コラム

  1. TOP
  2. コラム
  3. 経済産業副大臣日記 平成14年10月~平成15年10月
  4. 下請事業者保護の為の法改正

下請事業者保護の為の法改正

更新日:

 大変厳しい景況下にあって、いわゆる下請企業とされる事業所では、受注量減少や発注単価の引き下げや運転資金確保難により、経営環境が極めて悪化しています。
 こういった状況を受けて、今国会で「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」を改正しました。親会社から下請会社への不当な締め付けを排除する為の法律です。
 親会社にお勤めの方にも下請会社にお勤めの方にも、是非とも法律の内容を知っていただきたくて、ここに概要を書くことにしました。


 これまでの下請法で、親会社には「発注書面の交付義務」「書類作成・保存義務」「下請代金の支払期日を定める義務」「遅延利息支払義務」が課せられていました。また、親会社は「納品物の受領拒否」「不当返品」「買い叩き」「下請代金の減額」「下請代金支払遅延」「物の購入強制」「報復措置」「割引困難な手形の交付」を行なってはならないこととされていました。


 今回の改正で、これらに加えて「役務の利用強制」「経済上の利益の提供要請」も禁じられました。例えば、親会社は下請会社に対して保険契約締結やインターネット・プロバイダ利用の強制は出来ませんし、決算対策の協賛金提供の要請や従業員派遣の要請も出来なくなります。


 禁止行為を行なった時には、まず公正取引委員会から勧告が有り、親会社は、原状回復と再発防止措置を講じなければなりません。これまでは勧告に従わなかった時のみ公表していましたが、今後は勧告があった時点で公表されてしまいます。
 書面交付や書類作成保存義務違反、検査忌避等をした場合の罰金も「3万円以下」から「50万円以下」へと大幅に引き上げられました。


 更に、「物品製造・修理」に限定されていた下請法の対象に、「情報成果物作成」「役務」「金型製造」が追加されました。今後は、ソフトウエアの開発、放送番組の作成、広告制作、機械設計、貨物自動車運送、内航海運、ビルメンテナンス、情報処理サービス等の下請取引も法の対象となります。


 昨年、当省では、親会社と下請会社対象に、約3万6000の書面調査を実施して、法律違反の疑いがあった親会社に対して1600件超の立入検査を実施しました。違反行為の中でも、支払遅延は181件、下請代金減額は172件と最も多く報告されています。
 特に下請事業者の多い業種である電気機械器具製造業や一般機械器具製造業や輸送用機械器具製造業には、重点的に立入検査を実施しており、重大悪質な違反行為が認められた場合には、公正取引委員会に措置請求を行っております。


 また、全国各地で「下請取引改善講習会」を開いたり、企業および業界団体に書面を出したりして、下請中小企業対策の普及啓発に努めているところです。

 昨年11月には、平沼経済産業大臣名で、親事業者8900社と360の業界団体に対して、「下請事業者への配慮に関する通達」を出しました。


 例えば、「下請代金の支払いは、発注に係る物品の受領後、出来る限り速やかに、かつ出来る限り現金で支払う。少なくとも賃金に相当する金額は、全額を現金で支払う。手形で支払う場合には、手形期間の短縮化に最大限配慮する」「単価の決定は、下請事業者の適正な利益を含むこと等、下請事業者と十分協議の上で行なう」「下請事業者に対し、将来の発注計画についての事前の情報提供に努め、下請事業者の計画的生産、生産平準化に協力を行なう」「海外進出や工場移転等に際しては、その計画について下請事業者に必要な情報を逐次提供する。やむを得ず取引を停止または大幅に減少させることとなる場合には、相当の猶予期間をもって予告する」といった事柄への協力を要請する内容でした。
 また、下請会社は、親会社の事業縮小や海外進出などで取引が減ってしまうなど、不安定な状況に置かれる場合が多いと思います。
 下請企業振興協会では、取引斡旋による「下請中小企業の販路開拓」支援も行なっています。
 更に、下請中小企業対象の「見本市」や「取引斡旋商談会」を開いて、下請中小企業の新規取引先の開拓や広域的な受注機会増大を図ってまいります。
 この他、政府系金融機関による貸付けや「中小企業経営革新支援法」を活用などでの幅広い振興対策を講じているところです。


 経済産業省では、昨年の11月より、中小企業庁と各地方の経済産業局内に、下請取引に係る苦情や相談の特別窓口を設置しています。

社との取引でお悩みの件もあるかと存じます。お気軽に特別窓口をご利用下さいませ。(中小企業庁代表TEL:03-3501-1511)

 


*「下請」という名称を用いるのは不適切とのご指摘があるのは承知致しておりますが、この用語は22本の法律に用いられている法律用語である為、ご了解下さい。特に「下請法」では、「親事業者の下請事業者に対する優越的地位の濫用行為が行なわれやすい状況」を示す用語として用いられています。

前のページへ戻る

  • 自民党
  • 自民党奈良県連
  • リンク集