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予算委員会報告②:尖閣漁船事件

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 今日は、去る11月9日の予算委員会に於いて、「9月7日に尖閣諸島海域で発生した中国漁船事件」に関して私が行った質疑と内閣の答弁について、その概略を紹介し、最後に私の感想を書かせていただきます。


【高市早苗】
 

○9月30日の予算委員会閉会中審査で、民主党の長島委員が「この事件で問われているのは国家の意思だ」「国家の意思を体現できるのは政府」だとおっしゃった。私もその通りだと思った。

 

○今回の事件では、内閣が「国家の意思」をしっかりと体現できなかったことから、中国を増長させ、中国の覇権主義に悩むアジアの国々を落胆させ、国際社会における日本の名誉が損なわれ、法治国家としての秩序まで失われた。残念に思う。
 日本が示すべき「国家の意思」は、「尖閣諸島は日本国固有の領土である。日本の管轄権の範囲内で発生した事件については、毅然と国内法を執行する」ということだったと思う。

○昨日の委員会で、中国に請求するお金の話が出た。
 仙谷官房長官は、9月に「海上保安庁の船の損傷の原状回復を中国に求める」ということを記者会見でおっしゃった。(昨日は)果たして請求したのかどうかという質問が出た。
 馬淵国交大臣は、「まだ損傷については金額も出ていないので、請求の段階ではない」というようにお答えになっていた。
 「みずき」の手すりが折れた、「よなくに」の手すりが折れた、ヘリ甲板下の損傷など、私も、海保の方から損傷の状況は伺っているが、あの時は海上保安庁の船の損傷だけではなかった。

○馬淵大臣に(質問内容を)通告しているので伺う。
 空港で中国のチャーター機に給油をしたが、幾らかかったか。
 石垣空港は、夜間は使えないが、あの時は特例的に夜中も空港を開いた。たくさんの空港職員が残業もされたと思うが、残業代の合計は幾らだったか。
 以上2点について、金額とともに、既に中国側に請求をされたかどうかもお答えいただきたい。


【馬淵国土交通大臣】
 

○まず、石垣空港における給油の問題。チャーター機が石垣空港に到着し、燃料の補給業務を行った。これは、民間の業者が行い、国は直接関与していない。しかしながら、入金があったということの報告を受けている。
 

○時間外に中国政府のチャーター機が石垣空港に参って、空港管理者に超過勤務等が発生するのではないかということだったが、今般の超過勤務も含めて、これは外交ルートにおける便宜供与だ。
 この便宜供与については、今までも、このような形の場合は、空港使用にかかわる超過勤務等については国土交通省、沖縄県が負担をしている。今後も同様の取り扱いをする予定になっている。


【高市早苗】
 

○空港職員の残業代は、便宜供与で、残念ながら日本国民の負担になってしまうということだが、官房長官が言明された海保の船の修理代については、日本国として請求されることを確認させて欲しい。
 総理に(答弁を)お願いする。


【菅内閣総理大臣】
 

○損傷を受けた巡視船の原状回復の取り扱いについては、今後、関係省庁間の協議により適切に対応されるものと承知している。


【高市早苗】

○総理の意思を聞きたい。内閣のトップである菅総理の御意思を聞きたい。メモを読み上げるような答弁をなさるというのは、大変残念だ。
 官房長官が(請求を)すると言われた。するのだったらする、しないのだったらしないということだ。
 官房長官、(記者会見から)戻ってこられたので、官房長官に伺う。


【仙谷官房長官】
 

○一般に、中国側に請求する、せよというふうなことを皆さんはおっしゃるわけだが、厳密に言うと、これは民間の船なので、民間の漁船の持ち主とか漁船の船長に請求をするということに法律上はなることをまず御承知おきいただきたい。


【高市早苗】

○では、民間の漁船の船長に御請求いただくということで伺っておく。


【仙谷官房長官】
 

○どういう手続になるか、検討を続けたい。


【高市早苗】
 

○官房長官のあの記者会見の記録も私は読ませていただいた。報道も読ませていただいた。9月に官房長官御自身が、中国側に請求する、原状回復を求めるとおっしゃったので、それで伺っていたわけだが、「船長に対して請求をしていただける」ということだ。
 

○船長を国外に出してしまったので、色々と困っている。
 国外に被疑者が出たら、3年間の公訴時効も停止する。だから、いつでも起訴できるが、締め切りのない事というのは、国民が忘れるまで未済のまま放置をされるのではないかという不安もある。
 仮に起訴できたとしても、第一審の公判に被疑者が出てこないと、裁判も開けない。
 海上保安庁の船の損傷をカバーする中国人船長を日本にお呼びになり、お金もしっかり受け取って、裁判を受けてもらえるように、御対応をお願いする。
 

