普天間飛行場移設問題の混迷を憂う
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普天間飛行場の移設問題をめぐる鳩山内閣の迷走ぶりには、呆れるばかりです。
鳩山内閣は、長年かけて合意をみた現行案に反対してみたものの、代替案については閣僚の発言がバラバラ。もう見通しすら立たなくなりました。
普天間飛行場が市街地にある現状をいつまでも放置しては、住民の皆様の墜落事故への不安や騒音問題は解消されません。
普天間飛行場の移設は、米海兵隊のグアム移転計画とともに、「沖縄県の負担を軽減するため」に進められてきた話でした。
とうとう「米国連邦議会上院が、予算法案審議で、海兵隊グアム移転経費に関する予算削減を行った」との報に接し、在日米軍再編計画全体の行方や日本が直面している軍事的脅威への抑止力にも、不安を感じざるを得ない事態となりました。
去る10月29日の参議院本会議で、普天間飛行場移設問題に関する林芳正議員(自民党)の質問に対して、鳩山首相は、「これまでの政権で、13年間何も動かなかったじゃないですか」と答弁されました。
これは、普天間飛行場移設問題の早期解決に向けて血の滲むような努力を続け、移設先と移設時期についての結論を導き出してきた地元関係者や歴代の担当閣僚や政府職員の取組みを無視した大変失礼な発言であり、鳩山首相は早急に発言を撤回し、関係者に謝罪するべきだと考えます。
普天間飛行場移設問題については、平成8年の橋本首相とモンデール駐日大使との「普天間飛行場返還についての合意」以降、日本政府と沖縄県知事をはじめとする地元関係者が粘り強く累次の協議を行い、平成18年に、名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部へのV字型滑走路建設(辺野古移設案)で決着したという経緯があります。
世論調査を見る限り、沖縄県民の多くは海外や県外への移設を望んでおられたようですが、いずれも困難な状況の中で、沖縄県知事や名護市長はじめ多くの地元政治家が自らの政治生命をかけてリスクをとって下さり、「普天間の早急な危険性除去を考えると、辺野古の沿岸部への移設を『ベターなもの』と考えるしかない」という方向になったのです。
私自身が内閣府特命担当大臣(沖縄も担当)であった平成19年8月7日には、沖縄県知事に環境影響評価法に基づく方法書が送付され、公告、縦覧、住民意見受付の後に、平成20年3月15日から1年間を費やして調査が行われました。
この調査結果を受けた準備書が作成され、この準備書に対する沖縄県知事意見が先月、10月13日に提出されたところです。
これを受けて、政府が評価書を送付するべき段階に入っていました。
ところが、鳩山首相が代表を務める民主党が今夏の総選挙で国民に提示したマニフェストには、「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」と書かれてあり、総選挙後の9月9日に行われた「連立政権樹立に当たっての政策合意」では、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」ということになってしまいました。
鳩山首相がマニフェストを「国民との契約事項」と位置付けていることから、過去の自民党政権が米国や沖縄県との協議の下で取りまとめてきた現行の「辺野古移設案」は見直されることになるであろうことは、想像に難くありませんでした。
ところが、現行案に反対するからには当然準備されているはずの代替移設先案については、岡田外務大臣が「嘉手納飛行場統合案」、北沢防衛大臣が「現行の辺野古移設案」、福島消費者・少子化担当大臣が党首を務める社会民主党が「県外移設案」を提唱するなど、驚くほどの閣内不一致。
加えて、10月29日には、沖縄県選出の与党議員で構成する「うるの会」が、北沢防衛大臣に対して、「硫黄島移設案」を要望したとのこと。
政府与党内に、少なくとも4つの案が混在している模様です。
自民党政権だった頃は、民主党議員の皆様は、少しでも閣僚間で意見が対立していると見るや、「閣内不一致だ」と大騒ぎして閣僚の責任を追及しておられたのです。
鳩山内閣の閣僚が無責任に思い思いの発言をしておられる様子を見ていると、私自身が閣僚であった時に、常に神経をすり減らしながら言葉を選び、実行したい施策を発表する前には関係閣僚を訪問して時間をかけて意見のすり合わせをしていた苦労など、全てが馬鹿らしくなりました。
普天間飛行場移設問題では、閣僚間の意見を調整する立場にある平野官房長官の姿がどこにも見えず、鳩山首相も結論を出す時期を明示しないなど、事態はますます混迷を深めています。
鳩山首相は、11月2日の衆議院予算委員会で、自民党の大島理森委員の質問に対して、「普天間問題に対しても日米と沖縄県民のみなさんすべてがわかったと理解できるような形をつくりたい」と答弁されました。
「日米と沖縄県民のみなさんすべてがわかったと理解できるような形」とは、具体的にどのような形を考えているのでしょうか。
先ず、岡田外務大臣が提唱する「嘉手納統合案」については、既に沖縄県知事や嘉手納町長や沖縄市長が反対しておられます。米国政府も嘉手納統合案を明確に否定していますから、「日米と沖縄県民のみなさんすべてがわかったと理解できるような形」ではあり得ません。
次に、北沢防衛大臣が提唱する「現行の辺野古移設案」については、毎日新聞社と琉球新報社が行った世論調査では「反対」という回答が67%を占めていますから、これも、「沖縄県民のみなさんすべてがわかったと理解できるような形」ではあり得ません。
福島消費者・少子化担当大臣が党首を務める社会民主党が提唱している「県外移設案」については、沖縄県内では一定の支持を得られるのでしょうが、代わりの移設先となる場所の全ての住民や米国政府の理解を得るのは困難でしょう。
そもそも福島消費者・少子化担当大臣が、沖縄県外の移設候補地としてどこを考えておられるのか、その候補地関係者と受け入れ交渉をしたことがあるのかどうかは不明です。
私は、一国の首相が、安全保障や外交上の重大な問題について、「みなさんすべてがわかったと理解できるような形をつくりたい」などと言っているようでは、国民の生命も国益も守れないと考えます。
鳩山首相に問いたい!
