国家公務員制度改革基本法」が目指す政治のリーダーシップ
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国家公務員制度改革基本法案の政府原案には、「政務専門官制度」と「政官接触制限」が盛り込まれていました。
各府省に「政務専門官」を置き、政務専門官が大臣の指示を受けて政治家と接触することとし、他の職員の政治家への接触を制限する内容でした。
民主党との修正協議で、「政務専門官設置」と「政官接触制限」の規定は削除されてしまいました。
渡辺大臣によると、政務専門官制度の主目的は、「官僚主導体制の転換」、つまり「政治のリーダーシップ確保」でした。
渡辺大臣は、「国家公務員が『大臣の意向はさておき』と言ってロビイング活動をすることを規制する」と答弁されました。
確かに、大臣の意向と各府省の事務方の利益が一致しない時に、事務方が国会議員の事務所を訪問して、大臣が実現を目指す政策に反対してもらえるように根回しをする場面に、度々遭遇しました。
前に書きましたように、政治を「国家経営」と考えますと、「●●省株式会社」の社長である大臣の経営方針と異なる内容を、社員が顧客や株主に吹聴して廻ることは、会社や商品の信用を落とします。
社の方針が決定するまでは、社内で喧々諤々の議論をしてもいいのですが、一旦、社長が方針を決断した後は、顧客や株主に対して、統一された姿を見せることが肝要です。
特に、国家経営の株主である国民に対して、また、国民の代表である国会議員に対して、府省からの説明がバラバラであることは許されません。
また、各府省にとって都合の悪い議員立法の内容を変更させたりつぶしたりするために、国家公務員が国会議員を訪問して根回しをすることについても、立法府の一員として不快感を覚えます。
私自身が昨秋以来7ヶ月間も議員立法作業に没頭してきた「インターネット上の有害情報から青少年を守る為の法律案」につきましても、インターネット業界振興を重視する官庁によるロビイング活動が活発に行われたと漏れ聞いており、結局は、インターネット業界が大喜びする内容(全面的に業界の自主性に任せる内容)で与野党合意となる見通しだそうです。
議員立法作業中に、執行官庁に実務上の問題の有無について議員側が意見を求めることはありますが、法案が必要かそうでないかの判断は政治家が行うものであって、もしも不都合があるなら、大臣の指示を受けた副大臣や政務官が、政治家同士の話をしにくるべきだと思うのです。
さて、国家公務員制度改革基本法案からは、民主党との協議によって、渡辺大臣が重視しておられた「官僚によるロビイング活動規制」に資する部分は削除されてしまいましたが、民主党の強い意向で、議員側から官庁への口利きや圧力を防ぐ為に、「政官接触の情報公開」が盛り込まれました。
私も、「規律ある政官接触」は重要だと思います。
現在でも、国会議員が各府省から政策説明を受ける折の会話や、各府省への陳情や問い合わせ内容は記録され、情報公開の対象となっています。
ところが、国会議員が官庁側から政策説明を受ける際の会話メモは、官僚側が一方的にとるもので、国会議員側は何を書かれているのかを知りません。官庁の記録担当者の文章力や理解力によって、議員が意図しない内容になっている可能性があります。
国会議員から官庁への問い合わせ(予算要望・制度運用等)についても同様で、電話を受けた官僚がパソコンに記録しています。
私が閣僚在任中にも、当時の現職閣僚だった同僚議員の事務所から、私の所掌事務の認可案件についての口利きがあったのではないかということが報じられ、野党から批判の声も上がり、大臣として役所内に残された過去の陳情記録を調べたことがあります。
結果、過去数年間にわたり、当該認可事項については、与党議員からも野党議員からも多くの問い合わせの記録が残っていました。
担当職員に面談して確認したところ、いずれも「認可事務に要する期間」の問い合わせに過ぎず、倫理的問題は無かったのですが、その課では、どんな電話でも「●●議員の事務所より『よろしく電話』あり」と記録するのが習慣になっていたと聞いて、愕然としました。
あのまま情報公開をされたら、議員側が認可事務を捻じ曲げようとしたようなイメージ
になってしまいます。
職員には、「今後は、『よろしく電話』という表現は止めて、正確に会話内容を記録するように」と指示をしました。
基本法成立後は、更に「政官接触記録の透明化」が進むと思いますが、「当事者である国会議員と官僚の双方が記録内容を確認した上で保存されるルール」を作っていただきたいと思っています。
基本法案を審議した内閣委員会の委員の間でも、官僚による一方的な記録と情報公開という現在の手法については、「政治家がリーダーシップを発揮するどころか、官僚に逆らうと、会話記録を捏造されてハメられてしまうのではないか」という不安の声が上がっていました。
