新エネルギーの普及が進まない理由
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昨年11月、IEA(国際エネルギー機関)は、「世界の石油生産のピークは、2006年だった」と発表しました。
主要資源の可採年数は、石油が42年、天然ガスが60年、石炭が133年、天然ウランが100年だとされています(出典:BP統計2008)。
日本はメタンハイドレートの開発に向けた技術革新を急ぐとともに、早期に新エネルギー発電技術の向上や普及のための環境作りに励む必要があることは、言うまでもありません。
菅内閣が第2次補正予算を編成した後は、自民党エネルギー政策合同会議では、先ずは「新エネルギーの導入を強力に推進すること」と「スマートグリッド等を活用した低炭素コミュ二ティを構築すること」に主眼を置き、その技術的・法的課題や予算措置について精査していくつもりです。
例えば、地熱発電を推進するためには、「自然公園法」と「温泉法」の緩和が必要になります。
4月19日に、石破茂政調会長と甘利明エネルギー政策合同会議委員長と私の3人で、京都大学名誉教授である芦田譲先生(NPO法人 環境・エネルギー・農林業ネットワーク理事長)から、地熱発電のお話を伺いました。
地熱発電は、昼夜や季節による変動が殆ど無い安定電源(設備利用率70%)で、火山国である日本の地熱資源量は世界第3位だそうです。
そのポテンシャルは100万KWの原子力発電所約25基分に相当すると試算されています。
低温ならバイナリー発電、高温なら高温蒸気発電ができ、地中熱利用冷暖房システムにも活用できる多様な利用が可能な資源です。
また、地熱発電は、調査、掘削、発電所設置、タービン・発電機の製作・設置などの各過程で多くの雇用を生み出す事業でもあります。
しかも、地熱用蒸気タービンの世界シェアは、国内3社で3分の2を占めています。
国内開発によるノウハウを蓄積して、蒸気タービンだけではなく「システム全体」を売ることにしたら、収益性の高いビジネスが生まれるはずです。
ところが、過日に記しました通り、現状では発電電力量の0・3%を占めるに過ぎず、過去10年間の新規開発はゼロだということです。
地熱発電が普及しない理由は幾つかあるようですが、有望な地熱資源の82%が国立公園特別保護地区・特別地域内にあり、「自然公園法」の制約(自然景観保護)から有望なエリアの大半に手が出せないこと、一部の温泉事業者に「温泉法」を盾にした強硬な反対があることが頭の痛い課題だそうです。
しかし、「公園内ゾーニング」(開発可能地域の見直し)を促進することや、街全体を「地熱特区」として法規制緩和やガイドラインの作成をすることなど、効果的な解決方法はあるはずです。
また、地下資源であることから開発リスクが高く、リードタイムが長い(約10年)ので、初期投資額の工面も大きな課題です。
芦田先生によると、民主党の事業仕分けで国の支援予算が削減されたこともダメージだったそうです。
調査段階での国の財政支援を充実させることが必要だと思います。
さて、「再生可能エネルギー」から大規模水力を除いたいわゆる「新エネルギー」(地熱、太陽光、風力、廃棄物・バイオマス、小水力)が電源構成の中で存在感を示せるだけの供給力を確保できる状況ができたなら、存分に活用するためのインフラ整備と技術革新が必要になります。
例えば、大規模な分散型エネルギーシステムが導入された「スマート・シティ」を作っていこうと思えば、送電網や配電の自動化(送電ネットワークの状態監視、自動制御システム)とともに、「情報セキュリティ技術の高度化」や「多頻度放充電に耐える高度な蓄電システムの開発」が不可欠です。
腰を据えて長期的な取組みを続行しなければなりませんが、夢を持って頑張りたい仕事です。
個人的には、「宇宙太陽光発電技術」の確立を見るまで長生きしたいなぁ…などと考えております。
まずは、来年度の予算編成に於いては、民主党政権が政権交代後に廃止・削減してしまわれた「新エネ・省エネ関係予算」の復活を求めます。