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子供を守る力①

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 悪質ないじめや子供の自殺という現実に直面する度に、立法府の一員として、ある種の限界を感じ続けてきました。
 

 懸命に法律を整備しても、現場で適切な運用が為されない場合には、子供を守り抜くことはできません。
 

 また、最も重要な「家庭教育」についても、「親の教育権に口出しするな」と反発する声が大きく、政治による介入には限界があります。
 

 家庭、地域社会、学校、行政、政治…それぞれに責任を負いつつも、全ての国民が心を合わせて真っ当な道徳心と社会秩序を取戻していかなければ、問題は解決しません。
 

 平成13年に自民党政権が「学校教育法」等の改正を断行した折、私は衆議院文部科学委員長でした。
 

 当時も、一部の児童生徒による陰湿ないじめや授業妨害による学校現場の混乱が取り沙汰されていました。
 

 この時の法改正によって「他の児童生徒に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為」や「授業その他の教育活動の実施を妨げる行為」等を繰り返し行う児童生徒の出席停止や指導力に欠ける教員の処分も可能になりました。
 

 出席停止期間中の児童生徒に対する学習支援措置も盛り込まれましたが、問題のある児童生徒や指導力不足の教員の「人権」を声高に主張する日教組出身の国会議員の猛反発によって、審議は難航しました。
 

 しかし、他の児童生徒にも良好な環境で教育を受ける権利があります。何とか学校教育の秩序を取り戻すべく、小泉内閣と自民党では精一杯の努力を続けて法改正を成し遂げました。
 

 その後、平成18年晩秋にも、全国各地で子供の自殺が相次ぐ悲劇が発生しました。
 

 当時の安倍内閣(平成18年~平成19年)では、私は青少年施策や自殺対策等に関して政府内の総合調整を行う担当大臣でもあり、「自殺総合対策大綱」の策定に着手するとともに、文部科学大臣と連携して、先ずは現行法の毅然たる執行を徹底することに心血を注ぎました。
 

 平成19年2月、文部科学省初等中等教育局長から全都道府県の教育委員会教育長や知事に対して、「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」と題する文書を発出しました。
 

 「いじめられる子どもを最後まで守り通すことは、児童生徒の生命・身体の安全を預かる学校としては当然の責務です。同時に、いじめる子どもに対しては、毅然とした対応と粘り強い指導により、いじめは絶対に許されない行為であること、卑怯で恥ずべき行為であることを認識させる必要があります」
 

 「学校の秩序を破壊し、他の児童生徒の学習を妨げる暴力行為に対しては、児童生徒が安心して学べる環境を確保するため、適切な措置を講じることが必要です」
 

 「このため、教育委員会及び学校は、問題行動が実際に起こったときには、十分な教育的配慮のもと、現行法制度下において採り得る措置である出席停止や懲戒等の措置も含め、毅然とした対応をとり、教育現場を安心できるものとしていただきたいと考えます」
 

 続けて、具体的な取組みについても、様々な記載がありました。
 

 「学校においては、日常的な指導の中で、児童生徒一人一人を把握し、性向等についての理解を深め、教師と児童生徒との信頼関係を築き、すべての教育活動を通じてきめ細かな指導を行う。また、全教職員が一体となって、児童生徒の様々な悩みを受け止め、積極的に教育相談やカウンセリングを行う」
 

 「児童生徒の規範意識の醸成のため、各学校は、いじめや暴力行為等に関するきまりや対応の基準を明確化したものを保護者や地域住民等に公表し、理解と協力を得るよう努め、全教職員がこれに基づき一致協力し、一貫した指導を粘り強く行う」
 

 「問題行動の中でも、特に校内での傷害事件をはじめ、犯罪行為の可能性がある場合には、学校だけで抱え込むことなく、直ちに警察に通報し、その協力を得て対応する」
 

 「出席停止は、懲戒行為ではなく、学校の秩序を維持し、他の児童生徒の教育を受ける権利を保障するために採られる措置であり、各市町村教育委員会及び学校は、このような制度の趣旨を十分理解し、日頃から規範意識を育む指導やきめ細かな教育相談等を粘り強く行う」
 

 「学校がこのような指導を継続してもなお改善が見られず、いじめや暴力行為など問題行動を繰り返す児童生徒に対し、正常な教育環境を回復するため必要と認める場合には、市町村教育委員会は、出席停止制度の措置を採ることをためらわずに検討する」
 

 「地域では、警察、児童相談所、保護司、民生・児童委員等の関係機関の協力を得たサポートチームを組織することも有効である」
 

 「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、児童生徒に懲戒を加えることができ、懲戒を通じて児童生徒の自己教育力や規範意識の育成を期待することができる。しかし、一時の感情に支配されて、安易な判断のもとで懲戒が行われることがないように留意し、家庭との十分な連携を通じて、日頃から教員等、児童生徒、保護者間での信頼関係を築いておくことが大切である」(体罰に該当しない「懲戒」の例も記載有り)
 

 「さらに、近年児童生徒の間に急速に普及している携帯電話を児童生徒が学校に持ち込み、授業中にメール等を行い、学校の教育活動全体に悪影響を及ぼすような場合、保護者等と連携を図り、一時的にこれを預かり置くことは、教育上必要な措置として差し支えない」
 

 上記は局長発出文書の一部を抜粋したものですが、この内容が全都道府県の全ての教員、保護者、警察官に十分に周知され、取組みが実行されていたのかどうかの検証が必要です。
 

 大津の事件を契機に次々に「いじめ」や「暴行事件」が報道されていますが、その内容を見る限り、安倍内閣が要請した取組みは現場で徹底されていない現状だと思わざるを得ません。
 

 法整備だけでは解決できない難題ではありますが、自らの力不足への反省を痛感しながら、立法府に於いて出来る限りの対策を再考し、努力を続けてまいります。
 

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