民法&戸籍法改悪阻止シリーズ⑤:ファミリー・ネームが消失する
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千葉法務大臣を中心に民主党政権が成立を目指している「民法及び戸籍法の一部を改正する法律案」のメイン・ディッシュは、何と言っても「選択的夫婦別氏制度の導入」の項目でしょう。
夫婦別氏推進論者は「氏」を単なる「個人の呼称」と考えており、私も含めて夫婦別氏反対論者は氏を「家族の呼称(ファミリー・ネーム)」だと考えていると整理してもよいと思います。
日本の現行法制度では、入籍している夫婦は100%「夫婦同氏」です。
最近では、職業生活などにおいて「通称使用」をする方が増えているものの、戸籍上は全ての夫婦が同氏であり、「ファミリー・ネーム」が維持されています。
例えば、私自身は、衆議院議員選挙立候補届出時に通称名欄に「高市早苗」と記した為、衆議院議員としての呼称は「高市早苗」ですが、仕事を離れると戸籍名である「山本早苗」として生活を営んでいます。夫も私も子供も山本氏であり、夫婦親子同氏です。
民主党が提唱する夫婦別氏制度が実現すると、別氏を選択した夫婦については、戸籍上も夫婦の氏が別になります。
子供の氏も片方の親とは別になるため、「ファミリー・ネーム」は消失します。
「氏」の意味は、時代とともに変遷しています。
江戸時代には、武士は氏を名乗ることが許されていましたが、氏は武家の「血統」を表わすものでした。
武家の女性は婚姻しても実家の氏を名乗っていたそうです。
明治3年から平民にも氏の使用が許され、明治8年には氏の使用が義務化されましたが、明治9年の太政官指令によって「妻の氏は所生(実家)の氏」とされていました。
明治31年の旧民法によって、「婚姻によって夫の家に入る妻は、夫と同じ氏を称する」こととなり、日本は「夫婦同氏制」となります。
氏は「家」を表わすものとなりました。
昭和22年の改正民法によって、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」こととなりました。
旧民法のいわゆる「家制度」の理念とは違い、氏の決定には「夫婦の機会平等」が保障され、氏は「家族」を表わすものとなったと言えましょう。
明治31年以降の長きに渡って日本は「夫婦同氏制」であり、戸籍の整備・活用の進行とともに、「夫婦親子統一のファミリー・ネーム(家族名)」が定着してきたことが分かります(親子同氏については、一部、養子縁組などで例外もありますが)。
家族は、社会の最小の集団として法に守られ、外からも同一性を認められて存在してきました。税制優遇措置、相続制度、福祉制度、社会保険制度についても「家族単位」でシステムが組まれてきました。
この原則を変えるべき「相当の理由」が、私には理解できません。
この問題に関して政府が行った世論調査で最新のものは、平成18年の内閣府世論調査です。
「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ姓を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」と回答した方が35・0%(平成13年調査では29・9%)。
「夫婦は必ず同じ姓を名乗るべきだが、婚姻前の名字を通称として使えるように法律を改めることについてはかまわない」と回答した方が25・1%(平成13年調査では23%)。
「夫婦別姓を導入してもかまわない」と回答した方が36・6%(平成13年調査では42・1%)。
先記2つの回答は、それぞれ「現行法制度を変える必要がない」、「旧姓を通称として使える法改正ならよい」とするものですが、いずれも「夫婦は必ず同じ姓を名乗るべき」としていることから、合計60・1%もの人が、「ファミリー・ネームは依然必要だ」と考えていることが分かります。
最後の「夫婦別姓を導入してもかまわない」と回答した36・6%の方のうち、「自分も別姓を希望」する方は29・5%でしたから、法改正をしてまで戸籍上の別姓になることを希望される方は、全体の1割程です。
また、同世論調査では、「夫婦の姓が違うと子供にとって好ましくない影響がある」と回答された方が66%に達していることにも留意するべきでしょう。