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予算委員会質疑報告①:世界文化遺産と韓国

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○根本委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。高市早苗君。

 

○高市委員 おはようございます。自由民主党政調会長の高市早苗でございます。

 今日から令和四年度予算案の審議が始まります。

 私は、国の究極の使命は、国民の皆様の生命と財産を守り抜くこと、領土、領海、領空、資源を守り抜くこと、そして国家の主権と名誉を守り抜くことだと考えております。これらの使命を果たす観点から、岸田内閣の基本的な姿勢と政策について順次伺います。

 感染症対策につきましては、重症者の数とお亡くなりになる方の数を極小化するということを最優先に、ワクチンや治療薬の十分な確保、治療薬の早期投与を可能にするシステムづくりなど、的確な措置を迅速に講じていただくことを強くお願い申し上げ、我が党の次の質疑者に託すことといたします。

 まずは、政調会長として、地方公共団体から伺っているお声をお伝えいたします。一月七日に、新潟県知事、佐渡市長を始めとする新潟県の皆様が政調会長室にお越しになり、佐渡の金山に関する御懸念を伺いました。

 昨年十二月二十八日、文化庁文化審議会の世界文化遺産部会により、今年度推薦することが適当と思われる世界文化遺産の候補物件として、佐渡の金山を選定する旨が答申されました。「全体として顕著な普遍的価値が認められ得る」など、選定理由も記載されていました。ところが、文化庁は同日、文化審議会による選定について、「推薦の決定ではなく、これを受け、今後、政府内で総合的な検討を行っていきます。」と報道発表しています。一月五日の官房長官記者会見で、総合的な検討というのは具体的にどういうことを検討されるのかという記者の御質問に対して、官房長官は、総合的な様々な状況、懸案事項、条件等を考えてと答えておられました。

 文化審議会の答申が出た十二月二十八日に、韓国外交部報道官が、韓国人強制労役被害の現場である佐渡鉱山の世界遺産登録を推進することについて非常に嘆かわしく思い、これを撤回することを求めると論評しました。

 佐渡の金山は、十七世紀における世界最大の金産地でした。海外の鉱山で機械化が進む中、鎖国下だった江戸時代の日本では、伝統的手工業による生産技術と、それに適した生産体制により、大規模で、極めて高品質の金生産を実現しておりました。江戸時代には、この独自性を持って発展した貴重な産業遺産でございまして、これは戦時中とは全く関係がございません。

 本件は文部科学省と外務省の共管事項だと伺いましたので、外務大臣にお尋ねいたしますが、佐渡の金山のユネスコへの推薦について、韓国外交部報道官の論評や、三月に大統領選挙を控える韓国への外交的配慮も、官房長官がおっしゃった懸案事項に該当するのでしょうか。

 

○林国務大臣 お答えいたします。

 文化審議会からの答申を受けまして、佐渡の金山の世界遺産登録を実現する上で何が最も効果的かという観点から、政府内で総合的な検討を行っております。韓国への外交的配慮といったものを行うことは全くないということでございます。

 なお、佐渡の金山に関する韓国側の独自の主張については、日本側としては全く受け入れられず、韓国側に強く申入れを行ったところでございます。また、韓国国内において事実に反する報道が多数なされていることは極めて遺憾であり、引き続き、我が国の立場を国際社会に説明をしてまいりたいと思っております。

 

○高市委員 早々に抗議を行っていただいたということで、感謝を申し上げます。

 仮に今年度の申請を見送った場合、日韓併合条約によって、同じ日本人として、戦時中、日本人と共に働き、国民徴用令に基づく旅費や賃金を受け取っていた朝鮮半島出身者について、誤ったメッセージを国際社会に発信することになりかねないと考えます。

 また、一九六五年の日韓国交正常化の際に締結された日韓請求権協定に明らかに違反して、日本製鉄や三菱重工業に対する慰謝料請求権を認めた二〇一八年の韓国大法院判決や、昨年の九月と十二月に、日本企業の差押資産に関して裁判所による特別現金化命令が出たということについても、日本政府の反論や抗議に対して国際社会の理解が得られにくくなるのではないかと懸念しております。

