総務省の「働き方改革」の悩み
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臨時国会召集を明日に控えて、8月上旬から今まで方針を決めかねて悩んでいたことがあります。
すごく些細なことなので、笑われてしまうかもしれませんが…。
私の総務大臣就任は一昨年の9月3日でしたが、就任以降2年余り、いわゆる「早朝レク」というものを受けたことがありませんでした。
総務省職員や自分の「ワークライフバランス」の観点から、就任早々に廃止したのです。
「早朝レク」というのは、国会答弁の準備をする為に、委員会開始前の早朝4時台~8時台に、大臣が課長や局長から答弁書の内容について説明を受けることです。
長年の慣習として実施してきた役所が多いのだろうと思いますが、国会会期中は、多くの官僚が深夜まで答弁資料を作成し、課長や局長が内容をチェックしてくれていますから、その上に「早朝レク」まで行うと、彼らの睡眠時間が殆ど無くなってしまいます。
入浴や着替えの為に短時間は自宅に戻れたとしても、始発電車運行前の時間帯にタクシーで登庁することになると、税金の無駄遣いにもなってしまいます。
特に総務省の場合は所掌分野の範囲が広いことから、国会会期中には、殆ど毎日連続で長時間の委員会答弁が続く時期も多く、皆が徹夜に近い状態を続けると、健康を損ねたり行政執行上のミスが発生したりというリスクも考えられます。
そこで、委員会前夜22時頃までに完成した答弁書は、秘書官に届けてもらって、家事などの合間に前夜中に目を通すこととし、深夜になっても作成を続けなければならない残りの答弁書については、出来上がった時点で自宅にファックス送信しておいてもらって早起きして読むか、当日に委員会室に向かう大臣車に積んでもらうことにしていました。
ところが、この8月3日の内閣改造で再留任することとなった直前のタイミングで、私のやり方が必ずしも正しいものではなかったことに気付く機会がありました。
複数の課長が、「高市大臣になってから『早朝レク』が廃止されたので、課長が直接大臣に説明をする機会が無くなった」と嘆いているということでした。
そう言われてみれば、確かに、地方税財政や統計結果や各種施策についての説明や私の指示を求める為に職員が大臣室に来る場合、局長、課長、課長補佐など多数が同席してはいますが、私に説明をするのは専ら局長でした。
私の細かい質問に局長が答えにくい時に限って課長が説明をしてくれることはありましたが、なかなか個別に課長たちと話し合う機会は持てていなかったことに気付きました。
結果的に、私の対応は「小さな親切、大きなお世話」になってしまっていて、そのことに2年間も気付かなかったのです。
すぐに反省をして、8月以降は、基本的に局長は同席させないこととし、大臣室に入るのは主に課長ということに改善しました。
それでも、夏場は、人事案や財務省と折衝中の予算案など、情報漏れを防止する観点から事務次官や局長が単独で入らざるを得ない案件が多く、臨時国会提出予定法案の概要説明にしても、分野が限定的ですから、「早朝レク」の廃止を嘆いている課長たちには未だ会えていないようです。
とりあえず、明日からの臨時国会では、大臣への「早朝レク」を希望する課に限って、試験的に「早朝レク」を再開してみることとしました。
国会召集ギリギリまで「早朝レク」再開の是非について迷いがあったのは、課長が早朝出勤するとなると、深夜まで作業をした若手職員も含めて課の全員が付き合いで早朝出勤をすることになりかねず、健康を損ねるのではないかという心配からでした。
この点は、私への説明を希望する課長1人だけの出勤しか認めないことに限定したいと思います。
ただ、私が早朝に登庁した場合に、大臣室の職員9名とSPさん、大臣車のドライバーさんも早朝出勤をすることになるのでしょうから、やはり健康面が心配です。皆が使うタクシー代も勿体ないしなぁ。
総務省は、他府省に先駆けて「働き方改革」を進めている役所だと自信を持っており、「テレワーク」の利用率も霞が関ではナンバー・ワンです。
平成27年12月末までに、管理職を含む1270人(本省内部部局職員の約1/2。平成26年度の3.6倍)がテレワークを実施しています。
職員が生産性の高い仕事をする為にも、可能な限り睡眠時間や家族との時間を確保していただきたいと願っているのですが、他方で、新規政策構築や施策実施の第一線で主力となってくれている課長たちのモチベーションも大切です。
「働き方改革」が大きなテーマとなっている中で、悩ましいことですが、1人でも多くの職員が生き生きと働ける道を探りたいと思います。