菅民主党との「大連立」は有り得ない
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主人は「そのうち大連立になると思うよ」と言うのですが、私は「有り得ないでしょ」と、夫婦間で意見が食い違っています。
少なくとも、朝鮮半島情勢が緊迫する中でも社民党と組もうとする菅政権とは、絶対に連立などできません。
現在の日本は大きな安全保障上の危機に直面していますが、政権交代によって普天間基地移設計画は泥沼化し、本来ならば今年の秋に着工して2014年には完成する予定で進めていた基地移設の工程は完全に崩壊しました。
社民党や一部の民主党議員が主張するように米軍基地を国外に移設したならば、喜ぶのは中国と北朝鮮です。
特に北朝鮮は、2015年に韓国から米韓連合司令部が無くなることを、首を長くして待っているのですから。
また、菅政権は、武器輸出3原則の見直しについても、先送りしました。
菅政権が社民党と力を合わせて在日米軍を追い出そうとするのであれば、日本独自で防衛できるだけの体制を整えるのが筋だと思いますが、このままでは日本はF35の共同開発にも参加できません。
国民の生命よりも「政権の延命」を優先しようとする菅首相には、絶望するばかりの昨今です。
仮に自民党の執行部が変な気を起こして「大連立」などに応じてしまったなら、政権を共有することによって「政策の結果」への責任が生じてしまいます。
成果が上がった政策は「民主党のお陰」と喧伝され、失敗した政策の責任だけを共有させられることは、目に見えています。
自民党と民主党では、外交・防衛・経済など重要政策の骨格そのものに大きな違いがあります。
また、税制を見ても、民主党の小沢一郎氏は「消費税率を上げない」と主張しておられますから、民主党内の路線対立が解消されない限り、他党との連立に向けた協議もできないでしょう。
前原誠司外務大臣が野党時代に、自民党との大連立については「99.9%ない」と主張しておられましたが、当然の考え方だったと思います。
テレビの討論番組や新聞記事を見ると、「大連立をするべきだ」と主張しておられる識者も多くおられます。
彼らが大連立のメリットとして挙げておられるのは、概ね次の3点です。
第1に、増税や憲法改正など「不人気な政策や困難な政策が実施できるようになる」という理由です。
ドイツのメルケル政権が「基本法」を改正し、対米関係を改善した例が引用されます。
第2に、「国会手続きがスピードアップする」という理由です。
8割から9割の議員が与党になってしまえば、どの法案についても国会審議を行う必要性すら無くなってしまいます。
第3に、「野党にも情報が入り、政権担当能力がつく」という理由です。
これは、2007年(福田政権時)の「大連立騒動」の時に、当時の小沢一郎民主党代表も主張しておられました。
小沢代表は、民主党議員には「政権担当能力が無い」と発言し、政権に参加して能力を磨くことのメリットを訴えていました。
ドイツに於ける1966年の大連立の時には、「万年野党」と言われた社民党が与党に参加することによって現実路線に転じ、東方政策など大きな仕事を成し遂げたと言われます。
しかし、2007年当時と違うのは、既に自民党も民主党も与党経験を持ち、両党ともに「ねじれ国会の苦しみ」を十分に理解していることです。
野党転落後の自民党は、民主党政権が提案した政府提出法案であっても、良い政策なら賛成をしていますし、議員立法についても、互いに話し合って内容を修正して共同提案しています。
民主党側からすると、自民党に対して政策協力を求める働きかけはしやすいはずで、何も連立まで組まなくても、個別の政策協議で十分だと思います。
国会審議のスピードアップについても、自民党は、野党時代の民主党が行っていたような酷い揚げ足取りや審議妨害はしていません。
多くのマスコミは、おとなし過ぎる野党である自民党に対して、「与党ボケだ」「もっと闘え」と批判をしてきました。
マスコミで大連立賛成派の識者が主張しておられる「憲法改正」についても、民主党さえ本気になれば、十分に実現可能です。
自民党は、既に何年も前に、党としての「日本国憲法改正案」を全条文書き上げているのですから。
ただし、私は、民主党政権が実施している「給付型の大規模バラマキ政策」の財源として、消費税を大増税したり、税収を超える額の国債を乱発し続けたり…という手法には、協力できません。
大連立の最大のデメリットは、殆どの国会議員が与党になることから、国の未来を考えない「妥協政策」だらけになってしまうことだろうと思います。
今後、菅政権が国会対策上の困難を感じた場合には、最も筋が通る方法は、衆議院を解散し、国民の力によって民主党単独で3分の2の議席獲得を目指すことでしょう。