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「主婦」という言葉は女性差別か?

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 先週は、経済産業省関係の法案が3本も審議入りしたもんで、連日、衆参両院の経済産業委員会で答弁が続き、頭はウニ状態でした。


 その中の「中小企業挑戦支援法案」は、株式会社創設時に必要な1000万円の資本金を特例的に不要にするとしています。つまり、極端な話、資本金1円からでも株式会社を起こすことが出来、5年以内に1000万円に増やせばOKなのです。


 11月6日の委員会では、社民党の女性議員から「(新制度は)女性の起業家にとってどういうところが使い易いのか」という質問がありました。私から「この最低資本金特例によって、大きな自己資金を持ち合わせていないサラリーマンや主婦であっても、素晴らしいアイデアがあれば会社を起こせるようになる」ことを答弁致しましたところ、その女性議員から文句が出ました。

 彼女によると、主婦というのは夫の下に仕える意味なのだそうで、女性副大臣が答弁で「主婦」という差別的表現を使ったことが問題だとされたのです。

 私はびっくりして「ハウスワイフを主婦と表現することが差別用語だとは認識していない」旨を反論しました。

 むしろ、「主」という漢字は家の中心的存在としての女性を表すのだと思っていましたし、田中真紀子前外相が「主婦として」と前置きをしながらご自身の政策を語られるのを何時も羨ましい思いで聞いていた程でしたから。

 敢えて答弁の中で私が「主婦」という表現を使った理由も説明しました。既に継続的に事業経営をされてきた女性の場合は、これまでの収入を元手に新しい会社を起こすことが可能な場合もあるでしょうが、専業主婦で素晴らしいアイデアをお持ちの方には特にメリットがある制度であることを伝えたかったということです。


 結局、議論は平行線のまま委員会は終了しました。

 念の為、内閣府男女共同参画局に問い合せてみましたら、「『主婦』という言葉が差別用語だなんて議論は聞いたことがありませんよ。実際、男女共同参画白書(平成13年度男女共同参画社会の形成の状況に関する年次報告)の中でも『専業主婦』という言葉を使ってますから』という返事でした。

 その夜のNHKニュースで、女性キャスターが「主婦」という言葉を連発しておられるのを聞きながら、なんだか訳がわかんなくなっちゃった私でした。

 後日談ですが、村田経済産業委員長も、同じ女性議員から文句を言われたそうです。委員長が議員を「**君」と指名することがけしからんのだそうです。女性議員もいるので「**さん」と呼ぶべきだとの指摘だったそうです。

 私が衆議院文部科学委員長に就任した時に、やはり社民党の別の女性議員から「男性議員は『**君』、女性議員は『**さん』と指名してください」と申し入れを受け、これを拒否しました。私の場合は、1年間の委員長在任中、一貫して全員を『**君』で統一したのです(この件は、以前にこのページに善いた通りです)。

 参議院規則には明記されていますが、国会においては明治以来『君』は敬称とされてお
り、当選回数や男女の区別や年令に関わりなく「議員の平等」を示す意味で伝統的に使われてきた呼び方なのです。


 男女平等は、憲法でも保障された大切な価値ですが、伝統的な文言や世間で広く使われ馴染まれている言葉にまで目くじらをたてて「言葉狩り」のような按配になってくると、「しんどいなあ」という気がします。

 国会でも企業社会でも、現代の価値観についていけずに、明らかな「セクハラ発言」やら「女性蔑視』を当たり前にやらかしている男性も存在しますが、多くの男性の考え方は変わってきていると思います。国会議員でも、相変わらずとんでもない差別おやじは残存するものの、自分の妻の指摘で政策の間違いに気がついたとか、優秀な娘さんのサポートで議員立法をしたとかで、「昨今は女性の方が優秀だよなあ」としみじみおっしゃっている人も増えてきました。
 こういう過渡期に、女性側があまりに被害者意識を強く持って細かい指摘が行き過ぎることによって、ピリピリした緊張感の中で腫物に触るように女性に接していただいたり、女性を特別扱いしてゲタを履かせていただくことになっても、却ってこれは嬉しくないのであります(少なくとも私にとっては、そういう空気はしんどい)。


 その意味でホンネを言えば、経済産業省が力を入れている「女性経営者支援策」も、あまり長期に渡ってやるべき政策ではないと思っています。例えぱ、中小企業金融公庫や国民生活金融公庫に女性起業家には設備資金などを低利で貸し付ける制度を創設したり(既に創設後3年5カ月で7700件超の実績)、国民生活金融公庫の新劇業融資制度で女性向きの低利融資制度創設を検討していたり、といった事柄です。

 これらの制度でも適用は「高齢者と女性対象」と書かれたりしていて、女性を「社会的弱者」と決め付けている発想がイマイチ気に食わないのです。アメリカがアファーマティブ・アクションで大学入学枠や企業入社枠で「女性と黒人優遇」を行なって、80年代の不景気で失業した白人男性から「逆差別だ!」と猛烈な抗議の声が上がったことを思い出してみると、日本でも、あまり女性優遇策が行き過ぎると、同様の論争が起こりかねません。


 まだ現実的には、有能な女性社員が取引先に営業に行って「女の子を寄越すなんて失礼だ」と言われたり、女性経営者が金融機関でお金を借りにくかったりといった残念な事態が発生していますから、経済産業省が女性支援策を充実させることが経済活性化につながっている一面も否定出来ないのでしょう。

 しかし、究極的には、女性であれ男性であれ、同じ土俵で勝負をして実績を上げていける環境作りの方が大切だと思います。同じ土俵に立って結果が伴うことで、女性の能力は初めて本当に評価されてくるものでしょう。政界でも同じで、私が「女性閣僚枠」だとか「クオータ制度」に反対している理由はここにあります。

 早いとこ、男女が変にピリピリ、ギスギスせずに、能力に応じて正当に評価をし合い、性別に関わりなく「機会平等」が保障される社会を創れればいいな、と思っています。

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