○昨日の予算委員会では、私が提出した質問主意書への答弁内容について、石破政調会長が随分詰めて下さった。
 私はまだ納得していないので、少し聞かせていただく。
 

○那覇地検の記者会見は、大変ショックだった。「今後の日中関係」などということを船長釈放の理由にしていたからだ。
 釈放されて中国に帰国した船長は、またあの海域で漁業をすると言っており、再犯の可能性がある。「日中関係に配慮して」ということになると、仮にあの船長がもう一度同じ海域で同じ犯罪行為をしたとしても、無罪放免、下手したら逮捕もできないんじゃないかという不安も感じた。それで、あの質問主意書を出した。
 

○私が10月5日の質問主意書で質したのは、「そもそも検察官には、今後の日中関係などという外交に関わる政治的判断を行う権限や責任があるのか」ということだった。
 10月19日に閣議決定されて戻ってきた答弁書には、刑事訴訟法の「起訴便宜主義」を引きながら、「検察官は、法と証拠に基づき、被疑者の身柄拘束を含む刑事事件の処分を判断するに当たって、当該処分をし、又はしないことによる国際関係への影響等についても、犯罪後の情況として考慮することができる」とあった。
 

○この答弁には驚いた。これは閣議決定された答弁書だが、菅内閣総理大臣のお名前で私のところに返ってきたので総理に伺う。
 

○私が一番驚いたのは、この答弁書が、検察官には国際関係への影響についても判断する権限があるということを明記したことだ。
 日本国憲法第73条は、外交問題の処理を内閣の仕事としている。
 総理が代表を務めておられる民主党の長島委員もこの委員会で、「外交問題というのは、法執行機関である検察の手に負えるような問題ではない」、「外交には国民の生命財産がかかっている」、「検察ができることはせいぜい国内法秩序を守ること」とおっしゃった。
 

○この今回の答弁書によって、これからの日本国では、「検察官が、国際関係への影響を判断しながら、法執行の有無ということを決定できる」というルールに変わってしまった。そう考えても本当にいいのか。総理に(答弁を)お願いする。


【中井予算委員長】

 最初に法務省西川刑事局長、そして内閣総理大臣が答える。
(高市委員「いや、刑事局長が、自分が総理だと思っていらっしゃるんだったらいいですけれども、総理にお願いしたいと思います」と呼ぶ)


【法務省西川刑事局長】
 

○まず、質問主意書にそのような記載をしたというのは事実だ。法務省で起案をさせていただいているので、私の方からまずお答えを申し上げる。
 まず、釈放の判断に当たってということだが、これについては、法律上何らかの制約が設けられているというものではない。
刑事訴訟法248条は、「起訴、不起訴の判断に当たって考慮すべき諸事情」が記載されている。ただ、これは、「釈放の判断」においても当然考慮することが可能だろうということだ。
 その中には「犯罪後の情況」というのがあり、これには、「社会一般の状況の変化」や「起訴、不起訴等の処分が社会に与える影響」が含まれているものというふうに考えられる。 
 今回は、「日中関係等」もこのような事情として、ほかの事情とあわせて総合的に考慮したというふうに判断をした。


【高市早苗】
 

○つまり、この日本国ではこれから、「検察官が、外交問題を判断して被疑者の取り扱いを決められる」ということになったと?
(発言する者あり)
 「前からそうだった」というやじも飛んでいるが、これまではそういう対応をしてこなかった。
 

○そうなると、色々難しい問題が出てくる。外交問題、外交関係の判断を検察でやるというのは大変難しいことだ。
 これまで、日本国の領海内で漁業をした韓国漁船に対しては、非常に厳しい法執行がなされている。
 今回(中国人船長)は、公務執行妨害ということだから、裁判になって向こうが全面的に悪いということになったとしても、罰則は「3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金」だ。
 でも、韓国漁船に関しては、これよりも罰則が厳しい「外国人漁業規制法」で取り締まっている。
 

○「外国人漁業規制法」は、「本邦の領海内で外国人は漁業をしてはいけない」ということで、違反者には「3年以下の懲役もしくは400万円以下の罰金、もしくはその併科」ということで、「公務執行妨害」よりははるかに重い。
 そしてまた、日本国の領海内で漁をしてはいけないということで、向こうの漁船が日本国の領海に入ってきた点をきっちりと強調している。
 

