子どもの自殺について
更新日:
相次いで発生した子どもの自殺事件に、多くの皆様もやり切れない気持ちでおられることと思います。
ご遺族の皆様のお悲しみはいかばかりかと存じます。心よりお悔やみを申し上げますとともに、お子様のご冥福をお祈り申し上げます。
昨年だけで、556人もの未成年者(厚生労働省平成17年人口動態統計より5歳~19歳の統計)が自殺しています。
学校でのいじめや親との不和など、ご本人にとっては「とても耐えられない」という状況に追い込まれてのことと拝察いたしますが、「生き続けていけば、長い人生の道のりで多くの生き甲斐や喜びも経験できただろうに」と思いますと、自らの手で未来を断ち切ってしまわれたことが残念でなりません。
先週、国会でも、「いじめによる自殺」が取り上げられ、衆議院青少年特別委員会では熱心な議論が展開されました。
教育現場での対策は、文部科学省所管となりますが、私は内閣府で「自殺対策」「青少年対策」については関係省庁間の総合調整を担当している立場から、委員会答弁に立たせていただきました。
解決策になると思われることについては、政府も国民も全てを実行し、手を尽くしていかなければならないと思います。
文部科学省には、是非とも、スクール・カウンセラーの配置促進、教育委員会の体制見直し、不適格教員の教育現場からの排除、教員研修や教員養成課程の充実、道徳教育の促進、校長の権限強化を実行していただきたいと願います。
親も子どもも相談できる「スクール・カウンセラー」の配置は、公立中学校を中心に進んできてはいますが、予算の関係もあって小学校への配置や全中学校への配置はまだまだです。
地方自治体独自の取り組みで小学校への配置を進めている市町村もありますが、国も地方も優先課題として予算計上するべきですし、校内でのカウンセラー室の設置場所についても、相談しやすい環境創りが必要です。
「担任の先生に相談したが、取り合ってもらえないので、教育委員会に相談したが、改善されなかった」という親御さんの悩みもよく伺います。
教育委員は、それぞれの地域に合った良質の教育を実現する為に、民間の方々が任に就いておられます。地域によっては、単なる名誉職化してしまっていて、会議も少なく形骸化してしまっている現状が指摘されています。
市民の代表として権限を与えられているこの方々が、本気で働き、良識を持って教育現場に口を挟んで下さらないことには、プロで構成される閉鎖的な教育現場の改善は望めません。
出席率の悪い教育委員は解任するなど、青少年の為にしっかり働いて下さる教育委員会に改革していただきたいと思います。
先般の事件では、担任の先生がいじめの原因と思われる状況を作り、先生自身がいじめに加わっていたというとんでもない事態が報道されていました。事実だとしたら、明らかに「不適格教員」です。
私が文部科学委員長だった折に法改正を行い、「指導力不足(不適格)教員は、教育委員会の決定によって、教育現場から退場していただく」ことが可能となりました。
ところが、目に余る教員について教育委員会に申告した校長先生が、教員組合から糾弾され、校長先生の方が転勤する破目になってしまったケースも耳にしました。
学校教育法28条3項は、「校長は校務をつかさどる・所属職員を監督する」と規定しています。
地方公務員法32条も、「上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない」と規定していますが、校長先生の権限に実効性がない現場も存在するということでしょう。
折角の制度が使えないのでは仕方ありませんから、文部科学省には運用面での問題点を分析して、解決していただきたいと思います。
また、「児童・生徒間のいじめを如何なる方法で解決したらいいのか」と悩みを抱える先生方も多いようです。
成功事例の提供も含め、教員養成課程や教員研修の場で、ロール・プレイングなども行いながら、児童・生徒への指導方法を充実させていっていただきたいと思います。
次に、ご家庭や学校で、子どもさんたちに教え込んでいただきたいことがあります。
第1に、「いじめ」が如何に卑劣で恥ずべき行為であるかということ。
誰かを貶めることでしか優越感を味わえないとか、仲間はずれになってしまうとしたら、こんなに情けないことはありません。それは自分に誇りを持とうとしない弱虫の行為です。
第2に、この世に生を受けたことの重さです。
誰でもそうですが、1人で産まれてきて1人で育ったわけではありません。
