野田内閣への疑問③:財政規律に関する考え方
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野田佳彦総理大臣は、今年9月号の文芸春秋に『わが政権構想』を発表し、次のように書いておられました。
「最大の危機は財政です」
「日本の財政が危機的状況に陥った1つの原因は、政治家も含め国民全員が、毎年30~40兆円の借金に慣れてしまったことにあると考えています」
一方で、今年2月1日号の『国際金融』という雑誌では、菅内閣の財務大臣として自らが中心になって編成した平成23年度予算の内容を紹介し、次のように自画自賛しておられました。
「新規国債発行額を前年度の水準である44兆円にとどめるなど、財政規律も踏まえた予算とすることが出来ました」
野田総理にとっての「財政規律も踏まえた予算」というのは、「2年連続で、税収見込みを超える規模の国債を発行すること」だったのでしょうか?
東日本大震災の発生は理由になりません。平成23年度の「当初予算」は、平成22年12月に閣議決定されたものですから。
税収見込み40・9兆円に対して総額は92・4兆円。国債を44・3兆円発行し、特別会計の取り崩しが7・2兆円でした。
月収41万円のご家庭が、92万円の生活をし、預金7万円を取り崩し、44万円の借金をしたのと同じです。
これまでに成立した補正予算も合わせると、平成23年度予算は総額106兆3987億円に達します。
現在の財政状況については、長年政権を担当してきた自民党にも大いに責任がありますが、それでも、小泉内閣は、「国債発行額を30兆円以下に押さえること」を目標に掲げ、それを実行しました。
安倍内閣が編成した平成19年度当初予算は、税収見込み53・5兆円に対して、総額79兆円。国債発行額は25・4兆円でした。
財政健全化への努力を続けていた最中の平成20年9月にリーマンショックが発生。
麻生内閣が編成した平成21年度当初予算は、税収見込み46・1兆円に対して、総額88・5兆円。国債発行は33兆円で、特別会計の利用は4兆円でした。
その後、緊急経済対策のために補正予算が組まれましたが、この時、野田総理は、ご著書『民主の敵』(平成21年7月)で、麻生内閣の補正予算と当時の与謝野大臣を痛烈に批判しました。
「欠陥は財源です。埋蔵金と赤字国債でまかなおうとしています」
「いつの間にか国民の大事な資産を食いつぶす方針に転換したようです」
「働きアリの国民が納めた血税と子どもたちのポケットに手をつっこんで得たお金」
しかし、民主党への政権交代後は、「余分なバラマキ政策のための固定経費」を確保しなければならなくなっており、当初予算の段階から「税収見込みより国債発行額が多い状態」が続いています。
それだけでは足りず、特別会計の取り崩しも常態化しています。
更に、野田総理は、今年10月28日の所信表明演説で、「日本郵政やJTの株式など、売却できる政府資産は売却し、あらん限りの税外収入をかき集めます」と述べられました。
冗談ではありません。民主党政権は、1度使ってしまったら無くなる国民の資産を食い潰してしまうつもりなのでしょうか。
麻生内閣に対して「国民の大事な資産を食いつぶす方針」「埋蔵金と赤字国債でまかなおうとしています」と批判しておられた野田総理が方針転換をされた理由は何なのか?
野田総理が考える「財政規律」というのは、如何なる定義なのか?
疑問は尽きません。