民法&戸籍法改悪阻止シリーズ⑩:結婚改氏による不便解消策は別にある
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女性の方からのお手紙やメールで、「結婚による改姓で職業上の不便を感じていたことから『夫婦別姓』に賛成していましたが、戸籍まで夫や子供と別姓になる制度だとは知りませんでした。要は、職場や社会生活で旧姓を使いやすくしていただけると助かるのです」という内容のご意見を多くいただくようになりました。
民主党政権が実現しようとしている夫婦別姓は「戸籍まで夫婦親子が別姓になるもの」であって、「旧姓の通称使用」とは全く別のものです。
婚姻している夫婦ならば100%夫婦同氏である現行戸籍制度の下でも、既に、実態としては社会生活での「通称使用」が進行しています。
営業職で取引先に旧氏が浸透している場合、専門職として氏名を資格名簿に登録して働く場合など、私生活ではファミリー・ネームとしての戸籍名を大切にしながら、職場では結婚前の旧氏を引き続き使っておられる方は多いと思います。私自身もその1人です。
ところが、勤務先や職業によって、旧氏の通称使用の可否が分かれ始めています。
「オフィス・ネーム制度」によって旧氏で勤務できる企業は増えましたが、一方で、戸籍名での勤務しか許可していない企業もあります。
また、資格が必要な職業についても、所属団体の規則改正によって旧氏による資格免許発行や旧氏と戸籍名の併記による名簿登録が進んでいるものの、業種によっては認められておらず、統一感が損なわれています。
平成21年12月時点で国立国会図書館に調べていただいたところ、弁護士は「旧氏を職名として弁護士名簿に登録することが可能」となっており、公認会計士、弁理士、税理士も旧氏での業務遂行が可能です。
司法書士、土地家屋調査士、行政書士、一級建築士についても、団体規則によって「旧氏と戸籍名の併記」による名簿登録を認めています。
一方で、医師、歯科医師、助産師、看護師、診療放射線技師、社会保険労務士をはじめとする厚生労働省系の専門職では「戸籍名のみ」としており、婚姻前の氏で業務を行うことはできません。
浄化槽管理士、獣医師、調教師、家畜人工授精師など農林水産省関係の専門職も同様です。
公務員は届出により、旧氏で納税することも可能ですが、多くの職業では認められていません。
また、個人を証明する書類として、パスポートは既に「戸籍名と通称名の併記」で発行することが可能であり、私のパスポートも「YAMAMOTO(TAKAICHI)SANAE」と表示されていますが、免許証、健康保険証、住民票、印鑑証明などでは併記は認められていません。
私は、戸籍まで夫婦親子別氏にしてしまうような法改正には断固反対ですが、過半数の家庭が共働きとなっている現状から、「改氏によって生じる職業生活上の不便を解消して欲しい」とのお声が増えていることに対しては一定の配慮が必要だと考えています。
これらの方々は、4月27日の本欄で紹介した内閣府世論調査で「夫婦は必ず同じ姓を名乗るべきだが、婚姻前の名字を通称として使えるように法律を改めることについてはかまわない」と回答された25・1%の層に重なり、「夫婦別氏推進論者」とは区別して考えなければなりません。
これから先も旧氏を通称使用して働く方が増えることは確実だと考えますし、勤務先や職業による制度上の不平等は解消しなければなりませんから、「夫婦同氏の戸籍制度を維持した上で、社会制度の統一性を確保する方法」を考え、議員立法案を書いてみました。
明日は、高市早苗私案の法案概要をご紹介します。