 我が国は、ユネスコに対して、主要国として貢献してきました。ユネスコの世界遺産の諸事業も、当初から日本が支援してきた活動の一つです。日本国政府は、江戸時代の貴重な産業遺産を誇りを持ってユネスコに推薦し、来年六月の決定まで一年四か月の期間を活用して、審議、決定を行うユネスコ世界遺産委員会の委員国に対して、江戸時代の伝統的手工業については韓国は当事者ではあり得ないということを積極的に説明するべきです。もしもそれもできないと諦めているのであれば、国家の名誉に関わる事態でございます。

 日本政府としてユネスコ世界遺産委員会に推薦するためには閣議了解が必要で、推薦期限は二月一日に迫っています。一年に一件しか申請できない貴重な機会ですから、必ず今年度に推薦を行うべきだと考えますが、外務大臣の御見解を伺います。

 

○林国務大臣 政府といたしましては、佐渡の金山に関する文化庁の文化審議会の答申を受け、佐渡の金山の文化遺産としての価値、今御指摘があったとおりでございますが、これに鑑み、是非登録を実現したいと考えておりまして、現在、文科省及び外務省において総合的な検討を行っているところでございます。

 政府といたしましては、登録の実現に向けて必要な諸準備を進める中で様々な事項を考慮しているわけでございますが、そうした考慮要素として、まず、他国から疑義が呈される場合に、佐渡の金山に関わる歴史や事実関係について証拠を挙げて反論を行うために十分な準備が整っているか、検討しているところでございます。

 また、我が国は、これまでユネスコ改革を主導し、昨年の四月には、世界の記憶について、関係国間で見解の相違がある案件は関係国間の対話で解決するまでは登録を進めないこととするための異議申立て制度を導入するなどしてまいりました。

 政府としては、佐渡の金山の登録実現に向けて、何が最も効果的かという観点から、以上の諸点を含め、総合的に検討を進めたいと考えております。

 

○高市委員 今外務大臣がおっしゃった世界の記憶に関するルールでございますが、これは世界文化遺産のルールとは別物でございます。

 江戸時代の金山について、韓国が当事者であり得ないということ、これは明確でございます。仮に今年度推薦しないとすると、来年度以降、佐渡の金山の推薦は更に困難になると思います。

 世界遺産一覧表への記載候補の審議決定を行うユネスコの世界遺産委員会は、締約国のうち二十一か国で構成され、日本も昨年十一月から二〇二五年秋までは委員国です。世界遺産委員会では委員国にのみ意思表示の権利があり、現在、韓国は委員国ではございません。世界遺産委員会の決定は、世界遺産条約第十三条第八項に基づき、三分の二以上の多数による議決、つまり、委員国十四か国の賛成で認められます。

 日本政府が今年二月一日までに推薦した場合、結果はともかく、世界遺産委員会における審議決定は、来年の夏、六月でございます。

 しかし、来年、二〇二三年秋に任期終了となる委員国が九か国ありまして、来年秋から二〇二七年秋までの任期の委員国に韓国が立候補する可能性が高いと外務省から伺っております。来年の推薦、そして再来年の審議決定となると、委員国として韓国が反対するという最悪の状況を招きます。その後の二〇二七年秋から二〇三一年までの任期には中国が委員国に立候補する可能性が高いことから、来年から八年間にわたって、韓国と中国による歴史戦に持ち込まれるということは容易に想像できます。

 新潟県知事は、結果にかかわらず、国際舞台で日本の主張を堂々と行ってほしいとおっしゃっています。一年間佐渡の金山の推薦を延期した場合、来年の文化庁文化審議会ではほかの遺産が選定される可能性もあり、二十年間以上も情熱を持って取り組んでこられた新潟県の方々が余りにも気の毒でございます。

 仮に今年度の推薦を見送るようなことになった場合、来年度までに確実に佐渡の金山を世界遺産一覧表に記載できるような環境をつくれる、その自信と戦略をお持ちなのか、外務大臣に伺います。

 

○林国務大臣 先ほど申し上げましたように、まだ今年度の推薦をしないということを決めたということではございません。今、先ほど申し上げたように、総合的な検討をしておるところでございます。

 したがって、我々としては、今申し上げたように、この検討を進めながら、どうやったらこの登録が実現できるのかということを考えながら、十分な準備をした上でということを検討をさせていただきたいと考えておるところでございます。

