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浜岡原発停止がトリガーに。電力需給逼迫の波及

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 5月6日夜、菅直人総理大臣は、中部電力に対して「浜岡原子力発電所の全ての原子炉の運転停止」を要請したことを記者会見で発表しました。
 総理大臣の要請は、同日19時に海江田経済産業大臣を通じて中部電力側に伝えられたそうです。


 6日深夜のニュースを見ながら、「法的根拠のない要請であっても、中部電力から見れば、実質的には総理大臣からの命令のようなものだ。最終的には了承せざるを得ない立場に追い込まれるだろうな」、「これで、電力供給不足への不安は、東京電力・東北電力管内だけの問題ではなくなり、一挙に全国的な問題になる。そして、今夏だけではなくて、長期的な電力需給ギャップとの闘いになるかもしれないぞ」と思いました。


 案の定、翌7日には、東京都内で「浜岡だけではなく、全国の原子力発電所を停止しろ」と要請する1万人規模のデモが行われました。
 

 8日になって、菅総理大臣は慌てて「中部電力以外の電力会社に対しては、運転停止要請をしない」旨を表明し、仙谷由人官房副長官もNHKの番組で「エネルギー政策としては原発を堅持する」と発言しました。


 しかし、9日には中部電力が想像以上に早く浜岡原子力発電所の停止を了承したことを受けて、他の原子力発電所立地県の県民の間にも運転停止を期待する空気がじわじわと広がり始め、知事や市町村長が対応に苦慮しておられるとの話を仄聞しています。


 東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、周辺住民の皆様が着の身着のままで故郷を離れ、生業を失い、筆舌に尽くし難い苦しみを受けておられます。
 その惨状に多くの国民が心を痛め、放射性物資の怖さを実感しておられる状況ですから、当然の成り行きでしょう。


 現在、全国の原子力発電所54基のうち運転中のものは、19基だけです。24基は定期検査等で停止中、11基は東日本大震災により停止中。今年中に定期検査のため12基が停止する見通しです。
 

 仮に既に「定期検査が終了した原子力発電所の再稼動も、許さない」という方向に世論が動いてしまったなら、全国の原子力発電所の8割以上が停止する可能性もあり、日本は深刻な電力供給不足に陥ってしまいます。


 特に心配なのが、関東地方、東北地方、中部地方、近畿地方です。


 東京電力では、震災直後に3100万KWまで低下した電力供給力を、ようやく3900万KW(5月10日現在)まで回復させたところです。
 被災した火力発電所のできる限りの復旧、定期検査中や長期計画停止中だった火力発電所の運転再開、ガスタービンの設置など精一杯の努力を続けることで、7月の電力供給力見通しを5380万KWとしています。
 しかし、昨夏並みの猛暑になった場合の最大電力需要想定は6000万KWだから、供給予備率は▲10・3%。つまり、1割以上の供給不足となります。


 ところが、5月13日に閣議決定した『夏期の電力需給対策』は、「東京電力から東北電力に向けて、最大限の電力融通」を求める内容になっていました。4月21日には、枝野官房長官も、東京電力に融通協力要請を行っています。
 しかも、浜岡原子力発電所を停止によって、東京電力は中部電力からの75万KWの電力融通は受けられなくなってしまいました。


 東京電力は、今夏に向け、供給力積み上げのために「老朽火力発電所の昼夜連続運転」も行うとしていますが、技術的リスクは高いでしょう。
 また、これからも大規模な余震発生による再被災や復旧遅延のリスクは否定できません。

 東北電力は、最大電力需要想定を1480万KW、8月の電力供給力見通しを1370万KWとしており、供給予備率は▲7・4%となります。

 今後の被災地復興を考えると、供給予備率がマイナスであることは深刻ですし、猛暑になれば、東京電力からの融通協力も困難になる可能性があります。


 中部電力は、もともとの「平成23年度電力供給計画」では、最大電力需要想定を2560万KW、電力供給力を2999万KWとしており、供給予備率は17・1%でした。
 ところが、浜岡原子力発電所の停止により、5月9日、7月の電力供給力見通しを2499万KWに修正しました。これで、供給予備率は▲2・4%になってしまいました。

 今後、長期停止中だった武豊火力発電所3号機を起動することと、東京電力への融通を停止することによって、供給力を2615万KWにするとしていますが、それでも供給予備率は2・1%に過ぎません。


 中部電力管内である愛知県、静岡県、三重県、岐阜県、長野県は、工場集積地でもあり、電力需要の約7割は産業用です。
 もしも今夏が猛暑となって家庭の電力需要が増えた場合には、僅か2・1%の供給予備率では不安を禁じ得ません。
 管内企業は、大震災発生直後より東北地方からの部品供給が中断したことによって既に大きなダメージを受けています。計画停電が実施されることになれば、管内企業の存続や雇用に影響が出かねないと心配しています。


 関西電力では、8月の最大電力需要想定を2956万KW、電力供給力を3290万KWとしており、供給予備率は11・3%です。

 5月6日、海江田経済産業大臣は、関西電力に対して中部電力への電力融通協力の要請を行いました。
 しかし、近畿地方でも今夏の電力供給について十分な余力があるとは考えにくいのです。
 3月の計画停電で工場の稼動停止に追い込まれた東京電力管内の複数の企業は、今夏の電力供給にも不安を感じており、関西電力管内に生産を移す予定だからです。
 また、関西電力が中部電力に電力融通協力をするためには、定期検査で停止中の原子力発電所を再稼動させなければならないのでしょうが、昨今の状況から、立地県の知事が再稼動を了承するかどうかは微妙な状況だと思います。


 つまり、浜岡原子力発電所の停止決定によって、中部地方だけではなく、関東、東北、近畿地方に於ける電力供給にも、連鎖的な影響が及び始めているのです。

 菅内閣は、これまでは「計画停電は、原則行わない」としてきましたが、5月13日に閣議決定した『夏期の電力需給対策』では、微妙に表現が変化しており、「計画停電は、セーフティネットとして位置付ける」、「電力の需給バランスは、今後、夏に向けて、再び悪化する見込みである」と記載されています。

 ところが一方で、菅内閣は、4月中に「電力需要削減目標」を「大口需要家・小口需要家・家庭ともに1律15%」に引き下げ、「25%」を前提に準備をしていた産業界の節電ムードに一気に水を差しました。

 私は、今夏の電力需給については、決して安心できる状況ではないと思っており、万が一にも大停電の憂き目を見ないように、菅内閣にも危機感を持って対応にあたっていただきたいと願います。

 

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