予算委員会質疑報告⑥:「エネルギー基本計画」の在り方
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【2月10日 予算委員会質疑報告⑥:「エネルギー基本計画」の在り方】
○高市委員
さて、アベノミクスによって日本は強い経済を取り戻しつつございますけれども、やはりエネルギー問題、かなり心配でございます。
質の高い電力を安く安定的に供給する、これができなければ、日本の企業立地の優位性というものは失われてしまいますから、雇用も暮らしも守れませんし、また医療や介護の現場において安心も確保できませんから、命も守れない可能性がございます。
去る1月28日の衆議院本会議で、民主党の海江田代表が、「エネルギー基本計画がいまだに閣議決定されず、」と安倍総理を批判され、「自民党のエネルギー政策は信用できません。」とまでおっしゃいました。
党の政策責任者としては、「聞き捨てならない発言だ」、このように考えましたので、事実関係や安倍内閣の取り組みについて伺ってまいります。
経済産業大臣に伺います。
現在、安倍内閣が見直し作業を進めております『エネルギー基本計画』ですけれども、見直し対象となっている計画は何なのか。
つまり、現時点で効力を有している『エネルギー基本計画』というのは、いつ、どの内閣において閣議決定されたものでございますか。
○茂木国務大臣
我々が今見直しの対象としております現行の『エネルギー基本計画』、第3次の『エネルギー基本計画』になるわけでありますが、民主党政権、菅内閣におきまして、2010年の6月18日に閣議決定されたものであります。
○高市委員
その菅内閣で閣議決定された『第3次エネルギー基本計画』の中で、原子力発電の位置づけはどうなっているでしょうか。
○茂木国務大臣
客観的に申し上げます。
民主党政権下で策定をされました『第3次エネルギー基本計画』においては、原子力について、供給安定性、環境適合性、経済効率性を同時に満たす基幹エネルギーとして位置づけており、2020年までに9基、2030年までに少なくとも14基の原子力発電の新増設を目指すことといたしております。
また、当該基本計画における原子力政策に基づき、エネルギーの長期の需給見通しでは、電源構成に占める原子力の比率、これを2030年において50%超としております。
○高市委員
平成23年に発生しました福島原発事故を受けまして、菅内閣による2030年までに14基原発をふやすというような決定については、ちょっと難しいことになったかと思うのです。
その後、民主党政権では、平成23年8月と平成24年9月の2回にわたって、エネルギー政策に関係する閣議決定を行っております。
それぞれの内容はどのようなものでございましたか。
○茂木国務大臣
御指摘のように、2回の閣議決定を行っております。
平成23年3月の東日本大震災以降のことでありますが、民主党政権では、平成23年8月に、現行の『エネルギー基本計画』を白紙から見直すことを閣議決定し、平成24年9月には、『革新的エネルギー・環境戦略』を踏まえてエネルギー政策を遂行することを閣議決定したと承知をいたしております。
より具体的には、と申し上げても、内容が具体的でないのは私にはどうにもならないわけでありますけれども、平成23年の8月15日の閣議決定では、「現行のエネルギー基本計画を白紙から見直し、新たなベストミックスの実現に向け、原発依存度低減のシナリオの作成や原子力政策の徹底検証を行う」などとしており、また、平成24年9月19日の閣議決定では、「『革新的エネルギー・環境戦略』を踏まえて、関係自治体や国際社会等と責任ある議論を行い、国民の理解を得つつ、柔軟性を持って不断の検証と見直しを行いながら遂行する。」とする一方、原発ゼロなどの具体的な表現はこの閣議決定の中には盛り込んでいない、このように承知をいたしております。
○高市委員
ということは、民主党政権は、平成23年8月に、『第三次エネルギー基本計画』を見直す決意だけは閣議決定したものの、結局、見直さないままに終わって、現時点でも、原発の新増設を目指すという菅内閣の基本計画が、内閣法第4条に基づく唯一有効な計画だということになってしまいますね。
経済産業大臣にさらに伺いますが、この平成24年9月の野田内閣による閣議決定、「『革新的エネルギー・環境戦略』を踏まえてエネルギー政策を遂行する」という内容だということなんですが、この『革新的エネルギー・環境戦略』における原子力発電の位置づけというのはどうなっていたのか。
それから、この『革新的エネルギー・環境戦略』そのものは閣議決定されたのかどうか、お伺いします。
○茂木国務大臣
私がつくったものではないので答えにくい部分もあるんですけれども、『革新的エネルギー・環境戦略』において、原子力発電については、安全性が確認された原発は重要電源として活用する、このようにされております。
その一方で、これに矛盾するかどうかは別にいたしまして、3つの項目がございます。
40年運転制限を厳格に適用する、2つ目が、原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ再稼働をする、3つ目が、原発の新設、増設は行わないとの原則を定め、2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入するとされております。
