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「「君」か「さん」か」

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 私が委員長を務める文部科学委員会の審議は2月末より本格的にスタートしました。

 委員長に先立って行われた理事会の場で、社民党の女性議員から質問が出ました。
 「高市委員長は、委員のことを『君』と呼ばれるのか『さん』と呼ばれるのか、お考えを伺いたい」
 「私は男女問わず全ての委員を『君』と呼ばせていただきます」と答えましたところ、彼女から反論がありました。
 その議員は元教師だったそうで「学校でも男の子は『君』と呼び、女の子は『さん』と呼ぶのですから、当委員会でも男性議員は『君』で女性議員は『さん』と呼んでいただけませんか」

 平成5年に土井たか子議員が初の女性衆議院議長に就任されて、本会議場で議員や閣僚を「君」ではなく「さん」と呼んだことから委員会でも、指名時の呼び方は委員長によってまちまちになりつつあります。

 衆参の歴代女性委員長について調べてみると、男女議員とも「さん」と呼んだ人、男性議員を「君」と呼び女性議員を「さん」と呼んだ人、男女とも「君」と呼んだ人の3通りでした。旧社会党や民主党の女性委員長でも「君」で統一された方もおられました。

 私にとっても実に悩ましい問題で、実は、1ヶ月程度に選挙区に戻った折に、私は母親からこう言い渡されたのです。
 「早苗ちゃんは委員長とやらになったそうだけど、貴女にとっては殆どの議員が年上なんでしょうから、偉そうに『君』なんて呼んではダメよ!」

 確かに、現代の社会では一般的に「君」は目下の人に使われます。
 しかし、国会という場には帝国議会以来の政治的伝統を踏まえた儀式の要素が多々残っています。
 閉会式に天皇陛下がお越しになるのは、衆議院の議場ではなくて、貴族院の流れをくむ参議院の議場だけですし、総理と言えども議員バッジを忘れたら本会議場に入れません。ベレー帽がトレードマークだった女性議員が着帽のまま本会議場に入ることは許されませんでしたし、「ぎちょ~っ」と声を張り上げる呼び出し係の存在も未だ健在です。

 私は、衆議院規則と先例集を調べてみました。

 衆議院規則第212条
 「議員は、互いに敬称を用いなければならない」

 参議院先例集433
 「議員は、議場又は委員会議室においては互いに敬称を用いる・議員は、議場又は委員会議室においては互いに敬称として「君」を用いる」
 中国では、「君」というのは重臣、王、諸候などの称だったそうで、日本でも明治末までは、一般的にも同輩以上の人に用いた敬称だったということです。
 国会では、明治23年11月25日の第1回帝国議会の「議会事始め」から「君」が議員の敬称として使われています。

 もちろん私も一旦議場を離れると、現代の世間の常識通り、目上の方を「君」と呼んだりは致しません。
 でも、私は「議員の年令や性別や身分の上下に関係なく国民の代表として対等に議論をする」「公私の区別を示す」という意味合いが込められた儀式的伝統を敢えて踏襲してみようと考えたのです。
 

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