予算委員会報告①:朝鮮学校無償化
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今日は、去る11月9日の予算委員会に於ける「朝鮮学校無償化」に関する質疑応答概略と、本問題についての問題意識を書きます。
【高市早苗】
朝鮮学校を「高等学校無償化」の対象とするということで、先週金曜日に、文部科学大臣がその審査基準を公表された。教育内容は問わないというものだった。
この部分について、私の地元(奈良県)でも、怒っている方が随分おられた。
民主党議員の事務所にも文句の電話がかかっているようで、民主党では、この問題の「言いわけマニュアル」を配付されたようだ。
菅総理に伺う。朝鮮学校の教育内容について様々な問題があるということは、この予算委員会でも縷々提起されてきた。菅総理は、朝鮮学校の教育内容について、具体的にどういったところが問題だとお考えか。
【髙木文部科学大臣】
御指摘の点について、私の権限、判断において、去る11月5日に、「指定に関する基準」、手続を決定した。今後、朝鮮学校を指定するかどうか、審査を行って決めることになる。
そもそも、この朝鮮学校の採用については、多くの国民の意見があることは承知している。私どもは、検討委員会を設けて、8月30日にその報告を受けた。この報告を受けて、国会での議論あるいは民主党内の議論、これを踏まえて、総合的に私が決定した。
具体的に教育内容について問わないのはなぜか。あくまでも受給権者は生徒にあり、生徒の学びを保障するということが重要なテーマだ。
第1に、既に4月30日に指定した外国人学校についても、本国政府や国際的な評価機関の認定という制度的・客観的な基準により指定した。
第2に、専修学校高等課程に係る設置基準においても、各教科等に関する具体的な教育内容について基準を設けていないこと。
第3に、私立である専修学校、各種学校の自主性を尊重するために、私立学校法の第64条の趣旨を尊重すべきとの指摘等があるから、私たちはこのように決めた。
ただし、指定に際しては、留意すべき事項として、多くの指摘もあるので、我々は、具体的な教育内容について懸念される事態がある場合には、各学校に伝えて改善を促すことに力を注いでいきたい。
【高市早苗】
委員長、私は、「朝鮮学校で行われている教育内容のどこが問題か、具体的にお答え下さい」と、総理に伺った。別に「基準」のことを聞いてはいない。
教育内容について、どこが具体的に問題か。
この予算委員会で柳田大臣が答弁された。具体的な事例を挙げて。総理もおられたはずだ。
【菅内閣総理大臣】
朝鮮人学校の教育内容について、色々な指摘があることは承知をしている。
それは、我が国のいわゆる認定されている教科書ではない教科書を使っておられるところもあるし、その中身において、例えば、いろいろ歴史的な問題でも違う認識が述べられていて、そういうものが教育の中身に入っているなど、そういう問題点の指摘があることはよく承知をしている。
【高市早苗】
総理は、この予算委員会に出られても、他の大臣の答弁をよくお聞きじゃなかったということがよくわかった。
柳田大臣は、「大韓航空機爆破事件」の例を挙げられた。
朝鮮学校で教えているのは、「大韓航空機爆破事件は、韓国のでっち上げだ」、「拉致問題は、日本当局が極大化している」など。明らかに日本の国益に合わない。
福祉とは違う。日本の国というのは、日本に住んでおられる外国人にも随分手厚く福祉をしている。日本国民の納税者の理解と協力を得て。2月にも、前総理大臣に言った。
例えば、東京都区内で外国人の標準3人世帯が生活保護を申請したら、月額約16万7000円の生活扶助基準額だ。
母と幼児2人の母子家庭なら、約18万3000円。
難民認定を受けた外国人一家なら、御夫婦と子供2人(中学生・小学生)で、約21万7000円。医療費も実費支給だ。
日本に来て住んでおられる外国人の人権というものも十分に守っている。
ただ、福祉と教育は違う。
教育は、「未来を担う子供たちをどういう人材として育てるのか」、「そのために何を教えていったらいいのか」という、ある意味では日本の国策でもある。
文部科学大臣には、先週の金曜日に発表された「審査基準」を再検討して撤回していただきたい。
仮に朝鮮学校を認定するのであれば、「教育内容の是正」と「配ったお金が本当に授業料に使われているのかどうかのチェックを徹底する」ことも含めて、審査基準の見直しをお願いする。
総理大臣には、拉致被害者の御家族がどんな思いで国会で語られ、この問題に反対してこられたか、その思いにもぜひとも心を寄せていただきたい。
【本問題についての考え方】
「朝鮮学校無償化」については、衆議院文部科学委員会で詳細な議論が行われるであろうことから、9日の予算委員会質問では、冒頭に「菅総理ご自身の考え方」を伺うだけに止めました。
朝鮮学校への高校授業料無償化制度の適用について、髙木文部科学大臣は、11月5日、「審査の際に、教育内容を問わない」とする「審査基準(規程)」を公表しました。
この「審査基準(規程)」の原案となったのは、文部科学省に設置された有識者による「検討会議」がまとめた「判断基準」です。
非公開の密室で審議が行われたため、国民が結論の公平性や妥当性を検証することができなかったことも、極めて重大な問題です。
結論が公正・妥当でなければ、その後の手続に進むべきではなく、自民党は何度も議事録などの公開を求めましたが、政府は一切、その求めに応じようとしませんでした。
11月5日にようやく「議事要旨」が公開されましたが、未だ完全な議事録や委員は公開されていません。
議事要旨を見ますと、第1回の会議で、鈴木文部科学副大臣が、「外国人学校の指定について、外交上の配慮などにより判断すべきものではなく、教育上の観点から客観的に判断すべきものであるということが法案審議の過程で政府統一見解として示されていること」を述べています。
