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基本法が目指す国家公務員像

更新日:

 先般の衆議院内閣委員会における「国家公務員制度改革基本法案」の審議の中では、「目指すべき国家公務員像」についての議論がありました。

 自民党の大塚拓委員が、官僚が自分の勤務する府省を「我が社」と呼んでいることについて、「国家公務員が、『我が社』というふうに愛情をもって呼ぶべき対象は、個々の省ではなく、日本株式会社でなくてはならない」と指摘されました。

 また、自民党の土井亨委員と遠藤宣彦委員、公明党の田端正広委員からは、国家公務員には「公僕」つまり、「公衆の奉仕者」としての意識を持って欲しいというご指摘があった。
 渡辺大臣からは、日本国憲法第15条と国家公務員法96条の既定から、国家公務員は「国民全体の奉仕者」であるとの答弁がありました。

 いずれのご意見にも賛成です。

 私自身は、若い頃に、松下幸之助氏から、「政治は国家経営である」と教わりました。
国民は「株主」、国会議員は「株主代表」、国会は「株主総会」の場と考えるべきだということも・・。
 そうすると、内閣総理大臣は「日本国株式会社の社長」、閣僚は「取締役」、国家公務員は「社員」と考えてもよいでしょう。

 このように例えてみると、日本国株式会社の取締役会である閣僚には、閣内で十分議論を尽くした上で、統一した方針を株主総会たる国会に示す責務があることが分かります。
民間の株主総会で、社長と他の役員が違うことを言ったら、大変なことになりますから。国会の場において「閣内不一致」が許されないとされるのは、当然のことでしょう。
 また、社員である国家公務員も、株主総会である国会に対しては、社長や取締役の方針
と整合性のある説明・行動をしなければなりません。

 選挙で国民の負託を受けた国会議員は、国民の代表者として「最も重い」と言われる首班指名の一票を行使して内閣総理大臣を選出し、内閣を作ります。
 ですから、国民に忠誠を誓うべき国家公務員は、政権党がどの党になろうが、時の内閣が示した国家経営理念を実現するために必要な職務を、総理大臣や閣僚の指示に忠実に従って行うべきなのです。

 そこで、「国家公務員が、省益ではなく、国益・国民益のために働ける人事システムの構築」と、「総理大臣や閣僚がマネジメント能力を発揮できる制度の構築」が必要となるわけです。
 まさにこの2点が、この度の国家公務員制度改革基本法案が目指すものであったと思います。

 修正前の政府案では、国家公務員総合職試験合格者の各府省への配属を「内閣人事庁」に一元化し、総理や閣僚による幹部人事に際しても、内閣人事庁が案を作成し、判断材料を提供することとし、省益優先体質や仲間内人事を改善することを目指していました。
 
 渡辺大臣は、5月14日の内閣委員会答弁で、「これまで、各省大臣の人事権と称して、実は事務方の仲間内人事権が発揮されてきたという現実がある」、「大臣のマネジメント能力を一番強く発揮できるのが、人事権の行使だ」と答弁されました。

 渡辺大臣の思いは、痛い程よく分かりました。
現在は、各府省の幹部人事において、「たすきがけ人事」や「各省庁のOB会による幹部
人事への介入」が、閣僚の人事権を阻害するものとして立ちはだかっています。

 例えば、国土交通省は、旧建設省出身者と旧運輸省出身者が混在する役所ですし、厚生労働省は、旧厚生省と旧労働省の出身者が混在しています。
省庁再編前の出身府省(「本籍地」と呼ばれている)をベースに交互にポストを取るという、いわゆる「たすきがけ人事」と呼ばれる方法で人事が行われている幹部ポストは、政府内に相当数あると思います。

 私自身も、閣僚在任中に、ある幹部ポストについて、「たすきがけ」の順番に拘らず、専門性や経験をもとに適材適所で人事をした方がよいと考えたことがありましたが、事務方とは長期間平行線の状態が続きました。本籍地のOB会が納得しないという話も聴きました。
 内閣府の場合は、法律上、内閣府の長が総理大臣であり、特命担当大臣に最終的な人事決定権はありませんでしたので、他省庁とは事情が違ったと思いますが、渡辺大臣が「大臣のマネジメント能力を一番強く発揮できるのが人事権の行使」と主張された理由は十分に理解できました。

 結局、民主党との修正協議の中で、「内閣人事庁設置」は見送られ、内閣官房に「内閣人事局」を置くこととなりました。
 
 基本法の目的を達成するには、この内閣人事局の独立性を確保することが肝心です。
 人事局の職員になる方々の本籍地意識が強いと、たすきがけやOBの介入は排除できま
せん。
民主党の細野豪志委員が、原案を審議している時に、「内閣人事庁へ行く場合には、片道切符にすべき」という提案をされていましたが、内閣人事局についても、同じことが言えると思います。

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