両親が2人、祖父母が4人、曽祖父母が8人・・と遡っていきますと、数え切れないほど多くのご先祖様が、この世に生を受け、無事に成長し、伴侶と出会い、また無事に子どもが産まれ・・という信じられないほどの幸運が続いてきたからこそ、私たち1人1人が存在するのです。
自分の生命も他人様の生命も、多くのご先祖様が繋いで下さったかけがえのない重いものです。
そして、マスコミの方々にもお願いしたいことがあります。
熱心な取材・報道のお陰で、学校側がもみ消そうとしていた事柄が明らかになり、問題の本質が見えてきたのですから、報道機関の功績は大きいと思います。
ただ心配なのは、報道を見た子どもが「僕も自殺したら、親や友人や先生が気付いてくれるかもしれない。僕をいじめたクラスメートが後悔するかもしれない」と考えてしまい、連鎖的な自殺事件が発生する可能性です。
あるテレビ番組で、コメントされていた識者が「君たち、絶対に死ぬなよ。死んでも君をいじめた奴らが笑うだけだ。生きろよ!」と呼びかけておられたことが印象的でした。
報道の折に、可能な限り、生き抜くことの価値を理解できるメッセージを加えていただけたら素晴らしいと思います。
先々週の閣僚懇談会でも、私の方から関係閣僚の皆様に対し、「閣僚記者会見等の機会に、生きることの価値、自殺対策の重要性に関するメッセージを発信していただきたい」旨のお願いを致しました。
今年6月に「自殺対策基本法」が公布されました。
法律は「公布から6月以内の施行」としていますが、成人も含めた自殺者数が年間3万人を超えていることから、政府は施行に向けた準備を急ぎ、期限ぎりぎりの12月ではなく、10月28日施行となったところです。
この基本法施行を受けて、今後は大急ぎで「自殺対策大綱」の策定作業に入ります。決定された大綱に従って、関係省庁が自殺対策施策の更なる充実に取り組むことになりますが、大綱決定は来年になってしまいます。
1日1日、かけがえのない生命が失われる可能性を考えますと、政府・国民挙げて、できることから取り組んでいく必要があります。
教育現場の改善のみならず、子どもの心の問題を扱える医師の配置、うつ病対策、自殺サイトなど有害情報への取り組み、自殺未遂者のケアなど、やるべきことは山のように有ります。
内閣としても総力を結集して自殺対策に取り組みますが、国民の皆様にも、折に触れ、生を受けたことの重みと有り難さを子どもたちに語りかけていただきますよう、お願い申し上げます。
ご遺族の皆様のお悲しみはいかばかりかと存じます。心よりお悔やみを申し上げますとともに、お子様のご冥福をお祈り申し上げます。
昨年だけで、556人もの未成年者(厚生労働省平成17年人口動態統計より5歳~19歳の統計)が自殺しています。
学校でのいじめや親との不和など、ご本人にとっては「とても耐えられない」という状況に追い込まれてのことと拝察いたしますが、「生き続けていけば、長い人生の道のりで多くの生き甲斐や喜びも経験できただろうに」と思いますと、自らの手で未来を断ち切ってしまわれたことが残念でなりません。
先週、国会でも、「いじめによる自殺」が取り上げられ、衆議院青少年特別委員会では熱心な議論が展開されました。
教育現場での対策は、文部科学省所管となりますが、私は内閣府で「自殺対策」「青少年対策」については関係省庁間の総合調整を担当している立場から、委員会答弁に立たせていただきました。
解決策になると思われることについては、政府も国民も全てを実行し、手を尽くしていかなければならないと思います。
文部科学省には、是非とも、スクール・カウンセラーの配置促進、教育委員会の体制見直し、不適格教員の教育現場からの排除、教員研修や教員養成課程の充実、道徳教育の促進、校長の権限強化を実行していただきたいと願います。
親も子どもも相談できる「スクール・カウンセラー」の配置は、公立中学校を中心に進んできてはいますが、予算の関係もあって小学校への配置や全中学校への配置はまだまだです。
地方自治体独自の取り組みで小学校への配置を進めている市町村もありますが、国も地方も優先課題として予算計上するべきですし、校内でのカウンセラー室の設置場所についても、相談しやすい環境創りが必要です。
「担任の先生に相談したが、取り合ってもらえないので、教育委員会に相談したが、改善されなかった」という親御さんの悩みもよく伺います。
教育委員は、それぞれの地域に合った良質の教育を実現する為に、民間の方々が任に就いておられます。地域によっては、単なる名誉職化してしまっていて、会議も少なく形骸化してしまっている現状が指摘されています。