○平成10年、長崎県沖で漁業をしていた韓国漁船を海上保安官が追っかけ、向こうの船に乗り込もうとしたら、乗組員が乾電池を投げつけ、海上保安官が負傷した。
 この時、船長は「外国人漁業規制法」で逮捕され、乾電池を投げた乗組員は「公務執行妨害」だった。
地裁で、同じ年のうちに判決が出て、(船長は)「懲役2年6カ月、これは執行猶予になったが、罰金150万円」だった。
 

○平成9年にも、福井県沖、島根県沖で発生した韓国漁船による事件がある。
 この時も、「外国人漁業規制法」違反ということで、島根県の方は「罰金120万、懲役六カ月、執行猶予」になっている。福井県の方は「罰金100万」。
 

○今回の中国については、国外に出してしまい、裁判も開けるかどうかわからない。
 「国際関係」で判断するということになると、韓国については、日本にとって「外交的価値」が軽いのかという話になる。
 もしも、韓国政府が今回の中国のようにひどい圧力をかけてきた、場合によっては、韓国で日本人が拘束されたとか、何か日本にとって大事なものを韓国が輸出しないとか、そういう圧力を韓国政府がかけたら、これからは韓国漁船が日本の国内に入ってきて漁をやっても、「外国人漁業規制法」で裁かれることはないということにもなりかねない。
 

○本当に、(検察が)外交関係を判断基準にしていくということを、この場でオーソライズしてしまっていいのか。
 総理に伺う。


【仙谷官房長官】
 

○刑事事件の処理は、事案ごと、ケース・バイ・ケースに、検察官が処分を、いわば独任官庁としてするということが原則だ。
 

○先ほどから、「今後の日中関係を考慮いたします」という部分を、むしろこれだけで判断したかのような議論を高市議員がされておるわけだが、この那覇地検の文章をよくお読みいただければ、本件の場合には、他方、「みずき」に現実に発生した損傷は、直ちに航行に支障が生じる程度のものではなく、また、幸い「みずき」乗組員が負傷するなどの被害の発生もない。また、被疑者はトロール漁船の1船長で、本件は、海上保安庁の巡視船「みずき」の追跡を免れるため、とっさにとった行為と認められ、計画性は認められず、かつ、被疑者には我が国における前科等もないなどの事情も認められますと。加えてというところに「日中関係を考慮いたします」という部分が出てくるわけで、こういう1要素として、刑事訴訟法247条を類推しながら、検察官が釈放、身柄についての処分を行ったということなので、あくまでも1要素ということだ。


【高市早苗】
 

○あくまでも1要素ということも、5つの理由があったということも、その5つの理由が船長釈放の前に官邸にも伝えられ、そしてまた法務大臣にも伝えられていたということも、私は質問主意書で答弁を受け取っているので、すべて理解をしている。
 

○5つの理由を聞いた上で、「釈放、結構じゃないか」ということで、法務大臣は「わかりました」と答えただけ。答弁書によると、「何ら異議を唱えなかった」と。
 「外交関係」などということを例示したばかばかしい釈放理由を報告されて、「わかりました」と言って何も異議を唱えない、そんな方が日本の法務大臣である。残念だ。
 

○法律が、被疑者の国籍や外交関係の軽重に関係なくきっちりと執行されて初めて日本の秩序は守られる、法治国家としての体面も保たれる、と思っているので、今の答弁も大変残念だ。
 

○昨日、塩崎委員に対して、仙谷官房長官が切れたように声を荒げた場面があった。「指揮権が発動されるべきだった」という話を塩崎委員がされた時のことだ。
「こんな重大なことを個人的意見で言うのか、自民党全体の意見になっていないことを言うな」というような、かなりきついことを(官房長官は)言われた。
 

○それだったら、民主党政権にも私は言わせていただく。普天間は何だ。
 自民党政権の時には、沖縄担当大臣だった。さっき町村委員もおっしゃったが、何度も沖縄の方々と議論を進め、平成8年からスタートした長い過程だったが、ガラス細工を作るように一生懸命配慮をしながら、様々な政策を打ちながら、ようやく、移設先予定地の名護市長も了解して下さり、県の方でもやむなしと、「ベストな選択じゃないかもしれないが、日本国全体の安全保障を考えたら負担もやむなし」といったことで形ができてきて、様々な手続が進んでいた。
 政権交代さえなければ、今年の秋に着工して、4年後には移設そのものが完了していたことを、ぶち壊した。
 あの時、(民主党は)言うことがばらばらだった。総理(鳩山前総理)は「国外か県外か」、社民党の閣僚は「絶対に国外」、岡田外務大臣(当時)は「嘉手納に統合」、北澤防衛大臣は「やはり今の予定地しかない」と。
 その結果、普天間問題はどうしようもないところに来てしまい、日米同盟の結束も緩み、あげくが、中国に足元を見られてこの体たらくだ。
 だから、仙谷長官の切れ方はおかしい。
 

