「美しく強い日本」へ④:親の義務
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先日もまた、捨てられた乳児が遺体で発見されるという痛ましい事件が発生しました。
多くのご先祖様が繋いで下さった大切な生命が、限りなき可能性に満ちた子供の未来が、無責任な親の手で断ち切られたことに、強い怒りと悲しみを覚えました。
しかしながら、そのような事件を防ぐ為に…という趣旨で設置されているいわゆる「赤ちゃんポスト」についても、未だに私は様々な問題への懸念を払拭できずにいます。
平成19年5月、「熊本市の慈恵病院の『こうのとりのゆりかご』(赤ちゃんポスト)に、運用初日に男児が預けられていたことがわかった」との報道がなされました。
当時、安倍内閣の閣僚だった私は、記者から感想を求められ、この様なシステムには賛成できない旨の考え方を申し上げました。
私の発言に対しては、「未成年者が望まぬ妊娠をした場合に、赤ちゃんポストは必要」「赤ちゃんポストが無ければ、子供を殺す親が増える」「全国各地に設置するべきだ」といった批判が多く寄せられました。
しかし、「匿名で我が子を捨てることを容易にする環境を整える」ことが正しいとは、どうしても考えられませんでした。
それは、子供を育てるという親の義務を放棄することを世の中全体で容認するに等しく、永久に子供の出自が不明になることにも問題があります。
何より、赤ちゃんポストの仕組みや運用によっては、子供の生命に関わる重大な事態を招きかねない可能性があります。
慈恵病院では、外から赤ちゃんを保育器に入れるとナース・ステーションのブザーが鳴り、助産師や医師が駆け付けるということで、万全の対応に留意しておられるとのことでした。
しかし、仮に全国各地に同様の設備を作った場合には、機器の故障でブザーが鳴らずに赤ちゃんが長時間放置される事故が起こる可能性は否定できません。
不幸な事態が起こった時に、我が子を「赤ちゃんポスト」に入れた親の行為は、「児童虐待防止法」や「刑法(保護責任者遺棄罪)」違反に問われるはずです。
民法でも、「親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」と規定しています。
「児童福祉法」は「保護者は、経済的理由等により、児童をそのもとにおいて養育しがたいときは、市町村、都道府県の設置する福祉事務所、児童相談所、児童福祉司又は児童委員に相談しなければならない」と規定しています。
どうしても親が養育できない状況の場合には、児童相談所等への相談によって、乳児院で養育する、里親を探すなどの対応も考えられます。
未成年の方であっても勇気を出して足を運んで下さい。子供を捨てることは犯罪です。