市民の代表として権限を与えられているこの方々が、本気で働き、良識を持って教育現場に口を挟んで下さらないことには、プロで構成される閉鎖的な教育現場の改善は望めません。
出席率の悪い教育委員は解任するなど、青少年の為にしっかり働いて下さる教育委員会に改革していただきたいと思います。
先般の事件では、担任の先生がいじめの原因と思われる状況を作り、先生自身がいじめに加わっていたというとんでもない事態が報道されていました。事実だとしたら、明らかに「不適格教員」です。
私が文部科学委員長だった折に法改正を行い、「指導力不足(不適格)教員は、教育委員会の決定によって、教育現場から退場していただく」ことが可能となりました。
ところが、目に余る教員について教育委員会に申告した校長先生が、教員組合から糾弾され、校長先生の方が転勤する破目になってしまったケースも耳にしました。
学校教育法28条3項は、「校長は校務をつかさどる・所属職員を監督する」と規定しています。
地方公務員法32条も、「上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない」と規定していますが、校長先生の権限に実効性がない現場も存在するということでしょう。
折角の制度が使えないのでは仕方ありませんから、文部科学省には運用面での問題点を分析して、解決していただきたいと思います。
また、「児童・生徒間のいじめを如何なる方法で解決したらいいのか」と悩みを抱える先生方も多いようです。
成功事例の提供も含め、教員養成課程や教員研修の場で、ロール・プレイングなども行いながら、児童・生徒への指導方法を充実させていっていただきたいと思います。
次に、ご家庭や学校で、子どもさんたちに教え込んでいただきたいことがあります。
第1に、「いじめ」が如何に卑劣で恥ずべき行為であるかということ。
誰かを貶めることでしか優越感を味わえないとか、仲間はずれになってしまうとしたら、こんなに情けないことはありません。それは自分に誇りを持とうとしない弱虫の行為です。
第2に、この世に生を受けたことの重さです。
誰でもそうですが、1人で産まれてきて1人で育ったわけではありません。
両親が2人、祖父母が4人、曽祖父母が8人・・と遡っていきますと、数え切れないほど多くのご先祖様が、この世に生を受け、無事に成長し、伴侶と出会い、また無事に子どもが産まれ・・という信じられないほどの幸運が続いてきたからこそ、私たち1人1人が存在するのです。
自分の生命も他人様の生命も、多くのご先祖様が繋いで下さったかけがえのない重いものです。
そして、マスコミの方々にもお願いしたいことがあります。
熱心な取材・報道のお陰で、学校側がもみ消そうとしていた事柄が明らかになり、問題の本質が見えてきたのですから、報道機関の功績は大きいと思います。
ただ心配なのは、報道を見た子どもが「僕も自殺したら、親や友人や先生が気付いてくれるかもしれない。僕をいじめたクラスメートが後悔するかもしれない」と考えてしまい、連鎖的な自殺事件が発生する可能性です。
あるテレビ番組で、コメントされていた識者が「君たち、絶対に死ぬなよ。死んでも君をいじめた奴らが笑うだけだ。生きろよ!」と呼びかけておられたことが印象的でした。
報道の折に、可能な限り、生き抜くことの価値を理解できるメッセージを加えていただけたら素晴らしいと思います。
先々週の閣僚懇談会でも、私の方から関係閣僚の皆様に対し、「閣僚記者会見等の機会に、生きることの価値、自殺対策の重要性に関するメッセージを発信していただきたい」旨のお願いを致しました。
今年6月に「自殺対策基本法」が公布されました。
法律は「公布から6月以内の施行」としていますが、成人も含めた自殺者数が年間3万人を超えていることから、政府は施行に向けた準備を急ぎ、期限ぎりぎりの12月ではなく、10月28日施行となったところです。
この基本法施行を受けて、今後は大急ぎで「自殺対策大綱」の策定作業に入ります。決定された大綱に従って、関係省庁が自殺対策施策の更なる充実に取り組むことになりますが、大綱決定は来年になってしまいます。
1日1日、かけがえのない生命が失われる可能性を考えますと、政府・国民挙げて、できることから取り組んでいく必要があります。
教育現場の改善のみならず、子どもの心の問題を扱える医師の配置、うつ病対策、自殺サイトなど有害情報への取り組み、自殺未遂者のケアなど、やるべきことは山のように有ります。
内閣としても総力を結集して自殺対策に取り組みますが、国民の皆様にも、折に触れ、生を受けたことの重みと有り難さを子どもたちに語りかけていただきますよう、お願い申し上げます。