普天間飛行場の移設先を決定する判断材料として、「日本国の安全保障上のメリット」、「日米同盟関係上のメリット」、「日本国民全体の世論」、「沖縄県民の世論」、「沖縄県以外の移設先の都道府県民の世論」、「移設先市町村の首長の判断」、「移設先市町村の議会の判断」は、どの順番で優先されるのでしょうか?
(優先される順に並べて回答願いたい…という内容を含む質問主意書を、過日提出したところです)
政府与党が常に「世論に媚びること」ばかりを意識して、いつまでも決断ができなかったり、無責任な政策を乱発したりといったことが続くと、私たちが失うものはあまりにも大きいと思います。
11月1日の読売新聞朝刊には、「名護市が受け入れ撤回の方向で検討に入った」と報じられていました。
仮にそうなれば、勇気をもって受け入れの決断をして下さった名護市長はじめ関係者のご努力は水泡に帰し、普天間飛行場周辺住民の不安も放置されたままになります。
「みなさんすべての理解」を前提とした鳩山首相の答弁から拝察する限り、名護市以外の移設先候補地を検討したとしても、当該市町村の首長や議会や住民が受け入れ拒否を表明した場合には、一歩も進まなくなるのですから。
鳩山内閣は、長年かけて合意をみた現行案に反対してみたものの、代替案については閣僚の発言がバラバラ。もう見通しすら立たなくなりました。
普天間飛行場が市街地にある現状をいつまでも放置しては、住民の皆様の墜落事故への不安や騒音問題は解消されません。
普天間飛行場の移設は、米海兵隊のグアム移転計画とともに、「沖縄県の負担を軽減するため」に進められてきた話でした。
とうとう「米国連邦議会上院が、予算法案審議で、海兵隊グアム移転経費に関する予算削減を行った」との報に接し、在日米軍再編計画全体の行方や日本が直面している軍事的脅威への抑止力にも、不安を感じざるを得ない事態となりました。
去る10月29日の参議院本会議で、普天間飛行場移設問題に関する林芳正議員(自民党)の質問に対して、鳩山首相は、「これまでの政権で、13年間何も動かなかったじゃないですか」と答弁されました。
これは、普天間飛行場移設問題の早期解決に向けて血の滲むような努力を続け、移設先と移設時期についての結論を導き出してきた地元関係者や歴代の担当閣僚や政府職員の取組みを無視した大変失礼な発言であり、鳩山首相は早急に発言を撤回し、関係者に謝罪するべきだと考えます。
普天間飛行場移設問題については、平成8年の橋本首相とモンデール駐日大使との「普天間飛行場返還についての合意」以降、日本政府と沖縄県知事をはじめとする地元関係者が粘り強く累次の協議を行い、平成18年に、名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部へのV字型滑走路建設(辺野古移設案)で決着したという経緯があります。
世論調査を見る限り、沖縄県民の多くは海外や県外への移設を望んでおられたようですが、いずれも困難な状況の中で、沖縄県知事や名護市長はじめ多くの地元政治家が自らの政治生命をかけてリスクをとって下さり、「普天間の早急な危険性除去を考えると、辺野古の沿岸部への移設を『ベターなもの』と考えるしかない」という方向になったのです。
私自身が内閣府特命担当大臣(沖縄も担当)であった平成19年8月7日には、沖縄県知事に環境影響評価法に基づく方法書が送付され、公告、縦覧、住民意見受付の後に、平成20年3月15日から1年間を費やして調査が行われました。
この調査結果を受けた準備書が作成され、この準備書に対する沖縄県知事意見が先月、10月13日に提出されたところです。
これを受けて、政府が評価書を送付するべき段階に入っていました。
ところが、鳩山首相が代表を務める民主党が今夏の総選挙で国民に提示したマニフェストには、「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」と書かれてあり、総選挙後の9月9日に行われた「連立政権樹立に当たっての政策合意」では、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」ということになってしまいました。
