消滅可能性都市をめぐる論点
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今週も、来年度予算案に関する予算委員会での答弁や「地方税法改正案」「地方交付税法改正案」に関する本会議での答弁などで慌ただしく過ごしました。
地方では2月議会が行われており、「人口減少問題」が多くの自治体で議案として取り上げられています。
昨年の5月、日本創生会議の人口減少問題研究会から、いわゆる「増田ペーパー」が発表されました。
注目されたのは、「消滅可能性都市」として896もの自治体の名が挙げられたことでした。全国の自治体の約半数にあたる数です。
この課題をどのように考え、何に重点を置いて取り組むかによって、地方の将来、そして日本の将来が変わってきます。
実務的に考えると、人口社会減の原因を探ることになるのでしょう。
それは、多くの地方で、大学進学時と大学卒業時です。なぜ地方を離れるのか。共通して挙げられるのは「仕事」です。
他方、昨年、政府が首都圏で行ったアンケートでは、4割の人が地方への移住を「予定している」または「検討したい」という結果がでています。
ただ、移住にあたって不安な点の第1位は、やはり「仕事」です。
では、地方に仕事がないのかと言えば、そうではありません。
有効求人倍率の推移を見てみると、この1年、全体的に上昇しており、最も人手が足りないのは東京ですが、それ以外は地方都市が上位に並んでいます。
ここから、人口問題の論点が分かれてきます。
予め断っておきますが、どれが正しいということではありません。
ただ、地域経済の構造改革にあたっては、「マネジメント哲学」のようなものが問われるだろうと思います。
一つの論点は、「集約化と効率化」でしょう。
集約化によって、人手不足を解消しつつ、生産性を高め、「質の高い」雇用を創出するという考え方です。
実際、地方経済の主体となっている中小企業では、年々経営者の高齢化が進み、廃業件数も増え、事業承継についての相談も増えています。
この中から見事に再生し、雇用を生み出している企業もでています。また、蓄積された経験や技術を生かし、新しい企業に移って活躍している個人もおられます。
私の地元の奈良県には、かつて国内で過半のシェアを誇った靴下製造業があります。
海外の安い製品の流入によって、国内シェアや企業数は随分減りましたが、中国の高級品市場を開拓し、昨年からは「奈良ブランド」を前面に出した「攻めの経営」を展開しています。
もう一つの論点は、「見えない価値の再評価」でしょうか。
地方において、お金では買えないものに満足感を得て、生き甲斐を感じる場を作っていくことです。
実は、「増田ペーパー」の消滅予測は、2010年のデータに基づいています。
マクロでは、直近でも東京への人口流入が続いています。しかし、市町村レベルでみると、2010年代になってから、「都市から地方への移住」が継続して増えています。
海士町、神山町、紫波町などのフロントランナーの方々の話によると、これらの地域で創造されている「仕事」は実に多様です。
もちろん沢山の課題はあるわけですが、地方には無限の可能性があると感じます。
皆様は、どちらに、より共感されるでしょうか?
どちらも、地方の「現実」なのだと思います。
また、共通した論点としては、「医療や教育などの機能をどう維持するか」ということもあります。
これから難しい舵取りが求められますが、ぜひ、それぞれの故郷で、「消滅」ではなく、「ありたい姿」をとことん議論し、その実現にこだわっていただきたいと思います。
「増田ペーパー」は、「何も手を打たなかった場合」の試算です。悲観することは全くなく、「打つべき手を早急に打とう」という問題意識と新政策構築のチャンスを我々に与えてくれた貴重な警鐘でした。
安倍内閣は、新年度予算や法改正を通じて、チャレンジする地方や事業主体を全力で応援してまいります。