基本法案第5条には、総理を補佐する「国家戦略スタッフ」と、大臣を補佐する「政務スタッフ」の設置が規定されていましたが、これは議院内閣制の下で主権者の代表である政治家がリーダーシップを発揮できる体制を作る上では、大きなメリットのある規定だと思いました。
各府省に「政務専門官」を置き、政務専門官が大臣の指示を受けて政治家と接触することとし、他の職員の政治家への接触を制限する内容でした。
民主党との修正協議で、「政務専門官設置」と「政官接触制限」の規定は削除されてしまいました。
渡辺大臣によると、政務専門官制度の主目的は、「官僚主導体制の転換」、つまり「政治のリーダーシップ確保」でした。
渡辺大臣は、「国家公務員が『大臣の意向はさておき』と言ってロビイング活動をすることを規制する」と答弁されました。
確かに、大臣の意向と各府省の事務方の利益が一致しない時に、事務方が国会議員の事務所を訪問して、大臣が実現を目指す政策に反対してもらえるように根回しをする場面に、度々遭遇しました。
前に書きましたように、政治を「国家経営」と考えますと、「●●省株式会社」の社長である大臣の経営方針と異なる内容を、社員が顧客や株主に吹聴して廻ることは、会社や商品の信用を落とします。
社の方針が決定するまでは、社内で喧々諤々の議論をしてもいいのですが、一旦、社長が方針を決断した後は、顧客や株主に対して、統一された姿を見せることが肝要です。
特に、国家経営の株主である国民に対して、また、国民の代表である国会議員に対して、府省からの説明がバラバラであることは許されません。
また、各府省にとって都合の悪い議員立法の内容を変更させたりつぶしたりするために、国家公務員が国会議員を訪問して根回しをすることについても、立法府の一員として不快感を覚えます。
私自身が昨秋以来7ヶ月間も議員立法作業に没頭してきた「インターネット上の有害情報から青少年を守る為の法律案」につきましても、インターネット業界振興を重視する官庁によるロビイング活動が活発に行われたと漏れ聞いており、結局は、インターネット業界が大喜びする内容(全面的に業界の自主性に任せる内容)で与野党合意となる見通しだそうです。
議員立法作業中に、執行官庁に実務上の問題の有無について議員側が意見を求めることはありますが、法案が必要かそうでないかの判断は政治家が行うものであって、もしも不都合があるなら、大臣の指示を受けた副大臣や政務官が、政治家同士の話をしにくるべきだと思うのです。
さて、国家公務員制度改革基本法案からは、民主党との協議によって、渡辺大臣が重視しておられた「官僚によるロビイング活動規制」に資する部分は削除されてしまいましたが、民主党の強い意向で、議員側から官庁への口利きや圧力を防ぐ為に、「政官接触の情報公開」が盛り込まれました。
私も、「規律ある政官接触」は重要だと思います。
現在でも、国会議員が各府省から政策説明を受ける折の会話や、各府省への陳情や問い合わせ内容は記録され、情報公開の対象となっています。
ところが、国会議員が官庁側から政策説明を受ける際の会話メモは、官僚側が一方的にとるもので、国会議員側は何を書かれているのかを知りません。官庁の記録担当者の文章力や理解力によって、議員が意図しない内容になっている可能性があります。
国会議員から官庁への問い合わせ(予算要望・制度運用等)についても同様で、電話を受けた官僚がパソコンに記録しています。
私が閣僚在任中にも、当時の現職閣僚だった同僚議員の事務所から、私の所掌事務の認可案件についての口利きがあったのではないかということが報じられ、野党から批判の声も上がり、大臣として役所内に残された過去の陳情記録を調べたことがあります。
結果、過去数年間にわたり、当該認可事項については、与党議員からも野党議員からも多くの問い合わせの記録が残っていました。
担当職員に面談して確認したところ、いずれも「認可事務に要する期間」の問い合わせに過ぎず、倫理的問題は無かったのですが、その課では、どんな電話でも「●●議員の事務所より『よろしく電話』あり」と記録するのが習慣になっていたと聞いて、愕然としました。
あのまま情報公開をされたら、議員側が認可事務を捻じ曲げようとしたようなイメージ
になってしまいます。
職員には、「今後は、『よろしく電話』という表現は止めて、正確に会話内容を記録するように」と指示をしました。
基本法成立後は、更に「政官接触記録の透明化」が進むと思いますが、「当事者である国会議員と官僚の双方が記録内容を確認した上で保存されるルール」を作っていただきたいと思っています。
基本法案を審議した内閣委員会の委員の間でも、官僚による一方的な記録と情報公開という現在の手法については、「政治家がリーダーシップを発揮するどころか、官僚に逆らうと、会話記録を捏造されてハメられてしまうのではないか」という不安の声が上がっていました。
基本法案第5条には、総理を補佐する「国家戦略スタッフ」と、大臣を補佐する「政務スタッフ」の設置が規定されていましたが、これは議院内閣制の下で主権者の代表である政治家がリーダーシップを発揮できる体制を作る上では、大きなメリットのある規定だと思いました。