民法&戸籍法改悪阻止シリーズ⑪:高市早苗の議員立法案
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《高市早苗私案「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」の概要》
(目的)
この法律は、民法(明治29年法律第89号)の施行以来維持されてきた、夫婦の氏が同一であり、かつ、子は基本的にその父母である夫婦の氏を称するという我が国における氏の原則の意義を踏まえるとともに、婚姻前の氏が社会生活上通称として使用される分野が拡大している実態にかんがみ、当該原則を維持しつつ婚姻前の氏を通称として称する機会を確保するため、戸籍に婚姻前の氏を通称として記載し、又は記録する制度を設け、あわせて、国、地方公共団体、事業者その他公私の団体は婚姻により氏を改めた者が婚姻前の氏を通称として称するために必要な措置を講ずる責務を有すること等について定め、もって婚姻により氏を改めた者が不利益を被ることの防止及び婚姻前の氏の通称使用についての社会全体における統一性の確保に資することを目的とする。
(戸籍法の一部改正)
婚姻前の氏を通称として称しようとする者は、届書にその旨を付記して届け出なければならない。
(国、地方公共団体、事業者その他公私の団体の責務等)
①国、地方公共団体、事業者その他公私の団体は、法令の規定により氏名の記載又は記録を要する場合において、「通称使用の届出」をした者については、夫婦の氏に婚姻前の氏を付記する方法により婚姻前の氏を通称として称することができるよう、必要な法制上の措置その他の措置を講ずる責務を有する。
②国、地方公共団体、事業者その他公私の団体は、届出をした者が、職業生活その他の社会生活の幅広い分野における活動において、婚姻前の氏を通称として称する機会を確保するため、①の措置との整合性に配慮しつつ、当該活動の内容、性質等を踏まえ、必要かつ相当と認められる措置を講ずるよう努めるものとする。
(施行期日)
この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
この法律の施行前に婚姻により氏を改めた者であって婚姻前の氏を通称として称しようとするものは、婚姻中に限り、配偶者との合意に基づき、この法律の施行の日から1年以内に、戸籍法の届出に関する規定に準じて法務省令で定めるところにより、婚姻前の氏を通称として称する旨を届け出なければならない。
本欄では、概要版を掲載しましたが、この法律案は既に条文化も終了しており、自民党法務部会において国会提出の可否について審査を受けている最中です。
仮にこの私案が成立したならば、改氏による職業生活上の不便は解消できますし、資格制度における職名の扱いに関する不統一も解消できます。
また、現戸籍制度の「夫婦親子同氏」を堅持できることから、行政事務もファミリー・ネーム単位で可能であり、第3者が別姓選択夫婦に対して神経質になる煩わしさも発生しません。
先日書きました通り、千葉法務大臣が準備している「民法及び戸籍法の一部を改正する法律案」には、夫婦別氏のみならず、不倫や離婚を助長して家族を解体していく様々な規定が盛り込まれています。
結婚改氏による職業上の不便を訴えておられる方々についても、その多くは戸籍まで別氏にすることや配偶者の不倫を助長することまでは望んでおられないと思います。
国会に於ける与野党の議席数差を考えた場合、「民法及び戸籍法の一部を改正する法律案」が一旦国会に提出されたなら、法務委員会に付託され、数日間の審議で成立を見てしまうことは明らかです。
私案は、国民の皆様に「別の選択肢」を提示してご一考願う為にも、与党に慎重な審議を促す為にも、同じ法務委員会に付託される内容の対案を提出することが不可欠だと考え、準備したものです。
自民党法務部会では、「対案など提出せずに、とことん政府与党案に反対するべきだ」との意見が出て、現段階では私案を国会に提出できるかどうかは不明です。
しかし、政治の現実を考えた場合、反対論だけを唱えてアッと言う間に多数決で玉砕してしまうことが正しいとは思えません。
社会の実態的変化に対応しつつ戸籍制度を守り抜く為に必要な対案も示してみて、国民的議論を起こし、時間をかけて国会審議を進めていただく環境を作るという私の手法について、一定のご理解が得られればと願っています。