制度による地域活性化が、国全体の公益に繋がる場合、異なる事情の下での異なる規律は許容される」との解釈で運用しています。

 第95条の「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない」という規定についても、「『一の地方公共団体』は駄目だが、『地域』なら可能、地方公共団体の組織や機能の変更ではないから可能」との解釈で運用されているようです。
 私は、この際、第95条は削除すべきだと思います。

 また、将来に向けて「道州制」や「市町村合併」への対応も可能な条文を新設しておくべきでしょう。

 第91条に、「地方自治体は、基礎地方自治体及びこれを包括し、補完する広域地方自治体とする。地方自治体の組織及び運営に関する基本的事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律で定める」という条文を追加すれば、広域の行政単位を創設することも可能になります。

 都市部と地方部の経済格差を憂う声を多く伺いますが、「国から地方への税源移譲」や「地域格差是正措置」を担保する規定も必要だと思います。

 第94条に、「地方自治体の経費は、その分担する役割及び責任に応じ、条例の定めるところにより課する地方税のほか、当該地方自治体が自主的に使途を定めることができる財産をもってその財源に充てることを基本とする。国は、地方自治の本旨及び前項の趣旨に基づき、地方自治体の行うべき役務の提供が確保されるよう、法律の定めるところにより、必要な財政上の措置を講ずる」という規定を置き、第92条を、「国及び地方自治体は、地方自治の本旨に基づき、適切な役割分担を踏まえて、相互に協力しなければならない」という規定にすれば、地方を応援する法律が作り易くなります。

 更に、第91条に、「地方自治は、住民の参画を基本とし、住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施することを旨として行う。住民は、その属する地方自治体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し、その負担を公正に分任する義務を負う」という規定を加えると、「地方自治における住民の負担分任義務」も明らかになります。

 この他にも、現行憲法には、単純な「誤記」も存在します。
内閣の職務権限として、第73条や第86条には「予算の作成と国会への提出」とありますが、内閣が国会に提出するのは、「予算」ではなく「予算案」です。国会で国民の代表である国会議員が審議して、可決されてはじめて「予算」となります。
 日本国の最高法規である憲法に、単純ミスと思われる表現が残っているのは情けないことだと思います。

 国会が混乱して、予算が前年度内(3月末まで)に成立しなかった場合に、つなぎのお金で政策を実行しなければなりませんが、第86条には「予算不成立時の必要最小限の支出」を担保する規定も必要です。
 第90条で「決算における国会の役割」を明確化しておくことも必要です。

 既に、このサイトでは、前文や第9条など「安全保障」に関する私の考え方は度々書いていますので、今回は省略しますが、昨今の北朝鮮の行動を見ますと、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」としている現行憲法前文は虚しいものになっています。

 平成12年1月に衆議院憲法調査会が設置されて以来、既に10年近くが経過しました。私自身は衆議院憲法調査会に設置されていた「政治の基本機構の在り方に関する小委員会」の初代小委員長を務めました。
 平成17年10月に発表した「自民党新憲法草案」作成時にも、項目別に条文私案を提出し、議論に参加してきました。
 戦後の憲法論議の歴史上、自民党が政党として初めて新憲法の具体案を条文の形で示したことは画期的なことだと自負していますが、実際の改正までの道程の険しさに直面すると、何としても国民世論の後押しが必要だと痛感しています。

 「内外の環境変化に現行憲法が対応できていない現実」については、既に多くの政党や国民が認識している状況にあると思います。
 過去の衆議院憲法調査会に於ける議論でも、自民党から共産党まで全ての会派が一致した見解は、「現実と憲法の乖離」でした。
 
 ところが、「現実と憲法の乖離を埋める為のアプローチ」については、政党間で意見が違っています。
 自民党は、「現実に対応できる憲法を創るべき」とのスタンスですが、社民党や共産党は、「現実を憲法に近づけるべき」とのスタンスです。

 法は、「目的」ではなく、あくまでも「手段」であり、手段は目的に応じて変えるべきだと思います。皆で力を合わせて日本が目指すべき国家像を考え、その国家像を実現できる憲法を創らなければなりません。

 平成19年5月には、「憲法改正国民投票法」が成立し、平成22年5月から施行されます。
 憲法改正は、憲法丸ごとではなく、関連する項目ごとに進められることとなりました。国民の意見が大きく別れるであろう第9条の議論には時間をかけざるを得ませんが、前述した単純な誤記条文の改正や柔軟な地方自治を担保する規定新設についてならば、結論は出やすいのではないでしょうか。

 1日も早く国会に憲法審査会が正式に設置され、議論を開始できることを望んでいます。野党各党の反対は残念です。

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