予算委員会質疑報告⑥:経済安全保障③:米国法や中国法の企業への周知
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○高市委員 米国では、国防や経済安全保障上のリスクを減らすために、国防授権法、輸出管理改革法、外国投資リスク審査現代化法などが制定され、輸出管理や対内直接投資管理が強化されています。近年は、多くの中国企業がエンティティーリストに追加されています。
このエンティティーリストというのは、米国の商務省が、国家安全保障や外交政策上の懸念があるとして指定した企業を列挙したリストでございます。このリストに掲載された企業に対して規制対象となる物品やソフトウェアや技術を輸出するためには商務省の許可が必要となりますが、申請は原則不許可とされます。
過去には、主に米国が制裁を科していた中東諸国などの企業が掲載されておりましたけれども、近年は、サイバー攻撃など技術的安全性への懸念から、中国の通信関係、半導体関係企業の追加が目立ってきておりました。さらに、昨年六月には、新疆の五つの企業、団体が追加され、エンティティーリストの拡大は人権問題にも及んでいると考えられます。
このリストに基づく規制は、米国産の部品やソフトが一定割合含まれる場合、日本企業にも適用され、違反した場合には、米国企業との取引禁止などの罰則や罰金が科されます。
この商務省の輸出管理規則の規制には、日本からの再輸出も含まれます。例えば、米国から日本に輸出された物品や技術を日本から中国に再輸出する場合、また、米国産の部品や技術を組み込んで日本で製造した製品を日本から中国に輸出する場合、組み込み比率や品目によっては、日本企業も規制を受けます。
つまり、日本企業は、日本の外為法に基づく輸出審査を受けるだけではなく、米国法に基づく輸出審査にも対応しなければなりません。
さらに、昨年一月九日に施行された中国の外国の法律及び措置の不当な域外適用を阻止する規則への留意が必要になってしまいました。これは、第三国の法人との正常な経済、貿易について、外国の法律により禁止又は制限を受けた場合、中国公民及び組織は、人民法院を通して第三国の主体に対して損害賠償請求ができるというものでございます。
つまり、日本企業が米国法の再輸出規制に従って特定の中国企業に製品の供給をしなかった場合、中国側から損害賠償を受ける可能性が生じると考えます。
日本企業は、これでは米国法と中国法の板挟みになりかねず、もしも対応を誤れば、米国とのサプライチェーンから外される、また中国のサプライチェーンから外される、そういった可能性がございます。
日本企業をいかなる方法で守れるのか。この米国と中国などと取引をしている小規模事業者を含む全ての日本企業、経営者に十分に外国の法制度を周知しておられるのか、経済産業大臣に伺います。
○萩生田国務大臣 お答えします。
産業界からは、米中を始めとする我が国の主要貿易相手国による輸出管理措置について、様々な懸念の声が上がっていると承知しております。
こうした企業の声を踏まえ、経産省として、私自身からの申入れも含め、事業の予見可能性や競争環境の公平性確保が重要であることを米中両国に対し、強く申入れをしておりますし、また、WTOを始め、国際、マルチの会議の場では、常にこういったことを、第三国の皆さんにも知っていただくべく、発言をさせていただいております。
また、米中等の輸出管理措置によって日本企業が貨物を輸出できなくなったと認められる場合には、それにより発生した損失は貿易保険でカバーすることができるとしております。
さらに、産業界に対しても、各国の輸出管理措置について積極的かつタイムリーに情報を発信するとともに、第一に、自社のサプライチェーン上のリスクについて精緻に把握し、必要に応じて規制当局に許可申請を行っていただきたいこと、第二に、各国の輸出管理上求められる内容を超えて過度に萎縮していただく必要は全くないこと、第三に、仮にサプライチェーンの分断が不当に求められるようなことがあれば、経産省としては、前面に立って、しっかり支援をしていくことをお伝えをしてきました。
引き続き、関係国との対話やこれらの取組などを通じて、日本企業の事業環境の維持向上にしっかり努めてまいりたいと思います。
○高市委員 いろいろと周知をしていただいているようですが、残念ながら、小規模事業者に至るまで、また、地方の中小企業に至るまで、これらの情報が行き渡っていないというのが現状でございます。また、各都道府県にジェトロの事務所もできておりますので、こういったところも活用しながら、是非とも効果的な周知をお願い申し上げます。