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イラク攻撃の備えは怠るべきではない

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 毎週木曜日の早朝、官邸で「副大臣会議」が開かれています。官房副長官が進行役を務め、全省庁の副大臣が、各省の新施策を報告したり、他省庁の施策に対して政治家として忌憚の無い意見を言い合ったりします。
 政権内にあって全員が情報を共有しておくことは大切ですし、他省の副大臣からの指摘で改善すべき点に気付く機会も得られます。


 2月13日の副大臣会議で、私は発言を求めました。先週書いた通り、イスラムのメッカ巡礼終了後の2月15日以降3月にかけては、米軍によるイラク攻撃の可能性が高まると予測できることから、13日の会議は危険水域突入直前の重要な時期だと思ったからです。
 「経済産業省においては、開戦後の幾つかのケースをシミュレーションし、原油供給体制を中心に既に対策を整えています。全省庁が開戦直後からそれぞれ如何なる対応を取るべきか、情報を共有したいのですが」。


 私の発言と同時に、反論が相次ぎました。
 「時期尚早だよ」「今はそういう話をする段階じゃないだろう」「日本政府が平和的解決に向けて努力している時に、ここでそんな話をすることは国益を損ねる」。
 まさに総スカンでした。


 結局、「湾岸戦争の時の各省庁の対応」についてなら資料を出しますよ」となだめられましたが、湾岸戦争の折の日本政府の対応ぶりに問題を感じていたからこそ、現時点で改善すべき点を議論しておきたかったのです。
 開戦後に大臣や副大臣が的確な指示を出す為には、省庁間に跨がる案件の把握も必要です。
 例えば、パウエル国務長官が国連で「イラクとアルカイーダの関係」を指摘されましたが、それが事実であれば、米国の同盟国である日本国内でのテロにも注意しなくてはなりません。原発テロ対策は、経済産業省・警察庁・海上保安庁共管になりますが、大学の研究用原子炉は文部科学省所管です。原油対策やテロ対策のみならず、邦人保護、経済への影響分析、戦費負担を求められた場合の財政的対応、後方支援の是非と方法等、検討しておくべき課題は多岐に渡ります。


 「日本政府が平和的解決の為の努力をしていること」イコール「戦争は絶対に起こらない」ことではないはずです。国際政治の基本は「ネバー・セイ・ネバー」 (絶対に起こらないということは無い)です。平和的解決を望みつつも、万が一への備えを怠らないことこそが政府の役割だと思います。
 日本国憲法には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我らの安全と共存を保持しようと決意した」とありますが、無法者国家やテロリストの存在、大量破壊兵器の拡散が冷厳たる事実です。
 安保について研究や議論をすることを「好戦的と誤解される」と恐れてタブー視することこそ、国家主権や国民の生命を守り抜くべき政府としては無責任な姿勢ではないかと思います。


 副大臣会議での「時期尚早」の声に「今の時期に余りにも悠長では?」と反発した私に対して、「何が悠長なんだ。既に役所は対応を考えてるよ」と言い返した副大臣がいましたが、役人まかせでチェックもしないなら、政治家が大臣や副大臣を務める必要もないのです。
 後刻、安倍官房副長官が、「実は、僕も先日、官邸内で高市さんと同じような提案をして叱られちゃったんだよ」って言っておられたので、益々落ち込んだ1日でした。

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