そもそも文部科学省が、「教育内容については基準としない」という前提条件を課したうえで「判断基準」作りを開始した事を示しています。
「教育内容を問わない」という結論には、多くの国民が疑問を抱いているのですから、「何故、そのような結論になったのか」について公開する事は、文部科学省の国民に対する義務でもありましょう。
あくまでも公開しないということになりますと、「北朝鮮に配慮しているのではないか」との、疑念が生じることになります(尖閣事件ビデオと同様です)。
さらに、「検討会議」が、引き続き、朝鮮学校を無償化するための審査を行うとのことですから、これも「密室」で手続が行われることになります。
朝鮮学校では、特に歴史教育において、「客観的な事実に基づく朝鮮の歴史」ではなく、「金日成・金正日の家系史」が教育されており、到底、「歴史教育」あるいは「民族教育」と呼べる内容ではありません。
「大韓航空機爆破事件は韓国のでっち上げ」、「拉致問題は、日本当局が極大化した」など、虚偽・捏造の歴史も教育されています。
文部科学省の「検討会議」の議事要旨を見ますと、「教育内容を問わない」という「判断基準」を決定した会議の当日(8月19日)に、『現代朝鮮歴史』の日本語訳版を回覧しています。
これでは教育内容について問題点があっても、結果に反映する事は出来ません。
9日の予算委員会では、文部科学大臣が、「私学の自主性」を重んじる私立学校法第64条の趣旨を尊重すべきという趣旨の答弁をされていましたが、私学の自主性を重んじることは、朝鮮学校が行っている「独裁体制を支えるための虚偽・捏造の教育」を認めることとは異なるはずです。
各種学校(外国人学校)も、わが国の「学校教育法」に基づいて設置されるものである以上、「教育基本法」の理念に従うべきです。
教育基本法第2条は、「教育の目的」として、「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」と規定しています。
教育基本法に反する教育内容があることを認識しながら、あの様な答弁を行うことは、教育行政のトップとして重大な責任放棄です。
柳田拉致担当大臣も、10月13日の衆議院予算委員会では、朝鮮学校の教育内容に対する懸念を示されました。
東副大臣は、10月21日の参議院文教科学委員会で、「政府といたしまして、民主党としての意見が示された段階で、必要ならば拉致問題担当大臣から文部科学大臣に意見を言ってもらいたいと私は考えております」と答弁しておられます。
11月4日の衆議院拉致問題特別委員会では、「北朝鮮による拉致被害者家族会連絡会」の飯塚繁雄代表、横田滋前代表、増元照明事務局長、「朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」の西岡力会長、「特定失踪者問題調査会」の荒木和博代表から、「教育内容を問わずに朝鮮学校を無償化する事」に対する強い懸念が示されました。
柳田拉致担当大臣は、これらの御意見について、髙木文部科学大臣に伝えて下さったのでしょうか。
また、文部科学省の笠大臣政務官も、10月21日の参議院文教科学委員会では、「拉致問題に対する記述について、例えば、『日本当局は拉致問題を極大化し、反共和国、反総連、反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げることによって、日本社会には極端な民族排他主義的な雰囲気が作り出されていった』というような記述については、私は政治家としてこれはおかしいというふうに思っております。そうしたことも含めて、しっかりこれからまた大臣と一緒にこうした声にも、どういうふうな形で我々がこたえていくことができるのか、これは慎重に検討していかなければならないというふうに思っております」と答弁しておられます。
ところが、10月27日の衆議院文部科学委員会では、笠大臣政務官の答弁は「基準の中にそのこと(教育内容の是正)を具体的に盛り込むかどうか、盛り込むことができるのかどうか、その点は慎重に今検討している」と後退。
「政治主導」を喧伝している民主党政権ですのに、あまりにも不誠実な政務3役の姿勢に呆れています。
また、「国外の日本人学校に通っている高校生については、無償化の対象にならない」という問題もあります。
「我が国の法律が及ばない海外での学習活動については、支援の対象外」という理由だそうですが、朝鮮学校を無償化の対象とすべきかどうかを検討するために、「検討会議」を設け、新たな省令まで制定するという対応と比べて、国外在住の日本人高校生に対しては、余りにも冷淡です。
「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の機関誌『光射せ』第5号には、同会が入手した朝鮮総連の昨年11月の内部文書が掲載されています。
そこには、「民主党をはじめ、与野党の有力人士と国会議員との人脈関係を再構築することに主力を置きながら、彼らを親朝勢力にくみこむこと」、「『高等学校授業料無償化』の施策が、在日同胞たちにもかならず適用されるよう運動を行う」、「衆参文部科学委員会所属の委員と日教組出身の国会議員を対象化(20名以上)して、10月に集中的に要請運動を遂行する」、「『高等学校授業料無償化』施策適用のいかんを把握することにもとづいて、11月に文部科学省と与党の国会議員に対する要請運動を再開する」、「各地方につくられた『朝鮮学校を支援する会』のメンバーが、かかわりのある国会議員たちや日教組幹部たちとの活動を11月にうまくやるようにする」などの活動方針が記載されています。
果たして民主党政権は、日本国民と北朝鮮人民のどちらを向いて仕事をしているのでしょうか。