○はっきり言わせてもらうと、私自身も、「何で指揮権を発動しなかったのか」「発動をするべきだった」と思っている。
 総理御自身が、事件発生後に、「日本の国内法に基づいて厳正に対処する」とおっしゃった。そうすると、菅内閣の閣僚である柳田大臣は、その総理の御意向を受けて、日本の国内法に従って厳正に対処しなくてはだめじゃないか。
 検察庁法に従って、検事総長を指揮されるべきだったと思っている。
 

○もう一つ、「漁業者の安全確保」について、質問主意書を出した。
 中国人船長が釈放された後に、沖縄県与那国町漁業協同組合の組合長さんが、「ちゃんと領有権を主張してほしかったのに、日本は尖閣諸島をあきらめたのと同じ。中国側に拿捕されるかもしれないと思うと、近くに漁に行けない」と語っておられた新聞記事を読んだ。
 あの頃、中国人船長が釈放された後にも、中国の外交部が「釣魚島とその附属島は古くから中国の領土であり、中国は争うことができない主権を有する」という声明を発表している。
 中国政府が、事件発生直後にも、船長が釈放された後にも、領有権をアピールしたとなると、この水域で日本漁船が拿捕される可能性も強くなっているのではないかという心配をした。
 

○私は質問主意書で、「今後、日本領海内で日本の漁船や漁業者が行う合法的な漁についても、中国当局に中国領海内における違法操業とみなされて、妨害行為を受けたり拿捕される可能性があると考えるが、内閣の認識を伺う」と問うた。
 答弁書には、「お尋ねのような可能性があるとは考えていない」と書いてあった。
 

○本当に、尖閣諸島海域で漁をする日本の漁船に全く不安はないと言い切れるのか。そう思い込んでいるとしたら、政府の危機管理能力、国民の安全を守るという意思について、随分問題があると思う。
 総理のお名前での答弁書なので、総理、1回ぐらいまともに答えていただきたい。


【鹿野農林水産大臣】
 

○沖縄の人たちを初めとする漁業者の方々が、今回のことにつきまして不安感をお持ちになっておる、沖縄の県議会においても決議がなされた等々、承知をしている。
 そのようなことから、水産庁としても、尖閣諸島周辺に常時1隻を派遣してしっかりと監視をする、そして、今後、これからも海上保安庁と連携をとりながら万全の策を講じてまいりたい、こう思っている。


【高市早苗】

○こういう考え方が、民主党内閣の危機管理の甘さ、外交そして防衛に国民が強い不安を感じている、そういうことにつながっていると思う。


【本件の質疑応答について:高市早苗の感想】
 

 尖閣諸島海域で漁をしておられる日本の漁業者が、中国当局から妨害を受けたり、拿捕される可能性を質した質問主意書に対して、「お尋ねのような可能性があるとは考えていない」という答弁書を閣議決定した菅内閣。
 危機管理能力の無さを露呈していると思います。
 

 これまでの国会審議の中で、海上保安庁長官は、「当該水域で、今年の8月頃から中国漁船の数が激増した」と答弁しておられます。
 南シナ海の海洋権益を「核心的な利益」としていた中国が、東シナ海でも覇権戦略を本格化させたと考えていいのではないかと思います。
 

 尖閣諸島が所在する石垣市の市民をはじめ多くの沖縄県民が、漁業、国防の両面で大きな不安に直面しておられることは想像に難くありません。
 菅内閣には、「あらゆる可能性」を視野にいれて、十分な対策を打って欲しいと願います。
 

 また、菅内閣が、刑事訴訟法に規定された検察官の「起訴便宜主義」を濫用した答弁を繰り返していることに、大きな疑問を感じています。
 

 私に戻ってきた答弁書や予算委員会での答弁でも、他の質疑者に対しての答弁でも、仙谷官房長官が強弁しておられますが、本当に、「検察官は、外交関係を判断して、被疑者の扱いや法執行の有無を決める」ということを、法解釈として確定してしまってもいいのでしょうか。
 

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