また、この『革新的エネルギー・環境戦略』そのものはエネルギー・環境会議の決定でありまして、平成24年9月の閣議決定においては、「『革新的エネルギー・環境戦略』を踏まえて、」こういう表現は盛り込まれておりますが、今御説明申し上げた内容を中心といたします、20ページにわたります『革新的エネルギー・環境戦略』そのものは閣議決定されていない、このように理解をいたしております。
○高市委員
つい先日なのですけれども、民主党所属の議員の方がテレビに出演されて、「原発ゼロという方針を閣議決定した」、こう主張しておられたので念のために確認したのですけれども、閣議決定はされていないということでございます。
また、「安全性が確保された原発は重要電源として活用する」ということが、一昨年の9月の時点、つまり前回の衆議院選挙直前の民主党の方針だったということもよく理解できました。
ところで、経済産業大臣、続けて恐縮ですけれども、大間原発、島根3号原発、東京電力東通1号原発の3基、これは民主党政権下でも設置許可が存続していたはずなのですけれども、これら3基というのは、原発の新設、増設には当たらないということで容認されていたということになりましょうか。
○茂木国務大臣
当時の枝野大臣の記者会見の内容を拝見いたしましても、容認をされておりました。
○高市委員
しかし、その3基というのは、完成したら新品ですから、その後、少なくとも40年は稼働できるということになります。
ですから、「2030年代に原発ゼロ」という野田内閣の方針とは、何か整合性がないように感じてしまいます。
続けて伺うのですけれども、仮に民主党政権が、閣議決定はしていないけれども『革新的エネルギー・環境戦略』で示した「原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ再稼働とする」、「40年運転制限制を厳格に適用する」、「原発の新設、増設は行わない」、こういったことを原則とした場合に、2030年の年初の時点で何基の原発が稼働し得ることになるのか。
それから、2030年代の最後の年である2039年の年末の時点、今から25年後ですけれども、この時点ではどうなるのか。計算できたらお答えください。
○茂木国務大臣
若干の仮定が必要ですが、仮に、大間、そして島根3号、東電東通1号の3基の建設が完了し、また、原子力規制委員会によって全ての原発の安全性が確認された、このように仮定をされますと、2030年年初においては、運転開始から40年未満の発電所が合計23基稼働していることになります。
また、2039年年末の時点では、運転開始から40年未満の発電所が合計8基稼働している、このように考えられます。
恐らく、さらにお聞きになりたいのは、原子力規制委員会の独立性、こういったものを考えた場合に、民主党が決定した『革新的エネルギー・環境戦略』の原則で、2030年代に原発稼働ゼロとなるかということでありますけれども、申し上げた数字のように、原子力規制委員会は独立の存在でありまして、そして、原則にそれで照らした場合には、現実に23基、8基が稼働しているということを考えると、原発ゼロにならない可能性というのは十分残る、こういう計算になると思います。
○高市委員
それは当然のことで、民主党政権時代に、民主党、自民党、公明党3党で協力しまして、新しい法律をつくりました。
「原子力規制委員会設置法」というもの、そして「原子炉規制法」も改正をいたしましたから、法のたてつけとしては、総理が原発を動かすと言っても動かないし、動かすなと言っても、これは独立した規制委員会が安全を判断する、そしてまた、地元自治体のお考えというものもございますから、これはもう法的にはそういう整理になっているわけです。
仮に、「全ての原発をこのまま全部廃炉にして、絶対に再稼動させない」というのだったら、何も民主党政権時代にその2つの法律をつくる必要もなかったし、それから、世界最高水準の「新規制基準」なるものを策定する必要すらなかったはずであります。
それから、原子力発電事業者に莫大な費用を使わせて、新規制基準に適合するための工事をしていただく必要もなかったわけです。
そもそも民主党も、「今すぐに原発ゼロ」、こう主張しておられるわけではない、これは承知をいたしております。
だから、民主党のエネルギー政策というのは、閣議決定したものと閣議決定していなかったもの、これが混同されて発信しており、どうもわかりにくいものでございました。
また、最長25年後の2030年代に原発をゼロにするにしても、そのために必要な省エネ目標、再エネ目標、こういったことについても不明でございました。
総理にこれは伺います。
安倍総理は、前政権のエネルギー政策の方針をゼロベースで見直して、今度は、責任ある内容をしっかり閣議決定していただきたいと考えるのですが、いかがでしょうか。
○安倍内閣総理大臣
『エネルギー基本計画』の策定に当たっては、これはエネルギーですから、国民生活、そして経済活動を支える、責任あるエネルギー政策を構築していくという大きな責任があるわけでありまして、その意味におきましては、しっかりと整合性がとれて、わかりやすいものをつくっていく必要があるんだろう、こう思います。
今後のエネルギー政策については、従来の基本的視点、安定供給、そして効率性、環境、安全性に国際的視点と経済成長の視点を加えて政策を遂行していくべきであると考えています。
経済成長の観点からは、特に電力システム改革などの制度改革や再生可能エネルギー、そして省エネルギーの推進などによる新たな産業の創出、市場の創造、そして高効率火力発電等のインフラ輸出などによるエネルギー産業の国際展開の強化が重要であると考えています。
