「美しく強い日本」へ⑤:助け合いと見守りの社会
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個人情報を悪用した犯罪の増加を受けて、多くの国民が警戒心を強めざるを得ない現状から起きている残念な事象もあります。
数年前に地元の消防長から伺った話ですが、交通事故負傷者のご自宅に電話をして、「息子さんが、事故に遭ってA病院に運び込まれました」と伝えても、電話に出たご家族がなかなか信じて下さらなくなったというのです。
「振り込め詐欺」が頻発している為、「本当にあんた消防署の人?」と何度も聞かれ、緊急連絡にやたら手間がかかるのだそうです。
「個人情報保護法」の解釈を間違えた運用によって、災害時に避難支援をするべき障害者や高齢者の情報を消防団や民生委員が把握できていなかったという問題も起きています。
ある地域では、自治会役員や民生委員の方々が、緊急時に備えて災害弱者となり得る方の状況を調べようと訪問活動を始めたものの、「プライバシーの侵害と違いますか」「他人の家のことに構わんといてくれ」と怒鳴りつけられることも多く、つらい思いをされたという話を伺いました。
学校現場でも、一部の保護者からの批判を恐れて緊急連絡名簿の作成すら出来ず、感染症や食中毒発生時に保護者に伝える手段がないというケースもあり、事は深刻です。
安倍内閣の時に、内閣府の会議室に各省幹部に集まっていただき、個人情報保護法への誤解や過剰反応によって国民の安全を守れなくなっている状況を改善する為の対策を協議していただきました。
この会議では、総務省から地方公共団体経由で、全国の自治会長はじめ関係者に対して法の趣旨や正しい運用について徹底していただくことに決まりました。
その後、約5年が経過しました。
選挙区に戻った折に、親しい自治会長や消防団員、民生委員や教員の方々に状況を伺ってみるのですが、まだまだ国の方針は十分に浸透しておらず、改善が為されていない地域も多く残っています。
集中豪雨による水害が多発し、南海トラフ巨大地震・首都直下型地震への不安も増しています。子供や高齢者を狙った悪質な犯罪も発生しています。
個人情報を悪用した犯罪の撲滅に向けて努力を続けると同時に、互いの信頼の下に「地域の助け合いや見守りのネットワーク」を強化していかなければ、安心して暮らせる社会は作れません。
法改正や運用改善による課題解決は、私たち国会議員の重要な役割です。
ところが、いざ厳格な法規作りに着手しようとすると、個人の権利や自由を振りかざす方々の大きな声に阻まれ、困難を極めることも度々です。
安全確保の為に必要な取組みとプライバシーの兼ね合いについても、立法者として悩みは大きく、クリアすべき論点が多々存在しています。