早苗コラム

8期目の永田町から 平成29年11月~

2018年05月17日

亡母がヒントを与えてくれた政策①:医療機関の電波環境改善

 早いもので、母が急逝してから1ヶ月が経過しました。

 生前の母からヒントを与えてもらって、新規の施策を生み出せたこともあり、母を偲びながらご紹介します。

 

 総務大臣に就任した翌年の平成27年4月の夜、私は、東京で所管行政に対するご意見を伺う会合に出席していました。

 会合が終わりかけた頃、奈良に住む母が心停止状態で病院に運ばれたという連絡が入りました。

 

 私は、その2年前に父を亡くしていました。母から「お父さんが危篤なの。早苗に会いたがっているから、すぐに帰って来て」という電話を受けたのに、当時は政調会長でしたので自由に東京を離れることもできず、父が亡くなった後に実家に戻って後悔をした経験がありました。 

 ですから、その夜は、会合終了後すぐに副大臣に危機管理の在京当番をお願いし、羽田発最終便の飛行機に乗って奈良に向かいました。

 

 幸い、救急搬送された病院の先生方による懸命の蘇生処置により、私が駆け付けた時には母の心臓は動いていました。

 その後、その病院には専門医が居られないということで、心臓専門医が居られる他の総合病院に転院の手続きをとって下さいました。

 転院先の病院では、専門医の診察によって重い心臓疾患だと判明し、しばらく入院をさせていただくことになりました。  

 

 その病院で、看護師の方から伺った話が、新たな施策構築のヒントになりました。

 急な転院でしたから、母が入ることができた病室はナースステーションから遠く、心拍数や呼吸数の情報を送る「医用テレメータ」の電波がナースステーションまで届かないということでした。

 その話を伺って驚き、夜が明けるまで病室の床に座って、心拍数が表示されている画面を睨み続けました。

 

 総務省の仕事を休むわけにはいかないので、翌朝には上京しましたが、道中に色々と考えてみました。

 

 母がお世話になった病院は、先進医療にも取り組んでいる総合病院ですから、「全国各地の他の病院でも、同様の電波環境に直面している可能性が高いのではないだろうか」と感じました。

 総務省は、電波行政も所管しています。多くの方々の生命に関わることですから、「早急に対応するべきだ」と考えました。 

 

 母が入院しなければ、私も絶対に気付かない課題だったと思いますが、上京後、 大臣室に総合通信基盤局長と電波部長に来てもらって、私が経験した話をしましたら、彼らも驚いていました。

 

 早速、総務省総合通信基盤局電波部電波環境課の職員達が準備を進めて下さって、平成27年9月から、医療関係団体・医療機器関係団体・医療機器ベンダ・通信事業者・建築事業者など様々な分野の専門家チームを組織し、総務省と厚生労働省の職員も加わって、検討を始めました。

 3000の医療機関を対象に調査をした結果、全国各地の病院で、「医用テレメータ」だけではなく「無線LAN」など、電波に関する多数のトラブルが発生していることが分かりました。

 

 「医用テレメータ」については、「一部の病室で電波が届かない」「不適切なチャンネル設定による電波利用機器同士の干渉」「電池切れ」「LED照明・無線LAN・無線式ナースコールなど他の機器による干渉」などのトラブルが報告されました。

 

 更に、「別フロアの患者さんや他の診療科の患者さんのデータが誤って送信されていたケース」「数百メートル離れた近隣病院の医用テレメータと混信が発生していたケース」など、私が考えていた以上に深刻な状態でした。

 

 専門家チームのご尽力により、平成28年4月には、このような課題の解決策を『電波の安全な利用のための手引き』として取りまとめていただきました。「トラブルと対応策の事例(取り組みフロー図など)」や、「電波を管理する体制構築の在り方」などを整理した立派な冊子です。

 

 この『手引き』を基に、総務省は、平成28年度に全国20箇所でシンポジウムや説明会を開催しました。

 厚生労働省のご協力により、『手引き』を医療関係団体にも配布していただきました。

 

 「総務省シンポジウムへの参加を契機に、電波環境の改善に着手しました」という病院関係者のお声も多く伺い、嬉しく思いました。

 

 しかし、全ての病院で適正な電波環境を確保する為には、継続的な周知啓発が必要です。

 

 病院には、「電波・電波管理に関する専門知識を持つ関係者が少ない」「対策に要するコストへの懸念がある」といった課題が現存します。

 

 医療機関だけではなく、医療機器製造販売事業者や通信事業者や設計・建築事業者が連携して取り組むことも必要です。

 医療機関が医用テレメータのチャンネル設定・管理を適切に行い、無線LANのアクセスポイントを適切に設置することが求められますが、医療機器製造販売事業者や無線LAN事業者からの十分な情報提供が欠かせません。

 病院の建築時や改築時には、構造上の留意も重要です。

 

 平成29年夏頃を目途に、地域のネットワークを活用して「情報の更なる周知」や「人材育成」に取り組む為に、全国11箇所に「地域協議会」を設立することを決めました。

 

 同年8月3日の内閣改造で私は総務大臣職を離任しましたが、その後も、各地で熱心な取組みを続けていただいていることを、嬉しく存じます。

 

 先般も、総務省の近畿総合通信局長が、資料を届けて下さいました。

 近畿地方でも、昨年9月に近畿地域協議会を設立し、今年2月にも会議を開き、「専門ワーキンググループの設置」「手引きの周知啓発」「専門人材の育成」に着手していただいているそうです。

 近畿地域協議会で活動していただいている日本病院会、病院協会、臨床工学技士会、電気通信事業者、医用機器メーカーなどの皆様、総務省・厚生労働省職員の皆様に感謝申し上げつつ、全国の医療機関の電波環境が安全なものになることを期待しています。


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