「地下原発」の検討再開
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私の手元に、1982年(昭和57年)1月11日の読売新聞夕刊の記事があります。
「原発『地下方式』推進を。検討委が報告書提出」という大見出しが1面トップを飾っています。
当時の資源エネルギー庁長官の私的諮問機関だった「地下立地方式原子力発電所検討委員会」が長官に報告書を提出し、その報告書の結論が「山腹に空洞を掘って施設をすっぽり埋め込む地下立地方式の原子力発電所は、安全、採算面で問題なし」というものだった旨を報じる記事でした。
旧通商産業省・資源エネルギー庁では、1975年(昭和50年)に「原子力地下立地検討会」を、1977年(昭和52年)には「地下式原子力発電所方式研究委員会」を立ち上げ、地下式原子力発電所の研究に着手しました。
1982年(昭和57年)には、資源エネルギー庁が「地下式原子力発電所建設のための施設基準・安全基準」の作成に乗り出した旨が、1月17日の日本経済新聞朝刊で報じられています。
同年3月の「電力土木」誌には、通商産業省の官僚が地下式原子力発電所を「今後の有力な新立地技術として期待されるものである」と結論付けた論文が掲載されています。
そして、1990年(平成2年)8月15日の毎日新聞朝刊は、「『地下原発』を探る 関西電力」という大見出しで、「関西電力が、原子力発電所の地下立地方式について、近く複数地点を選んで建設可能性調査を開始することになった」と報じていました。
2002年(平成14年)までの間に、電力中央研究所、土木学会、原子力発電技術機構(NUPEC)などが次々に地下式原子力発電所の技術的研究を行い、多くの報告書を刊行しました。
これらの文献には、「天災やテロに対する安全性」、「廃炉時の経済性」、「立地の選択幅の拡大と送電距離の短縮」、「国土の有効利用」、「景観保全」など、地下式原子力発電所のメリットが報告されています。
1991年(平成3年)には、自民党内にも「地下原子力発電所研究議員懇談会」(後藤田正晴顧問・平沼赳夫会長)が発足し、熱心に活動を展開していたと聞いています。
しかし、当時の関係者によると、東京電力から「地上に設置するよりも建設コストが高い」、「原発は危険だから地下に作るのだと思われかねない」という理由で強硬な反対があり、地下式原子力発電所の検討を続けることが困難な状況に追い込まれたということでした。
海外では地下式原子力発電所は珍しいものではなく、これまでに多くの「核兵器用原子炉」や「実験炉」、「原子力発電炉」が地下に作られました。
海外の研究者による論文では、「ハイテク兵器による攻撃や内部での事故に対する強靭性」( C・W・Forsberg、T・Kress )や「放射性物質の流出が防ぎやすいこと」( T・Wildi )を評価するものが見受けられました。
来週火曜日(5月31日)に、主人(山本拓衆議院議員)が事務局を担当して、新たに超党派の「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」が発足し、長く中断していた検討作業が再開される予定です。
現在の電源構成比率で29%を占める原子力発電による発電量を、今すぐに新エネルギー(現在の電源構成比率は1%)で代替することは技術的にも不可能ですし、火力発電の増強には、燃料調達の不安定性や地球環境悪化などの課題があります。
当面は安全対策強化を前提に原子力発電を続行するということであるならば、いわゆる「地下原発」も、有力な「選択肢」の1つとして再検討してみる価値があると思っています。