電力供給力増強策と法的課題
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ここ数日は、暑いですね。夏は目前です。
心配しました通り、浜岡原子力発電所停止により、「定期検査済みの原子力発電所の再稼動」まで困難な空気が広がり、東北・関東・中部地方のみならず、九州・中国地方でも需給逼迫が危ぶまれる状況になりました。
既に4月22日に海江田経済産業大臣に手渡した自民党エネルギー政策合同会議からの提言書にも書き込んでおきましたが、菅内閣が速やかに検討するべきだと考える「電力供給力増強策」についても、一部を記します。
第1に、電力各社による供給力最大化に向けた努力への支援です。
被災した火力発電所の復旧、定期検査中や長期計画停止中だった火力発電所の運転再開、ガスタービン設備の増設、停止中の一般水力発電所の稼動、揚水発電の活用を急がなければなりません。
菅内閣は、各社の火力発電用燃料の確保について、税制による支援や備蓄支援を行うべきです。硫黄分規制の一時緩和も必要かもしれません。
また、水力発電を拡大することを検討する場合には、「河川法」に関する検討が必要になります。
水力発電に係る取水を行う際は、河川管理者の許可を得なければなりません。河川管理者が取水許可を与える際には、必要な条件を付する(発電所ごとに水利使用規則を作成する)ことができ、この水利使用規則には、「関係河川使用者のすべての同意を得た最大取水量(1 秒当たり)」が記載されています。
電力のピーク需要に対応するためには、一時的に最大取水量の制限を緩和することを検討するべきです。
国交省は通知等で取水制限を緩和していますが、対応期間の延長、自家用水力発電所や一般電気事業者以外に供給する水力発電所への拡大が必要です。
第2に、現時点での太陽光・風力・地熱・バイオマス・小水力発電等の早期導入可能箇所には、積極的な導入補助を行うことです。
第3に、自家発電設備の設置・利用に対する支援の一層の拡充です。
東京電力管内の既設自家発電設備には1640万KWの電力供給力がありますが、新設を促進すると同時に、休止中の設備を稼動させることが必要です。
発電コストと電力会社からの買電コストのギャップを埋めるとともに、モチベーションを与える支援策が求められます。
自家発電設備の導入や利用を促進するためには、法的に検討しなければならない課題も幾つかあります。
先ずは、「大気汚染防止法」に基づく自治体の排出ガス規制の一時的な緩和が必要です。
同法第4条により、自治体は国が定めた基準よりも厳しい許容限度を定めることができることから、地域によっては使用できない自家発電設備が存在しています。
自家発電機、コジェネレーション等の稼働を向上させることにより発生する排出CO2については、排出量に計上しない等の特例を講ずるべきでしょう。
次に、「消防法」です。
自家発電設備を最大限利用するためには多くの燃料を使用する必要がありますが、指定数量以上の燃料を貯蔵する際は、事前に許可を得なければならず、手続き等に時間がかかることから燃料の手配が困難となっています。
自家発電設備の利用については、燃料の指定数量を一時的に緩和することや、事後的な届け出も一時的に取り扱うことを検討するべきです。
また、自家発電設備の設置期間短縮を図るために、確認等の期間短縮と緩和を検討するべきです。
更に、「電気事業法」と「建築基準法」についても、自家発電設備の設置期間短縮を図るために、届出確認期間の短縮を検討するべきです。
加えて、「工場立地法」についても、緑地帯等に自家発電機を設置できるよう、緑地率の緩和を検討するべきです。
「建築基準法」や「工場立地法」の改善は、太陽光・風力発電設備の導入促進のためにも必要です。
以上の、「法的検討課題」につきましては、自民党エネルギー政策合同会議からの提言を受けて、今月まとまった政府の需給対策にも一部を反映させていただきましたが、第2次補正予算による予算措置も含め、急いでいただきたいと思います。