 

○高市委員 実現への可能性ということを一番大事に考えておられるということは先ほど御答弁をいただきました。

 ただ、二月一日に日本から推薦を出して、決定までには一年四か月あります。十分な準備を並行して進めながら、是非とも今年度の推薦をいただきますように、心からお願いを申し上げます。

 さて、朝鮮半島から内地に移入して働いておられた方々については、菅内閣時の二〇二一年四月二十七日に、「旧国家総動員法第四条の規定に基づく国民徴用令により徴用された朝鮮半島からの労働者の移入については、これらの法令により実施されたものであることが明確になるよう、「強制連行」又は「連行」ではなく「徴用」を用いることが適切である」、強制労働ニ関スル条約は、緊急の場合すなわち戦争の場合において強要される労務を包含しないものとされていることから、徴用による労務者については、同条約上の強制労働には該当しないという日本政府の考え方が閣議決定されております。

 岸田内閣においても、今後変更することなく、この閣議決定を踏襲されますでしょうか。岸田総理に伺います。

 

○岸田内閣総理大臣 御指摘の令和三年四月二十七日に閣議決定された答弁書に示された政府の立場、これは岸田内閣においても変わっておりません。

 

○高市委員 第二次安倍内閣では、安倍総理の指示で、内閣官房副長官補室による国際社会に向けた歴史広報が始まり、菅内閣もこれを引き継がれました。韓国や中国とのいわゆる歴史戦に係る摩擦対処は、本来は外務省の仕事ですが、外務省には相手との協調を大切にする役割もございます。摩擦対処の役割を副長官補室に移したことによって、外務省としては、主張すべきことは主張しながら、よい関係を築く外交がしやすくなったということも安倍内閣当時報じられておりました。

 事実関係に踏み込んだ体系的歴史認識の国際広報を継続、強化することは、日本の名誉と国益を守る上で必要だと考えます。岸田内閣でも内閣官房副長官補室は歴史認識の国際広報を担っておられるのか、総理に伺います。

 

○岸田内閣総理大臣 歴史認識に係る問題については、私の内閣においても重視をしております。政府としては、国際社会において、客観的事実に基づく正しい歴史認識が形成され、我が国の基本的立場やこれまでの取組に対して正当な評価を受けることを強く求め、いわれなき中傷には毅然と対応してまいります。

 そして、御質問に対するお答えですが、私の内閣においても、歴史認識に係る問題について、安倍内閣以来の体制を引き継いでおり、内閣官房副長官補室を中心に、政府全体で、国際広報を含め、歴史問題にしっかり取り組んでいきたいと考えております。

 

○高市委員 ありがとうございます。

 ここ数年、歴史認識の国際広報というのは、時の総理による政策判断で行われてまいりました。私は内閣の任務として制度化すべきだと考えるんですが、総理のお考えを伺います。

 

○松野国務大臣 お答えをいたします。

 歴史認識に関わる問題につきましては、複数の省庁にまたがる案件が多く、かねてより、内閣官房の外政担当の副長官補が取りまとめて、政府全体としての対応を行ってきたところであります。

 内閣官房は、内閣法において、内閣の重要政策に関する基本的な方針に関して企画立案、総合調整を行うこととなっているところ、引き続き、こうした規定を踏まえて、歴史認識に関わる問題についても、官邸の司令塔的役割の下で、政府一体となって取り組んでまいりたいと考えております。

 

○高市委員 私は、戦争が繰り返され、列強各国が植民地支配を行っていた不幸な時代に、自らの国籍を変更しなくてはならなかった方々が民族としての誇りを傷つけられたこと、また日本人として共に戦争を戦わなければならなかったことについては深く思いを致さなければならないと考えております。

 しかし、当時の国際法や国内法や国際情勢を勘案せずに現在の価値観だけで歴史を裁き続けるならば、多くの国々が謝罪や賠償を続けなくてはならなくなり、未来を開く外交関係というものは成り立ちません。

 岸田総理は、史上最長の外務大臣として活躍してこられました。国家の名誉を守りつつ国益を最大化するというのはとても困難な仕事ではございますが、岸田内閣として毅然とした外交をお願い申し上げます。

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