鳩山首相がマニフェストを「国民との契約事項」と位置付けていることから、過去の自民党政権が米国や沖縄県との協議の下で取りまとめてきた現行の「辺野古移設案」は見直されることになるであろうことは、想像に難くありませんでした。
ところが、現行案に反対するからには当然準備されているはずの代替移設先案については、岡田外務大臣が「嘉手納飛行場統合案」、北沢防衛大臣が「現行の辺野古移設案」、福島消費者・少子化担当大臣が党首を務める社会民主党が「県外移設案」を提唱するなど、驚くほどの閣内不一致。
加えて、10月29日には、沖縄県選出の与党議員で構成する「うるの会」が、北沢防衛大臣に対して、「硫黄島移設案」を要望したとのこと。
政府与党内に、少なくとも4つの案が混在している模様です。
自民党政権だった頃は、民主党議員の皆様は、少しでも閣僚間で意見が対立していると見るや、「閣内不一致だ」と大騒ぎして閣僚の責任を追及しておられたのです。
鳩山内閣の閣僚が無責任に思い思いの発言をしておられる様子を見ていると、私自身が閣僚であった時に、常に神経をすり減らしながら言葉を選び、実行したい施策を発表する前には関係閣僚を訪問して時間をかけて意見のすり合わせをしていた苦労など、全てが馬鹿らしくなりました。
普天間飛行場移設問題では、閣僚間の意見を調整する立場にある平野官房長官の姿がどこにも見えず、鳩山首相も結論を出す時期を明示しないなど、事態はますます混迷を深めています。
鳩山首相は、11月2日の衆議院予算委員会で、自民党の大島理森委員の質問に対して、「普天間問題に対しても日米と沖縄県民のみなさんすべてがわかったと理解できるような形をつくりたい」と答弁されました。
「日米と沖縄県民のみなさんすべてがわかったと理解できるような形」とは、具体的にどのような形を考えているのでしょうか。
先ず、岡田外務大臣が提唱する「嘉手納統合案」については、既に沖縄県知事や嘉手納町長や沖縄市長が反対しておられます。米国政府も嘉手納統合案を明確に否定していますから、「日米と沖縄県民のみなさんすべてがわかったと理解できるような形」ではあり得ません。
次に、北沢防衛大臣が提唱する「現行の辺野古移設案」については、毎日新聞社と琉球新報社が行った世論調査では「反対」という回答が67%を占めていますから、これも、「沖縄県民のみなさんすべてがわかったと理解できるような形」ではあり得ません。
福島消費者・少子化担当大臣が党首を務める社会民主党が提唱している「県外移設案」については、沖縄県内では一定の支持を得られるのでしょうが、代わりの移設先となる場所の全ての住民や米国政府の理解を得るのは困難でしょう。
そもそも福島消費者・少子化担当大臣が、沖縄県外の移設候補地としてどこを考えておられるのか、その候補地関係者と受け入れ交渉をしたことがあるのかどうかは不明です。
私は、一国の首相が、安全保障や外交上の重大な問題について、「みなさんすべてがわかったと理解できるような形をつくりたい」などと言っているようでは、国民の生命も国益も守れないと考えます。
鳩山首相に問いたい!
普天間飛行場の移設先を決定する判断材料として、「日本国の安全保障上のメリット」、「日米同盟関係上のメリット」、「日本国民全体の世論」、「沖縄県民の世論」、「沖縄県以外の移設先の都道府県民の世論」、「移設先市町村の首長の判断」、「移設先市町村の議会の判断」は、どの順番で優先されるのでしょうか?
(優先される順に並べて回答願いたい…という内容を含む質問主意書を、過日提出したところです)
政府与党が常に「世論に媚びること」ばかりを意識して、いつまでも決断ができなかったり、無責任な政策を乱発したりといったことが続くと、私たちが失うものはあまりにも大きいと思います。
11月1日の読売新聞朝刊には、「名護市が受け入れ撤回の方向で検討に入った」と報じられていました。
仮にそうなれば、勇気をもって受け入れの決断をして下さった名護市長はじめ関係者のご努力は水泡に帰し、普天間飛行場周辺住民の不安も放置されたままになります。
「みなさんすべての理解」を前提とした鳩山首相の答弁から拝察する限り、名護市以外の移設先候補地を検討したとしても、当該市町村の首長や議会や住民が受け入れ拒否を表明した場合には、一歩も進まなくなるのですから。