「懲罰動議の人違い」
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平成13度予算案が衆議院を通過したと思ったら、その3日後に内閣不信任案が提案され、これを否決。さらに与党内で続く森総理退陣要求の高まりなど、次々に大きな山がやってきて、慌ただしい毎日です。
そんな騒ぎの中で、マスコミ的には埋没してしまった事件がありました。
2月28日の新聞各紙には「与党・民主、懲罰動議で応酬」という大きな見出しが踊っていました。
「26日の衆議院予算委員会での採決の際、野呂田芳成委員長(自民党)に暴行してケガを負わせたとして、川内博史議員(民主党)への懲罰動議が与党3党から提出された。ところが、この川内博史議員に対して暴力を振るった佐藤静雄議員(自民党)への懲罰動議が民主党側から提出された」というのが記事の内容でした。
委員長にケガをさせた民主党議員が、さらに自民党議員に突き飛ばされていたというのです。
佐藤静雄議員は北海道出身で、とにかく紳士的で穏やかな方なので、「意外に熱くなるところがあるんやなあ。それにしても、予算委員でもないのに、なんで委員会室で乱闘に加わってはったんやろう」と、驚きながら記事を読んでおりました。
この記事が出てから、佐藤議員の事務所には、選挙区から「暴力を振るうなんてけしからん!」という抗議の電話が殺到したそうです。次の選挙を考えると、大変なダメージになってしまいました。
ところが、なんと佐藤議員は、その時間にその場所には居なかったのです。つまり、他の自民党議員と見間違えられて濡れ衣を被ったわけです。
記事が出た日の正午から清和会(森派)の総会が開かれ、国対委員である坂本剛二議員からこの件の報告がありました。
「佐藤静雄議員本人が否定しておりましたのでビデオでチェックしましたところ、民主党の議員を突き飛ばしたのは佐藤静雄議員ではありませんでした。真犯人は、奈良県選出のA議員でした」
全員が一斉に私の顔を見ます。私は真っ赤になりながらうつむくばかり・・。
坂本議員によると、A議員が名乗り出なかったのは「事件が起きてから2日以内でしか懲罰動議は出せない」というルールが有るため、2日が過ぎるのを待っていたのだろう、とのことでした。
同じ県選出の議員が暴行を働いた上、名乗り出なかったというのは、とても残念でしたが、議員の顔を見間違った上、確認もせずに懲罰動議を出した民主党の方が悪いですよ。(確かにA議員は目元が佐藤議員に似た感じではありますが)
加えて、自民党にも反省すべき点はあります。
A議員もまた、佐藤議員と同じく予算委員ではないのです。その彼が何故予算委員会に居なければならなかったかというと、「空席埋め」の仕事をさせられていたのです。
自民党では、1年生議員は全員「国対委員」にされてしまい、各委員会で先輩議員が欠席して空席が出た時に代わりに先輩委員の席に座っていなければならないのです。
ちなみに自民党では、予算委員会や国土交通委員会などの人気委員会には1年生議員の委員就任を許していません。しかし、年配の議員が、委員にだけ就任して委員会をサボるのが恒常化しているのが腹立たしい。出席しないのなら、意欲のある若手議員に委員の席を譲って欲しい!
ところで、3月6日の新聞にとても小さな見出しで「懲罰動議提出民主が人違い」と出ていましたが、これじゃあ見落とす読者も多そうで、佐藤議員の名誉回復にはなってないなあ。