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海上自衛隊のインド洋からの撤収で損なわれる国益

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 今夏の参院選で大勝した民主党が「テロ特措法の延長には絶対反対」と決めていることから、インド洋に展開して補給支援活動に従事している海上自衛隊の一時撤収が確実視されています。
 
 戦闘海域ではないインド洋上での補給支援活動は、部隊の安全確保という点では比較的リスクが低い上に、国際社会からの評価が高かった活動だけに、残念でなりません。

 民主党も、「テロとの闘い」の必要性は認めておられて、現在の海上自衛隊による補給支援活動には反対するものの、別の手段で対応しようという方針のようです。
 しかし、民主党の小沢代表が主張されている「国際治安支援部隊(ISAF)」への参加については、かなり慎重な議論が必要だと思います。

 アフガニスタン国内への陸上自衛隊の派遣ということになるのでしょうが、現在の海上での補給活動と比較すると、危険な場所であるのは否めません。
 カナダは、国際治安部隊(ISAF)に2500人を派遣しましたが、既に70名もの死亡者が出ていると聞きます。
 どうしても陸上に派遣するならば、武器使用基準の見直しも含めて自衛隊員が十分に身を守りながら活動できる状況を作らないと、自衛隊員が気の毒であるばかりではなく他国の要員にも迷惑が及ぶ可能性があると思うのです。

 先日、あるテレビ討論の席上で、自衛隊員の安全を懸念した私に対して批判が浴びせられました。
 きっと民主党側は「いくら危険であっても、やるべきことは毅然とやる。国際治安部隊は国連決議によるものであるから合法だ」という考え方なのかと拝察しますが、国連決議がオーソライズしている活動だとしても、国内的な適法性は担保されなければなりませんから、小沢代表案を国会で議論するとなると相当な時間を費やすことになります。
 
 そもそも現行のテロ特措法制定の時点では、「部隊の安全確保」と「集団的自衛権の非行使」が前提条件で、「武力行使の一体化を避ける『非戦闘地域』という概念を導入した後方支援活動」「捜索救助活動」「民生支援活動」に限定され、「海上自衛隊による洋上補給支援」「航空自衛隊による日本国内における輸送支援」はできることとなったわけです。
 民主党は、イラク復興支援活動の議論でも、自衛隊が活動する地域を非戦闘地域とすることを批判しておられたと記憶していますが、果たしてアフガン国内を「非戦闘地域」とすることは可能なのでしょうか? 民主党内で議論は整理されるのでしょうか?

 もしも、小沢代表が言っておられる国際治安支援部隊(ISAF)への参加を、「陸上ではなく、空輸活動による支援」ということにするならば、現行のテロ特措法でも、アフガニスタンの同意さえあれば、「基本計画の変更」で実施可能ではあるようです。
 空輸支援は、米国からも早くから要請されていたものでしたが、テロ特措法制定時の検討において、「現行の武器使用基準の限界」とも相まって見送られた経緯があります。
 このように、小沢代表が言っておられる国際治安支援部隊(ISAF)への参加には、議論すべき課題が多く、いくら「民主党との話し合い重視」の福田内閣であっても、もろ手を挙げて賛成・・というわけにはいかないと思います。
 結局、海上自衛隊は撤収した上、陸上自衛隊の派遣を巡って新規立法の要否まで延々議論していては、日本のテロとの闘いは中断したままになってしまいます。

 私は、海上自衛隊による補給支援活動は、日本の国益に合致した良い手段だと思っています。
 海上阻止行動(OEF-MIO)は、多数の国家による共同作戦です。武器や麻薬の密輸、テロリストや資金の移動を海上で取り締る活動に対する補給支援は、そのまま日本人の為にもなります。
 原油の90%を中東に依存し、重量ベースで全貿易量の99%が海上輸送である島国・日本にとって、「シーレーン」をテロリストから守ることは重要な国益です。
 また、既に 日本人もテロリストの持つ武器の犠牲になっていることを考えると、国民の生命を守るという最も重要な国益にも合致します。

 産経新聞が、2004年4月にペルシャ湾バスラ沖で日本のタンカー「高鈴」がテロ攻撃に遭った際、護ってくれた多国籍軍の米軍兵など3名が死亡されたことを紹介する記事を掲載していました。
 日本の自衛隊が「戦闘海域」に展開できない為、常時ペルシャ湾内に40隻以上とされる日本関係タンカーは、他国の軍隊に護ってもらっているわけです。「安全海域とされるインド洋での活動まで他国に負担を付け回して良いのか」ということを読者に問いかける素晴らしい記事でした。

 インド洋から日本が撤収することは、国際社会のテロとの戦いにも大きな影響を及ぼしてしまいます。
 日本が派遣している補給艦は、海上阻止活動に参加する補給艦の4分の1に相当するわけですから、海上阻止行動参加国の日本に対する信頼は失われ、これまで日本が行ったアフガニスタン復興・民生支援の為の莫大な資金協力等の努力も無効となってしまう可能性があります。

 民主党議員や小沢代表は、海上自衛隊を撤収すべき理由を多く挙げておられます。

 第1に、「補給燃料の目的外使用疑惑」です。
 日本側は、テロ対策特措法に基づく補給であることを「交換公文」にし、補給の都度、「艦艇の運用計画を聴取」「海上阻止活動参加艦船であることを確認」「活動日数を勘案して給油量を決定」という段取りを踏んでいますから、法律を遵守する為にやるべきことをやっているのです。
 米国政府は「目的外使用は無い」としており、日本政府も更に調査中ではありますが、日本側に瑕疵は無く、大きく国益を損ねてまで撤収する理由にはならないと思います。

 第2に、「情報開示が足りない」「効果が上っていない」という理由も主張されています。
 日本政府は、これまでも、「補給回数」や「補給量」は公表しています。「補給ポイント」まで開示した場合、他国軍要員の安全に関わる可能性があるということで、情報が限定的であることは仕方がありません。
 また、効果が無いと言われますが、作戦参加国からの高い評価が、日本の国益にとっての最大の効果ではないでしょうか。

 第3に、「テロ特措法は、『対米追従法』である」という理由です。
 海上自衛隊による補給活動は、今では80%以上が米英以外の国の艦船対象になっていますし、海上阻止行動には、米国のイラク攻撃を批判した独・仏やイスラム教国のパキスタンも参加しているわけですから、決して「対米追従」の為に日本が補給支援をしているわけではありません。指揮権も米軍にはありません。

 政府と与党は、海上自衛隊による洋上補給支援活動が日本にとってのベストな選択だと考えています。
 反対をしておられる民主党からも責任ある実現可能な対案が示されることを期待するばかりですが、与党が参議院選挙で負けてしまったことの傷口の大きさを改めて痛感しています。

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