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衆知を集めるリーダー

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 郵政民営化を巡って自民党議員との対立が伝えられる小泉総理ですが、記者から「政権を長続きさせる方法は?」と尋ねられて、「新聞を読まない。それから、与党の言うことを聞かない」と答えられたとか・・。
 上記はジャーナリストの方が発行しておられるレポートで読んだことですので、総理のご発言のニュアンスや真意は正確には分かりませんが、私はちょっぴり違和感を覚えてしまいました。「強いリーダー」を自任されてのご発言なのかもしれませんが、私が期待するリーダー像とは違っていました。

 松下幸之助氏の下で学んでいた頃、「衆知を集める」ことの大切さを叩き込まれました。松下氏は、「指導者の考え、判断は、多くの人に影響を及ぼすから、そこに間違いが有れば、そのマイナスは多くの人に及んでしまう」として、リーダーが適切妥当な判断を下す為には、多くの人の知恵、「衆知」を集めることが必要だと説かれました。
 松下氏ご本人が、実に「聞き上手」でした。大学卒業間もない若者の話にも、何度も頷きながら、真剣な表情で耳を傾けて下さいました。こちらの勉強不足に気付かれた場合にも、叱るのではなく、「君、1つ教えて欲しいんやけどなあ・・」と質問するような言い回しで、更に研究を深めるべき箇所を示唆されるのです。「私のような若輩者の話を、こんなに一生懸命聞いて下さる。次はもっと勉強してからお目にかかるぞ」と奮起したものでした。 部下がこのように考えるならば、リーダーには自然に質の高い情報が多く集まることになるわけです。
 米国GE前社長のジャック・ウェルチ氏も、「傲慢と自信の違いを知る事。傲慢な人は他人の言葉に耳を傾けない。自信の有る人は異論、異見を歓迎し、素直に耳を傾けるだけの勇気を持っている」と指摘されました。
 2003年度版「中小企業白書」にも、企業の意思決定に際し、「社長一人で決定する企業」よりも、「利害関係者が納得する結果がでるまで意見調整する企業」の方が成長しているとのデータが掲載されていました。後者の企業でも、最終的には社長が決断を下しているのですが、方針決定過程に参加させることで「自分の会社意識」が高まり、実施段階で力のベクトルが揃う効果が有るようです。

 国家経営者に求められるリーダーシップも「独断」ではないのだと思います。
 特に過半数の国会議員の賛同なくして1本の法律改正もままならない仕組みにあって、総理は、衆知を集めてベストな政策を構築する姿勢を見せるべきでしょう。もちろん最後は自ら決断を下せばよいのですが、丁寧な議論の過程で、納税者にも政府の政策決定の根拠が明確に見えるわけです。
 「明確な政治理念を打ち出し、精力的に反対者を説得しながら、ぐいぐいと政治家や国民を引っ張っていく強いリーダー像」は、うまくいけば確かにカッコイイのですが、「政治は結果」ですから、最終的には反対者も納税者も十分な理解をした上で政策施行に協力できる体勢を作り出す努力は怠っていただきたくないな・・と望んでいます。

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