その上で、『エネルギー基本計画』の策定に当たっては、こうした方針を踏まえて、現実を見据え、責任を持って実現可能かつバランスのとれたものを取りまとめていく考えです。
将来のエネルギーミックスに関しては、新たな『エネルギー基本計画』を踏まえ、再生可能エネルギーの導入状況、原発再稼働の状況などを見きわめ、できるだけ早くエネルギーのベストミックスの目標を設定していく考えであります。
○高市委員
相当難しい作業だと率直に思います。
民主党の方でなかなか新しい基本計画をおつくりになれなかった、それもやはり相当な難しさを知っておられたからだと理解いたします。
「エネルギー政策基本法」というのがございますけれども、この法律に基づきましたら、この『第4次エネルギー基本計画』の作業というのは、昨年12月に公表されました総合資源エネルギー調査会の意見書というものを参考にして、関係閣僚の意見も聞かれた上で、経済産業大臣が案を作成されるというものだと思っております。
短期的な状況を見てみますと、今後、仮に、福島県以外の原発、福島県に設置されているもの以外の原発44基の全てが安全性を確認されて再稼働したとしても、総発電電力量に占める比率は28.2%なんですね。
でも、このうち、運転開始から37年以上経過したものが8基ございます。
これらを再稼働させることによる採算の見通しというのはかなり厳しいのかもしれないなと感じるので、この8基分の比率3.3%を引きますと、原子力発電で賄えそうな電力量の比率というのは24.9%なんですね。
そうしますと、安倍内閣が案を作成中であります『第4次エネルギー基本計画』には、原子力発電以外で確保しなければならない約75%の電力量をいかなる方法で生み出すのか、ここがしっかりと示されるものにならなければいけないと思います。難しい作業であるのは承知をいたしております。
2012年度の発電電力量のうち、水力発電を除きますと、太陽光や、風力や、地熱や、バイオマスなど、新エネルギーと呼ばれるものの比率はいまだ1.6%でございます。
これから3年間、集中的に新エネルギーを拡大していくんだ、これは自民党の公約でもあり安倍内閣の方針でもありますけれども、そういうこととともに、例えば水力発電ダムのリプレース、これをしっかり進めたり、それから省エネ技術の革新、これらに本気で取り組んでいかなければ、必要な電力量の確保というのはとても無理だと思います。
しかしながら、反対に、こういった取り組みをしっかり進めるということは、成長戦略にも資することだと思います。先ほど総理がおっしゃってくださいましたが、成長に資する対策が盛り込まれたベストミックスの絵姿を示せるものに、この『第4次エネルギー基本計画』の段階でできるのかどうか。
もしくは、これから小売の自由化というものが進んでまいりますから、消費者の選択によって、どの発電源が選択されるかということもありますので、むしろ、完璧なベストミックスの姿というのは次の『第5次エネルギー基本計画』、そのときも安倍内閣がつくるぞという決意がおありかもしれませんけれども、どういった時点でそのベストミックスの絵姿が示されるのかを伺います。
○茂木国務大臣
確かに、高市政調会長がおっしゃるように、この『エネルギー基本計画』、現実的かつバランスのとれた計画をつくっていくというのは相当難しい作業でありますし、同時に、国民生活、経済にかかわる極めて重要な問題でありますから、与党の御意見も伺いながら丁寧なプロセスを踏んで決定をしていきたい、そんなふうに思っております。
そして、原発についてもお話がありました。我々としては、原発に対する依存率を減らしていく、こういう基本的な考え方でありますが、原発でいいますと、例えば、政調会長がおっしゃるように、仮に24基動いたにしましても、普通の稼働率は76%でありますから20%、こういうことにもなってくるわけでありまして、今回の新しい『エネルギー基本計画』におきましては、それぞれのエネルギー源ごとの強みであったりとか弱み、そして位置づけというのをはっきりさせていこう、そこの中で特に省エネ、再生可能エネルギーの最大限の導入、こういったものはしっかりと書き込みたいと思っております。
さらには、技術開発の面、火力でも、石炭火力等々、日本の技術は世界最高であります。
こういった日本の技術をそういった世界で磨いていくということも極めて重要だと考えておりまして、新たな『エネルギー基本計画』におきましては、先ほど総理の方からもありましたように、あらゆる意味で、安全性、安定供給、コスト、環境負荷、すぐれたエネルギー源というのは残念ながらないということになってまいりますと、全体として、現実的かつバランスがとれ、そして、それぞれのエネルギーの強みが生き、全体としては弱みが補完される、こういう電源構成にしていきたいと考えております。
○高市委員
与党プロセスを丁寧に踏まれるということをおっしゃっていただきました。
与党プロセスの壁、かなり高いと思います。今、党政調会の資源・エネルギー戦略調査会長にも鞭を入れながら、相当きっちりと、再生可能エネルギー、この強化を図っていく具体的な策について厚みをつくってほしいというお願いをいたしております。
自民党にしても民主党にしても一緒です。原子力発電、これの依存度を下げていくという方向性は一致をいたしております。
どっちにしても、再生可能エネルギーの割合がふえていくということになりますと、自然に依存度は下がっていきます。
しかしながら、それが本当にできるのかどうか。相当な高い壁も、課題もあるかと思いますので、しっかりと政府の方でも御検討を続けていただきたいと思っております。
☆以下、予算委員会質疑報告⑦に続く。