早苗コラム

8期目の永田町から 平成29年11月~

2018年05月18日

亡母がヒントを与えてくれた政策②:郵便投票対象者の拡大

 昨日に続いて、生前の母の闘病生活を通じて気付いた政策課題がありました。

 

 こちらは、『公職選挙法』の改正ですが、昨年10月の総選挙後すぐに議員立法案を作成し始め、現在は、国会提出を目指して、自民党選挙制度調査会(逢沢一郎会長)で審査をしていただいている最中です。

 

 平成27年に心停止状態で救急搬送された母は、2つの病院で命を救っていただいたお蔭で、自宅に帰ることができました。

 しかし、歩行は困難になり、普段は車椅子で、杖を使えば数メートルは歩けるという状態。心臓に負担をかけられず、医師から外出は禁止されていました。

 

 ところが、平成28年7月の参議院議員選挙の投票日に、「私は、投票に行きたい」と言い出したのです。

 私が子供の頃から、両親は欠かさず投票に行っていたのですが、「どう考えても、今の状態の母が投票所に出向くことは無理だ。また心停止になったり、怪我をしたりするのではないか」と思いました。

 

 しかし、当時の私が大臣を務めていた総務省の自治行政局選挙部は、選挙管理執行も担っています。

 投票率アップを呼びかけるべき立場だった私が、母に「投票所に行くのは諦めて」と言うわけにもいかず、困り果てました。

 

 全候補者の政策が記された『選挙公報』を真面目に読み込んだ上で投票を望んでいる母を止めることはできず、投票所までは知人に車で送っていただくことにしました。

 ところが、「投票の秘密」を守る必要から、知人は投票所の入り口まで母を送ることはできても、記載台まで同行することはできません。

 

 投票日の夕方に実家に立ち寄りましたら、案の定、投票所内で転倒して怪我をした母が、足に包帯を巻いていました。

 痛がる母の姿を見ているうちに、「歩行が困難な在宅介護利用者の投票機会の確保」について、新たな政策を考案しました。

 

 具体的には、『公職選挙法』の改正です。

 

 現行の『公職選挙法』では、「一定規模以上の施設で、都道府県選管が指定する病院・老人ホーム・身体障害者支援施設等」では、その施設内で「不在者投票」を行うことが可能です。

 対象を「一定規模以上の施設」としているのは、「公正な選挙」を担保する為に、不在者投票管理者・投票立会人の立会いの下で投票しなくてはならないからです。全国で2万箇所以上が指定施設になっています。

 

 他方、在宅介護を受けておられる方々については、「身体に重度の障害があるもの」と認められた方に限って「郵便等投票」が可能とされているだけです。

 平成15年の『公職選挙法』の改正で、「要介護5」の方々に限っては、「身体に重度の障害があるもの」として郵便等投票の対象者に加わりました。

 

 しかし、私は、現行法では郵便等投票の対象者に該当しない「要介護4」や「要介護3」でも、「投票に行きたくても、実際には投票所に行くことが難しい方々」が多数いらっしゃると思いました。

 ちなみに、医師の外出禁止の指示があったのに、無理をして投票に出向いて怪我をして帰ってきた亡母は、当時は「要介護3」でした。

 

 介護保険の要介護認定の基準は、平成11年の『厚生省令』により、「介護の為に必要な時間数」に応じて区分が設けられています。

 省令では「要介護5」は「要介護認定等基準時間が110分以上である状態」です。「投票所に出向くことが物理的に可能かどうか」という観点とは別のものなのです。

 

 「介護の為に必要な時間数」だけでは分かりにくいので、要介護状態区分と身体の状態例を挙げた『要介護度の認定基準』という資料も読んでみました。

 「要介護5」は、「身体の状態例=最重度の介護を要する状態。生活全般について全面的な介助が必要」と書かれています。

 「要介護4」は、「身体の状態例=重度の介護を要する状態。排泄、入浴、衣服の着脱など多くの行為で全面的介助が必要」と書かれています。

 「要介護3」は、「身体の状態例=中度の介護を要する状態。起き上がり、寝返りが自力では出来ない。排泄、入浴、衣服の着脱などで全体の介助が必要」と書かれています。

 やはり、「要介護5」以外でも、歩行困難な方は多数居られると考えられました。

 

 2025年には、65歳以上の方が、人口の3割を占めることになります。そして、厚生労働省は、在宅介護を推進する方針を示しています。

 日本国憲法第15条は、「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」と規定しています。

 高齢化社会の中で、「在宅介護利用者に選挙権を如何に行使していただくか」ということも、極めて重要な課題だと気付きました。

 

 早速、総務省に設置していた「投票環境の向上方策等に関する研究会」に、福祉に関する実務経験者や専門家の方々にも新たに参画をお願いし、平成28年12月から約半年間、熱心に議論をしていただきました。

 

 そして、平成29年6月13日に、研究会の報告が取りまとめられました。

 この報告では、「要介護4の方はもとより、要介護3の方についても、寝たきり等に該当する方が相当の割合で居られること」、「選挙人等にとって分かりやすい制度とすべきこと」から、「要介護3全体を、郵便等投票の対象とすることが適切」と提言されていました。

 

 郵便等投票対象者の拡大は、閣議決定で可能な『政令』の改正によって速やかにできるのではないかと考えましたが、『公職選挙法』の条文に、郵便等投票の対象については「選挙人で身体に重度の障害があるもの」と明記されています。

 例えば、寝たきりである要介護4の方の症状を「重度の障害」と公的に証明することは困難だということでした。法律の中に「重度の障害」以外の要件を追加する必要があります。

 

 『公職選挙法』については、平成15年改正が議員立法によって行われた経緯を考慮すれば、更なる法改正も議員立法で行うことが求められ、総務省で法律案を書いて政府提出法案にすることは困難だと判断しました。

 

 そんなわけで、昨夏の大臣退任を好機と考え、昨秋の総選挙直後から議員立法にチャレンジしています。


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