コラム

  1. TOP
  2. コラム
  3. 大和の国から 平成15年11月~平成17年8月
  4. 自衛隊イラク派遣の是非

自衛隊イラク派遣の是非

更新日:

 今週、政府与党内では来年度税制や年金制度の争点が決着しましたが、国会でもマスコミでも、やはりフセイン拘束とイラクへの自衛隊派遣の是非が最大の話題だったと思います。12月15日、16日と衆参両院のテロ防止特別委員会が開催されました。

 国会審議の質疑内容やマスコミの論調や世論調査をチェックしてみますと、イラクへの自衛隊派遣に反対なさっている方達の「反対理由」が大きく2つに分かれていることに気付きます。

 第1の反対論は「派遣されるのが自衛隊だから反対」というもの。
 これは社民党などが長年主張してきた「海外派兵は日本の軍国主義復活への脅威を周辺諸国に与える」というオーソドックスな反対論に近いでしょう。
 今では、自衛隊は国際貢献で数々の実績を上げ高い評価を受けており、まさか海外に派遣された自衛隊が侵略戦争を行なったり植民地を作るなどと本気で心配する国民は居ないはずだと思っていたのですが、根底においては昔と変わらぬ理屈で反対している国会議員やニュースキャスターが案外多く居るものです。
 国会質疑でも「NGOを通じた援助」を求める意見も出ていました。武器を携行した米軍を輸送することへの反対論や「正当防衛といっても撃ち合いは避けるということを胸に刻んでほしい」と発言した議員の気持ちはこの第1の反対論に近いものでしょう。
 つまり、「イラク人道復興支援には賛成。民間人が行くなら良いが、自衛隊だから反対だ」ということなのでしょう。

 第2の反対論は「イラク派遣で自衛隊に死傷者が出たら、隊員や家族が可哀相だ。政府は責任を取れるのか」というものです。
 新聞紙上でも「派遣後に死傷者が出たら撤退すべき53%」との世論調査結果が発表されていました。
 一昨年のアフガン問題の頃と大きく変わったことは、派遣に慎重な多くの国民は、むしろ第1の反対理由よりも自衛隊員の身を案じているということです。これまで自衛隊不要論を唱えてきた政党や一部マスコミまで、今回は第2の理屈に乗り換えていることには、流石に違和感を覚えました。

 こうして整理してみると、国会審議やテレビ討論を聞いていても議論が噛み合わずイライラが募るばかりなのは、2つの論点が交錯している為だということが解ります。
 今、私たち国民が考えなくてはならないのは「日本は、イラク人道復興支援に参加するかしないか」の1点のみなのです。
 政府基本計画では、復興支援の内容は、・医療・給水・学校等公共施設の復旧・人道復興物資等の輸送です。これをやるかやらないか・・。

 私の考えは、人道復興支援に参加せざるを得ないということです。数カ月前まででしたら、別の選択肢もあったかもしれません。しかし、今や日本は決して後戻りをしてはならない場所に居るのです。
 つまり、既に国際社会に向けて「日本は、イラク人道復興支援に参加する」との国家意思を表明し、基本計画や実施要項を閣議決定してしまっています。国連も安保理決議において、多国籍軍の復興活動を支援する様、加盟国に対して呼び掛けており、現在37ヵ国がイラク復興や治安回復活動に参加しています。
 そんな中で、日本ほどの大国が、1度参加を約束しながら「テロの標的にされるのが嫌だから派遣を延期します」と宣言した場合の、影響を考えてみましょう。
 テロリスト側は「日本を危険な目に合わせたらイラクに来ない」と確信が持てるわけですから、日本人は間違いなくテロのターゲットになります。また、テロによって日本の行動を阻止できたとなると、既にイラクに展開している他国の人々にも同様の危険が及ぶ可能性が出てきます。多数の犠牲者を出したイタリアが軍隊の増派を決めたのは、テロに屈しない姿勢を示して更なる被害を避ける為でしょう。

 そして、日本が人道復興支援を決断するならば、危険が想定される地域だからこそ、自らの安全を守りながら役割を果たす能力を備えた組織である自衛隊をまず派遣すべきであって、民間人なら良いなどと安易に言うべきではありません。
 これまでの日本では、「安全な地域なら自衛隊」が定番でした。海外紛争で邦人救出が必要になった時にも「危険だから自衛隊機での救出は認めない。民間機で救出すべきだ」といった議論が、国会で大真面目になされていました。ところが今回、小泉総理は「危険が想定されるからこそ自衛隊なのだvと明言。大きく価値観が変わりつつあります。
 確かに、テロの危険が想定されるイラクで人道復興支援に参加することを決断したのであれば、事前調査能力、危険回避能力、インフラ復興技術を兼ね備えた自衛隊でなくては着実に任務を果たすことはできないでしょう。

 今、政府が為すべき事は、自衛隊が可能な限り安全な状態で、医療・給水・公共施設復旧などの任務を遂行して成果を挙げられる態勢作りです。
 現時点で「非戦闘地域はどこか」と議論したところで、現地の状況は変化します。
 国会では「危なくなったら撤退するのかどうか」「撤退の要件は」という議論も有りますが、そもそも危険な状態になれば復興作業など続けられないのですから、「自衛隊の装備や能力をもってしても危険が避けられなくなり、派遣目的である人道復興支援を続行できなくなった時には、退避する」ことのみを明確にしておけばいいのでしょう。
 国会審議で野党に聞かれるままに携行する武器名を答弁していましたが、これもやってはいけないことだったと思います。あまりにも具体的な行動日程や地域や武器の性能の情報を事前にテロリスト側に伝えることとなり、却って自衛隊員の安全が守られなくなるからです。
 「知る権利」も大切ですが、自衛隊の安全に関わる情報については、最低限の機密保持は許してあげていただきたと思います。

前のページへ戻る

  • 自民党
  • 自民党奈良県連
  • リンク集